第17話 皆、頑張ったんだね!
私は屋台のおじさんと向かい合っている。互いに余裕の表情だ。
おじさんの腕は私の腰よりも太そうだけど、
兄が合図を出してくれたので――ドンッ!――私は
「わーい、勝ったぁ!」
無邪気を
「お、お嬢ちゃん……もう一回、もう一回だけ!」
とおじさんが頼むので、
「いいよ!」
私は
再び、兄の合図で試合が開始される。
「ぬおおおおっ!」「わふんっ!」
結果は一緒だ。私は屋台のおじさんに
勝つと『一杯サービスする』という事だったので、遠慮なく勝たせて
「お嬢ちゃん、強いな……」
おじさんはそう言いつつも、私みたいな少女に負けた事が不思議なのか――納得いかない――という表情をしていた。
『一杯サービスする』などという条件を出しているくらいだ。
私としては、目立つような事を許可してくれたお兄ちゃんの方が不思議だ。
(きっと、
それはそうと、シチューの
「まあね!」
私はそう答えつつ、笑顔でシチューを受け取った。
「お嬢ちゃん……この辺じゃ、見ない顔だね」
おじさんの
「うんっ、美少女だって良く言われるよ」
笑顔で返す。だが、おじさんは一瞬、沈黙する。
(
――ちょっと、失礼じゃない?
おじさんは――ガッハッハッハッハ――と突然、笑い出すと、
「違いねぇや!」
やけに楽しそうな表情をした。私としては
「山の向こうから来たんだよ。お兄ちゃんと一緒に、色々な国を旅しているの!」
と適当な方角を指差す。おじさんは
「へぇー、その年で
と聞いてきた。私は――うーん、そうだなぁ――と考えた後、
「思ったよりも活気がないけど、
知らないフリをして質問した。すると、
「昔はこうじゃなかったんだけどな――」
おじさんは少し遠い目をした。
「あんな事件がなけりゃあな――まぁ、ベガートっていう魔術師が政策を行うようになってからは、
軽い感じで答えてくれる。
妹のフランといい、ベガートという人物をあまり悪くは思っていないようだ。
(お兄ちゃんも、憎んでいるって感じじゃないもんね……)
私は少し、興味が
「十四年前に事件があった――って聞いているけど、本当だったんだね」
「ああ、あれは
「それがここまで復興したの?」
見渡す分には、そんな被害があったようには思えない。
「すべてが元通り――って訳じゃねぇけどな……」
おじさんはしみじみとする。
「皆、
ご
「まぁ、この国の人間にとっては、あの事件の傷は
「分かったよ」
私は素直に忠告を受け取る。
同時に、気になっていた事を聞いてみる。
「ところで、おじさんは元軍人なの?」
「ああ、昔はな――」
そう言って、おじさんは自慢の筋肉を
「足を
ニカッ――と笑った。
† † †
冬になる前に山越えをする
ただ、ギルドは国が、商会は教会が関与しているため、正規品は高くなるらしい。
そこで闇市となる。
当然、当たり外れはあるが、交渉次第ではいい品でも、安く手に入るようだ。
普通には出回っていない商品も、取り
「お嬢ちゃんくらい強けりゃ、問題ないだろ」
と言っていたのは気になるところだ。
しかし、私もお兄ちゃんも、そういうお店の方が
特に魔術関連の道具は
教会に目を付けられているため、普通に商売するのは難しいのだろう。
私達は
(うん、
そんな事を思っていると、当然のように、路地裏へと案内される。
同時に、前後両方から逃げ道を
(あーあ、やっぱりね……)
逆に、私達を案内した男は
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