第59話 やっぱり、ラブラブね!
気付けなかった!――いや、私の意識だけを数秒、飛ばしたのだろう。
彼には人の心を操る能力がある。
回避は難しい。グリムニルの手が私に触れる。
――
シュンッ!――
グリムニルは素早く後退すると、元の位置に戻る。
(
見ると、アーリが短剣を振り下ろしていた。私の足元には、少年の腕が転がっている。グリムニルは斬られた腕を押さえながら、
「これはどういう事だい?」
などと
腕を斬り落とされたというのに、よく分からない反応だ。
加えて、グリムニルの声は私にしか届かない。当然、誰も教える
私が身構えたのを見て、アーリも再び、無言で構え直す。
その
誰が見ても、気が付くだろう。
「なるほど……」
とグリムニル。状況を理解したようだ。
「お姫様の動きを見て、ボクの位置を特定したのか」
やれやれ、参ったね――と彼は肩を
痛みを感じている
(退屈を
私は一種の狂気を感じた。
「お姉様、
フランの問いに、
「フランとアーリはラブラブだね――って言っているわ」
と私は返す。
まぁ、どうしましょう!――とフランは
「痛いっ、止めさせろ!――適当な事を言うな……」
とアーリ。
(わふん?)
私的には――間違っていない――と思うのだけれど、
「アハハ!――キミ達、戦闘中に余裕だね」
とグリムニル。
君もだよ!――と私は突っ込みたいのを
「まったく、【
そう言って、少年の姿は霧のように消えた。
(余計な事――というのは、フランの魔術の事ね!)
グリムニルがフランに近づかない理由の一つに――<光>の属性持ち――というのがあるようだ。
フーラに教えて
私はその事を二人に話すと、アーリがフランの魔術を武器に掛ける事を提案した。
グリムニルを斬る事が出来たのも、それが理由だ。
しかし、同時に警戒されてしまったらしい。
姿を消されては、いくらフランでも、目で追う事は出来ない。
(なら、今度は私の番ね! わふっ!)
先程のように、意識を飛ばされては
「後ろ!」
私が言うよりも早く、フランが動いていた。
光を
「ぐはぁっ!」
苦痛に対する叫び声と共に景色が
右肩から左の脇腹に掛けて、身体が裂けていた。効果は抜群だ!
「今度は、
ハァハァ――苦し気に息を荒げつつ、やはり、嬉しそうなグリムニル。
(でも、平気なようね……)
子供の姿をしているだけに、見るに
しかし、私は自分を
「フラン!
と声を上げ、尻尾をパタパタさせる。
どうして、反応出来たの⁉――と目を輝かせた。
「お姉様の尻尾を見ていれば、敵の動きを探るなど、造作もありません!」
彼女はそう言って、胸を張った。
(私の尻尾に、そんな使い方が……)
一方で、アーリはこの状況を見逃さない。
グリムニルの前に移動すると、短剣で
(早い!)
あっという間に、細切れになる。見ていて気持ちのいいモノではない。
だけど、ここで視線を
「なるほど……」
とはグリムニル。
ゴロン――と首だけになり、床に転がる。
「氷の刃か――どおりで見えない
アーリは短剣に氷の刃を
これにより、見えない刃となり、敵を斬り裂く。
目視では確認が難しいため、得物の長さを勘違いした相手は、瞬時に斬られるという訳だ。更に氷は光を通す。フランとの術の相性もいい。
散々、人々を
満足そうな顔をして、黒い灰へと変わり、消えていった。
「終わったのですか?」
とフラン。私は首を横に振る。死なないから
フーラの話では、肉体を失うだけで、また
「最初に説明した通りよ」
彼らをどうにかするには、封印を
ただ、<光>の魔術によって倒されたため、直ぐに復活する事はない
これもフーラが教えてくれた。彼が復活するのは、何十年か後だろう。
どうにも、魂が眠りにつくらしいのだが、良くは分からない。
「ご苦労でした、アーリ……」
いえ――とフラン。息が上がっているアーリに、
「アリスタウス・ヴォルターム――よくぞ、
それでこそ、わたくしの
アーリは刃を収めると――ハッ――そう言って、片膝を突く。
(わふ? 名前は聞いていたけれど……
――それに
私は腕を組んで考える。見兼ねたアーリが、
「ヴォルターム家は取り
と教えてくれた。
――わふん? あっ、思い出した!
確か教会が、王妃を殺した罪を『ノイシュ・ヴォルターム』という騎士に
「じゃあ、アーリは……」
私の言葉に、
「アーリはアーリですよ! お姉様……」
とフラン。
気付いていたの?――私が耳打ちをすると、
「名前を聞くまでは分かりませんでした」
フランは答える。次に私はアーリを見た。
どうして隠していたの?――という視線を向ける。
フランは王妃殺害が嘘だと知っている
アーリは溜息を
「フランが気にするだろ……」
国を安定させるためとはいえ、オレの家に罪を
(なるほど……わふん!)
どうやら、アーリはフランに一人の人間――いや、男性として見て
(それがいつの間にか……)
――わふん! わふん! わふん!
「やっぱり、ラブラブね!」
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