第2話 王都炎上(2)
息が上がる。こんなに走ったのは生まれて初めてかも知れない。
それでも――ギリギリ間に合った――というところだろうか。
森の中だというのに、
騎士達の後ろには女性が二人居て、二人共、赤ん坊を抱えている。
――二人?
俺は首を
師匠の姿がない。
――やはり、王都であの黒い竜と戦っているのか!
(お人好しめ……)
どうにも一番
なら、弟子である俺のやる事は決まっている。
(あの赤ん坊を助けないとな――)
二人居るという事は、双子だったのだろう。
俺は魔法で夜の闇と同化し、姿を消した。
これは騎士達も苦戦する
一見、
対人――つまり、殺しを得意としている可能性が高い。
(傭兵を
森での戦いは
また、守りながらでは上手く立ち回るのが難しいらしい。
しかし、相手は
恐らく、赤ん坊を無傷で
準備が良い割に、派手な攻撃がないのはそれが理由と考えて良さそうだ。
そのお陰で、騎士達も
俺はまず、指揮官もしくは連絡役と思しき相手を探した。
少し離れた場所に二人。
――見付けた!
腕は立つのだろう。子供の自分では太刀打ち出来ない。
まずはギリギリまで近づき、眠りの魔法を使う。
一人は倒れたが、もう一人は
突然の状況だが、相手は
痛みで眠気を押さえる。
(
こいつらは、ただの
訓練されている。
恐らく、魔法を
俺は
気絶させる事には成功したが、合図の笛を吹かれてしまう。
騎士を
(
こうなってしまえば、時間との勝負だ。
しかし、赤ん坊を見捨てられる程、落ちぶれてもいなかった。侍女へと
姿を魔法で消していたため、ここまでは
一旦、残りの
正直、魔法を使う魔力がもうない。
だが、相手が
「ロフタルが弟子――リオルです!」
敵を
助けに現れたのが子供では、
しかし――
「お願いです。その子を連れて逃げてください」
と王妃。もう一人の赤ん坊をしっかりと抱き締めている。俺は――それでいいのか?――と問おうとしたが、自分ではこの状況を
赤ん坊二人を助けるのは無理だと判断する。
(一人だけなら、確実に助けられる!)
「名前は?」
「エレノアです」
それだけ聞くと、俺は赤ん坊を抱いて走り出した。
余程自信があるのか、子供だと思って
魔法で植物の根や枝を動かすと、簡単に転ばす事が出来た。
強力な魔法は使えないが、これなら逃げられそうだ。
「良い子だから、大人しくしていてくれよ……」
赤ん坊にそう言い聞かせると、突如、狼に
それに共鳴するかのように、大人しかった赤ん坊が突然泣き出す。
(
そう思ったのだが、次の瞬間には空を飛んでいた。
魔法ではない。巨大な狼に
「
フハハハッ――普段は
その巨大な狼は山中へと俺達を運ぶ。
(こんな魔物が、もう一匹居るのか?)
――いや、神獣かも知れない。
だとすれば、王妃の方も無事――とは考え難い。
暗がりだったが、相当具合が悪そうだった。
産後に無理をしたため、命を落としている可能性も捨てきれない。
俺はこの場で少し待ってみたが、狼が戻る気配はなかった。
「行ってしまったか……」
魔術師としての
月明かりの中、
呼吸をしているのか不安になる程、静かに眠る赤ん坊に、
「お前が助けてくれたのか?」
そう言って、新ためて姿を確認し――俺は
耳だけではない。フサフサの尻尾まで生えているではないか。
これでは伝承にある獣人だ。
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