第19話 君なの? 助けを呼んでいたのは?
「わぁ……」
思わず、私は
牧歌的な暮らしもいいのだけれど、やはり、綺麗な服や装飾品には興味がある。
「気に入っていただけやしたか……」
へっへっへ――と
正直――気持ち悪い――だが、
「うんっ!
私は笑顔になった。
必要な道具の調達や値段の交渉はお兄ちゃんに
「ねぇ、少し見てもいい?」
私は確認を取る。当然、兄は
また小男も――どうぞ、どうぞ――と言う。
お兄ちゃんの相手をするよりも――私に商品を進めた方が売れる――と思ったのだろうか? 確かに、間違ってはいない。
(お兄ちゃん、私には甘いからなぁ……)
――やれやれだよね。
私が
改めて店内を見回す。
冒険者向けの武器や防具も
しかし、魔術が掛かっているモノや高価な品物は出ていない。
(
きっと、お金持っている客か、信用の出来る常連客に対してのみ、商品を見せるのだろう。私は洋服や装飾品が並べられている棚に集中する。
すると――助けて、怖いよ、ここから出して――という声が聞こえた。
どうやら、空耳ではなさそうだ。
(
――そういう訳にも、いかないよね。
私は手に取って見ていた商品を棚に戻すと、
「お兄ちゃん、ちょっと……」
兄の
状況を理解したのか、兄は――困ったな――という表情を見せた。
しかし、
「だ、
小男が不思議そうに首を
そして、杖で床を突き、
十を数えるにも満たない時間だ。
だが、その
「こっちだな」
と兄。集中のため閉じていた目を開くと、迷わず部屋の壁へと向かい歩き出す。
当然、私もついて行く。
「ちょ、ちょっと
小男の慌てた様子から、
兄の行動を
「とんでもないモノを王都に持ち込んだな……」
とお兄ちゃんは彼を指差し、
「早く、逃げる準備をした方がいいぞ」
と警告する。反論はしないが、
当然、私も分かっていない。
だが、小男は
兄は溜息を
すると――ハラリッ――と壁が
どうやら、壁に見える様に、似せた布で通路を隠していたようだ。
良く見れば、床の
私はカウンターの方の扉を見た。
(なるほど、向こうの扉はダミーで、こっちが本命ね!)
隠し通路の奥にある部屋は薄暗く、倉庫になっているようだった。
暗いのは平気だ。高価な商品を管理しているのか、掃除が行き届いている。
だが、獣の臭いもした。
毛皮などではない。生きている動物の臭いだ。
「多分、それだな……」
兄は
「そ、それは!」
と小男。慌てて動こうとする。
だが、兄が杖を向けて、その動きを制した。
私はその
「君なの? 助けを呼んでいたのは?」
私は
返事はない――相当、弱っているみたいだ。
「この国の人間ではないから、知らないのかも知れないが――」
兄はそう言いながら、杖を私の持っている
そして、魔術で鍵を外してくれた。続けて、
「これは神の
と告げる。また、兄が言い終えるのを待っていたかのようなタイミングで、別の男が血相を変えて、部屋に転がり込んで来た。
「た、大変です! お、お
男は――こんなところに客を入れたんですかい!――と再度、
「そんなに慌ててどうした?」
と小男が質問すると、
「き、消えました」
と一言。その
商品を勝手に――とは言われなかったので、そのまま抱っこする。
「消えたって……いったい『何が』だ?」
小男は再度、質問をした。
だが、答えを聞かなくても直感で状況を理解していたのかも知れない。
その質問は――ただの確認――のようだった。
「山に作ったアジトです!――アジトごと、仲間も全員……消えちまったんです!」
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