第7話 悲しみを怒りに変えて



 それは、いつもの様に長閑な昼下がりの出来事であった。いつもの様に紅い瞳の民達が、村から離れた台地で働いていると、女達数人が走って来る。男達は、それぞれに持っていた木で作った農耕器具を置いて暫し、遠くから走ってくる女達を眺めていた。やっと声が聞こえるところまで来た時に女達が叫んで言う。

「子供達が拐われた」と。


 男達は、農耕器具をそのままにして村へ走り帰る。


 家々が壊された様子はないが、家々から女達の泣き声が聞こえている。


 男達は悟った。自分達がいない間に、抵抗できない子供達だけを拐って行ったのだと。然し、何の為に? 白い瞳の民達は人まで奪って行くのか。そんな理由など、何処にも有る筈がない。


 すぐに、男達で話し合いが開かれた。然し、話し合う必要など何処にも無かった。結論は既に出ていた。子供達は成長し、やがて田畑を耕し、老人、女、そして自分たちの子供を育てていく、大切な命を紡ぐ宝だ。


 奪い返そう、それが全ての民達の一致した意見であった。

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