第11話 もう少し、素直になったら
夜空には月が
どんよりと雲がかかったような、今の私の気持ちとは正反対だ。
(はぁー、どうしよう……)
孤児院とその周辺が良く
母は
これはごく一部の人間しか知らない事実のようだ。
どうやら、私は――この国のお姫様である――らしい。
更に――双子の妹が居て、その
利用価値があるため、生かされている――とは兄の推測だ。
今は国王の代わりに、国の旗印となっている。
今では
魔術で操られているのか、死体を操っているのか、もしくは
国王に代わって、今は黒竜退治の英雄となった『ベガート』という魔術師が権力を握っているらしい。
そして、その英雄は言った――この
更に――その証拠に、異形の娘が生まれた。探し出し、神への
(それって、私の事だよね?)
どうりで、お兄ちゃんがいつも以上に神経質になる訳だ。
その兄は――神を語る辺り、教会がグルだろうな――と苦笑する。
(お兄ちゃん、目が笑ってないよ……)
――でも、
私は
実際、
私の容姿からしても、神々とは少なからず
そして、私が戻らなければ、今度は妹が
(つまり、政治の道具としても、子供を産む道具としても利用出来る……)
――って、事だよね!
お兄ちゃんは言葉を
どの道、今は無事である事を
「そろそろ、戻らないか……夜風は
とはお兄ちゃん。心配して、ずっと近くに居てくれた事には気が付いていた。
私は
フサフサの尻尾だってある。夜は平気だ。
「お兄ちゃんが、私を助けてくれたんだね」
でなければ、私は
妹は好きでもない相手と結婚させられていた
つまりは――クーデターは完成していた――という事になる。
(本当の英雄はお兄ちゃんだよ……)
私の言葉に、兄は首を横に振ると、
「お姫様を
少し
「そんな事ないよ……」
私はそう言って、隣に座るように
当然、兄は座ってくれる――だが、距離がある。
私はそれを詰めるため――ぎゅーっ!――とくっ付いた。
頭も兄の肩に
「私を
――妹じゃなくて、私で良かったよ!
そんな風に思ってしまう自分は変なのかも知れない。
「すまないな――今まで、連れ回してしまって……」
だが、この国に戻るのは危険だと思ったんだ――と言い訳をする。
「もう少し、素直になったら――許してあげる」
私の言葉に、兄は首を
「本当は……お前とずっと一緒に居たくて、黙っていた。このまま、俺と一緒に逃げてくれないか?」
そう言って、私の頭を優しく
(えへへ♥)
「仕方ないなぁ――そういう事なら、許してあげる……わおん!」
パタパタパタ――と尻尾が勝手に動く。
最初から怒ってなどいないし、
もし、私の存在がこの国の人達にバレてしまったのなら――黒い竜の
そして、真実を知らない国民からは
(そこに、私という人格は必要ない……)
――ただただ、消えてゆく。
他人と姿が異なる――という事は、そういう事だ。
存在を知られただけでも、この国の誰もが、
それ
(お兄ちゃんが、私を孤児院から連れ出そうとする訳だよね……)
今は私の事を家族のように、本当の姉のように
でも、もう少し成長すれば、私を
自分達の不幸を私の
兄との旅で――人の心とは、そういうモノだ――という事を嫌という
例え、それが真実ではなくても、どれ
人は自分と
私の知る人間の多くは、それ
(それでも、私は彼らのように、誰かを
――私にとっての幸運は、お兄ちゃんが居てくれる事なんだ。
彼と居る事が――お兄ちゃんと一緒に居る事が――幸せである。
自分も弱い人間である事を忘れてはいけない――とは師匠さんの言葉らしい。
魔術という
だから私も、
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