第8話 静かな海



 灰色の瞳を持った民達はもっと酷かった。男達は、沖から帰る船でただ見ていることしか出来なかった。浜に並んだ民家から、次々に子供達が拐われていく。船の上から、ある者は叫び、ある者は海に飛び込み、然し浜までは遠すぎて、男達の叫び声は聞こえない。泳いでも船の方が早い。そして、それは、浜の女達もそうであった。叫び声は船まで届かない。子供と一緒に海へ逃げようとするが、白い瞳の民達に引きずり戻されていく。


 静かに揺れる海の上の小舟で、灰色の瞳は、その光景を見ているしか出来なかった。

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