第58話 何が楽しいのよ⁉
私は気が付くと、【
横を向くとフランの顔があったので――ホッ――とする。
――戻って来れたのね!
フーラがその気になれば、きっと、私が帰って来る事は出来なかっただろう。
【
(私の可愛い半身……)
フランも気が付いたようだ。お互いに目と目が合い、
(綺麗な金色の瞳……)
しかし、安心した
私はふらつき、
(わふ? 立っていられない……)
恐らく、【
感覚が戻るのに、時間が掛かりそうだ。
「大丈夫ですか⁉ お姉様っ……」
とフランが慌てて私を支えてくれる。
ありがとう、大丈夫よ――私が言うと、彼女は
「急がなくちゃ……」
私の言葉に、フランは一瞬、
「お願い……」
一言告げると、私を支えてアーリの元へと連れて行ってくれた。
【
(どうやら、結界の
二人に
「良かった! 上手くいったみたい……」
私は
「ああ、お前達のお陰だ」
とアーリ。彼は一旦、私を休ませる事を提案したのだけれど、
「お願い、湖に急いで――」
ドロドロになった教会の人間。アレをどうにかしなければいけない。
つまり、もう一つの【
(兄やベガートは強がっていたけれど……)
――多分、
前にも一度、旅先で黒い【
結局、彼は暴走し、兄が止めを刺す形になったのだ。
その後、【
だけど、それは神官でなければ難しいだろう。
(この国の神官に頼むのは危険だよね……)
それに、高位の神官が残っているとも限らない。
ベガートの
(やっぱり、お兄ちゃんは優しいよ……)
「ゴメンね――でも、二人には
私はフーラから教えて
† † †
「アハハッ――安心したよ」
てっきり【
【魔人】の出現と建国祭もあり、人の気配は感じない。
(逃げたのかな? それとも、祭の準備で移動しただけ……)
どちらにせよ、近くに人の気配はなかった。
だからこそ、教会の正面から出ようとしたのだ。
――けど、
(いや、グリムニルの事だ――行動を読まれていたのかも……)
私も、自分の足で歩けるくらいには回復していた。足手
問題なのはアーリだ。恐らく、彼はグリムニルを認識する事が出来ない。
ただ、私とフランの様子で理解はしたようだ。
私達を守るように前に立ち、短剣を構える。
(二刀流?――この国では珍しい剣技ね……)
――教えたのはベガートなのかな?
少なくとも、騎士の戦い方ではない。
(しかし、
やはり、私達がここへ来る事を最初から知っていたみたいだ。
「お兄さんはボクの事を認識すら出来ていないようだね」
いつもながら、嬉しそうに少年は笑う。
相変わらず、
「お姫様の方は、見えているだけで、ボクの言葉は聞こえないのだろ?」
フランが持っている私の能力とやらは、その金色の瞳と白銀の髪らしい。
それでも、グリムニルを認識出来る事は十分な強みだ。
「ボクの招待状は届いたかな?」
「破って捨てたわよ!」
わふん!――と私は返す。
「
とグリムニル。
きっと、私達の国だけではない
「世界を
アーリの前に出ると、私は問い
グリムニルは平然とした態度で――聞いただろ?――と逆に聞き返してくる。
「人々を苦しめて、
私の言葉に、
「楽しいさ――ボクは死ねないからね。代わりに死んでくれる存在は
グリムニルは――狂っている――としか思えない返答をする。
でも、彼らにとっては人間など、その程度の存在なのだろう。
「お姉様……」
フランのその瞳が、私に冷静さを取り戻させてくれる。
どうやら、グリムニルは私を怒らせる
ちぇっ、残念――と
「世界を追い詰める事で――クタル、君のような存在を作り出す事が目的さ」
そう言って、
戦う気なのだろう。もう
(きっと
私同様、彼らもまた、夜の方が能力を最大限、発揮する事が出来る。
「【
退屈は嫌いなんだ――そう言って、グリムニルはこちらに向かってゆっくりと歩いて来た。
いや、次の瞬間には私の前に立っていた。
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