終 章
第63話 王都復興(1)
湖にあるという【
民衆の前で『契約の儀』を行う事に成功する。
「遠くから見ていたけど、二人共、
ふふん♪――と上機嫌で、ディオネが俺の書斎の片付けを手伝いながら、そんな事を
【魔王】となってクタルを
(ベガートの奴め……)
人材が足りない――というのもあるだろうが、ベガートとフラン。
奴らは俺に書斎まで与え、次々に仕事を依頼してくる。
「そうだな――幻想的だったな……」
クタルとフラン――二人が湖面に
この国の人間達からすると――神話の世界――そのモノなのだろう。
隠された【
クタルに手を引かれ、王族しか立入る事の出来ない隠し通路へ転移する。
そこで――この【
そこで俺は、転移用の
分かる人間には、
【
アーリが魔術で氷の道を作った
「おっと、これはこっちだな……」
俺はディオネから資料の本を
「ありがとう」
と
それというのも、最近、クタルの様子が
「礼を言うのは、手伝って
とディオネに提案する。彼女は――フフフッ――と笑うと、
「お父さんと一緒に居るみたい」
そんな事を
(俺も師匠の事を、そんな風に思っていたな……)
普通なら――そんな歳ではない!――と反論するのかも知れないが、不思議と悪い気はしない。
(こんな事なら、俺も師匠を『父』と呼べば良かっただろうか?)
「なら、クタルが母親になるが――いいのか?」
俺は魔術で水球を創り出し、彼女に手を洗わせた。
使った水は、そのまま窓の外へと移動させればいい。
ディオネはタオルで手を拭きながら、
「ええーっ! クー
などと、当たり前の事を言った。
どうやら、クタルに母性は皆無らしい。
俺も手を洗い終わると、果物を包んだ焼き菓子を出してやる。
よく分からないが、廊下を歩く度、女性から物を
(お礼のつもりだろうか?)
「リオル
あたしも弟子として、鼻が高いよ――などとディオネ。
そう言いながら、お茶の準備をしたので、俺は魔術でお湯を出してやった。
「あたしも出来るようになるかな?」
興味と不安が入り混じった表情をする彼女に、
「【
と短く答える。しかし――だが――と
「今は【
無理をさせて済まなかったな――つい、クタルにするように、俺はディオネの頭を撫でてしまった。
嫌がられるのかとも思ったが、
「こ、これはいいものだよ……」
孤児院では、大人の男性は居なかった。
そう考えると、俺という存在は案外、必要とされていたようだ。今更だが少しだけ、クタルが――孤児院を離れたくない――と言っていた気持ちが分かる。
思えば、他の子供達からも
てっきり、クタルの影響かと思っていたのだが、違うらしい。
行儀良く
「さて、こういう時は決まって、クタルが来るモノだが……」
俺はドアではなく、窓の外を見た。
ピンと
「どうも、最近のクタルは変だな……」
そんな俺の
「クー
と言いながら、お祈りを済ませ、焼き菓子を口にするディオネ。
(否定出来ない……)
俺は苦笑した。
どう変なの?――そんな表情で俺を見詰める彼女に、
「そうだな……
その言葉に――えっ⁉――と彼女は
「昨日も……頭を
首を
孤児院では年長者という事もあり、色々と我慢をしてきたのだろう。
「お前が魔術を覚えた頃、旅に出ようと思う」
外の世界には、もっと
「ホント!」
ディオネにしては珍しく――ガタッ――と椅子を動かし、立ち上がった。
(どうやら、子供でも女性だな……)
「その代わり、色々と役に立って
そんな俺の言葉に、
「任せてよ――師匠っ!」
などと調子のいい言葉を返す。
(少し、クタルに似て来たような気がする……)
「なら、早速だが――ディオネには、クタルから様子が
俺の頼み事に対して、
「いいけど……」
彼女は少し不服な様子だ。
「嫌だったか?」
疑問をそのまま言葉にすると――うんん――彼女は首を横に振った。
「どう様子が変なのか、分からないだけ……」
ディオネはそう答える。
なるほど、理由が分からなければ、質問も出来ない。
「そうだな――昨日は五往復しか頭を
いつもだったら、十往復は
「はぁ……?」
ディオネはフォークを
いまいち、理解出来ていない様子だ。
「途中までは、先程のディオネのように喜んでいた……だが――」
「分かったよ、師匠!」
とディオネ。
「分かってくれたか!」
俺の言葉に彼女は
「だから、お代わり頂戴♥」
笑顔で、空になった皿を差し出してきた。
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