第16話 まだ救いはあるさ
しかし、
(私もそこまで、考え無しじゃないもんね♪)
つまり、
(わふんっ! それは想定内だよ、お兄ちゃん!)
「お兄ちゃん、お願いだよ!――危険なのは分かってる……でも最後に、この国の人々の様子を見ておきたいの!」
ピコピコピコ――耳を動かし、
(もう一押し……かな?)
「
瞳を
(そして、お兄ちゃんの意思が揺らいだ瞬間を狙って――今だ!)
「お兄ちゃん、ありがとう! 大好き♥」
抱き着いて、頭をスリスリ――そして、
この時、獣耳をちょっと
(わおんっ! 効果は抜群だ!)
そんな感じで、私の見事な
――久しぶりの買い物だ!
ワクワクする私。目を
「わぁ~……思っていたより、残念な感じだね――お兄ちゃん」
私はしょんぼりする。王都だというのに活気がない。
(あれあれ? 思ったより、人が少ないよ……)
今までの旅の経験上、朝の市場は活気に
街の
普通だったら、市場に来る客を目当てに、旅の商人などが集まる
多くの行商人が露店を開いていても
(そういえば、商品も少ないような……)
不思議そうに周囲を見回している私の考えを理解したのだろうか。
兄は――昔はもう少し、活気があったけどな――と告げる。
山々に囲まれ、外敵の侵入を防ぐ事で、この国は平和を維持してきた。
しかし、戦乱の世が明け、大国が安定してくると状況は変わる。
人々の交流は
すると産業が発展し、様々な文化が開花した。
――でも、この国は違う。
「そうか、外から人が来ないんだね……」
この国に入るには、山を越えて来るしかない。
しかし、道は整備されてはいなかった。
そんな
ここでしか手に入らない珍しい特産品や工芸品があるのなら
「あんな事件があったからかな?」
私の疑問に、
「それだけじゃないさ――」
と兄は話してくれる。以前の国王――つまり私の父――は【
また、【
改革の一旦として、山にトンネルを造るつもりだったらしい。
兄達のような優秀な魔術師が居れば――それほど、難しい作業ではない――と考えていたようだ。
また、山から鉱石などが発掘出来る事を期待していたのかも知れない。
そのため、知識と技術を
特に師匠さんの存在は、教会などよりも
「別に教会の考え方が悪い訳ではない――自然との調和や環境の保護――その観点は取り入れるべきだ」
ただ、この国の教会は、いつしか【
閉ざされた、この国の状況がそうさせたのだろう。
彼らは
自分達へ、国中の富を集中させる
「神や信仰が悪い訳じゃない――ただ、教会の
その兄の言葉に、嫌な考えが私の
(もしかして、この国をこんな状況にしてしまったのは……)
――考える事を止めてしまった国民達かも知れない。
† † †
「お兄ちゃん……
商会やギルドが開くには、まだ時間が早い。
私は丁度、木陰になっている低い石垣を見付け、腰を掛けていた。
「大丈夫だ」
そう言って、兄は私の頭を優しく
「孤児院の子供達を見ただろう――彼らは学ぶ事を必要としていた。互いに助け合い、足りないモノを
(そうだった――大切な私の家族だ……)
――私はあの子達に『あきらめて』なんて言えない!
私の瞳に力が戻ったのを、兄は確認したのか、
「子供達が未来を
そう言って、
「うんっ、そうだね!」
兄の言葉に私は
(お兄ちゃんの言葉は、いつも私に勇気をくれる!)
――きゅーっ!
私のお腹が鳴った。同時に顔が
(わふんっ、こんな時に
兄は笑うと、
「そこに屋台がある。
そう言って、私の手を引いてくれた。
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