学園一の美少女だけど人を寄せ付けないと言われていた女神に勇気を出して告白したらおしっこを漏らされた〜見た目で勘違いされてるけど実は嬉しいと尻尾を振って甘える犬系彼女とイチャラブ生活〜

すかいふぁーむ

第1話

「好きです! 付き合って下さい!」


 一世一代の大勝負。

 いやそれは大げさだろう。

 玉砕覚悟……ううん。玉砕前提の大勝負だった。


 明日から変な噂が流れるかもしれない。

 この氷のような鋭い表情を浮かべる学園の女神、皆川美依奈みなかわみいなはそのくらい、俺のようなタダの凡人にとって高嶺の花だ。


 切れ長な目も肩くらいまで伸びた髪も、透き通るように綺麗だった。もうなんというか、こうして目の前に立つと俺の語彙力なんかじゃ到底現しきれない、本当に魅力のある人だった。

 うん。こんなに近くで見られただけでも良かったと思おう。

 この思い出を胸に明日からも生きていく。

 たとえこの身の程知らずの告白をきっかけにゴミを見るような目で接しられることになったとしても悔いはない。

 そんな馬鹿のことを考えていると、ようやく彼女に動きがあった。


「あ……えっと……」


 すごい困っていた。

 それはもう申し訳ないくらい。


「あ、ごめん。困らせるつもりはなかったんだ……えっと、そしたらもうこれで……」


 うんうん。好きな子を困らせる趣味はない。

 ここでおとなしく身を引こう。さよなら俺の青春。チャンスは有るさ。


「待って!」


 と思ったら彼女のほうが動き出していた。

 ただその動きは思わぬ事態をもたらした。


「ぁ……」


 じょぼじょぼと音が聞こえていた。


 じょぼじょぼ……?


 音の出どころを確認する。皆川さんの足もとにできた水たまり。

 うん。これは……


「ぁ……あぁああああああああああああ」


 皆川さんは叫び声と水たまりを残して走り去っていた。


 ◇


『昨日のことで話があります。昨日と同じ裏庭に放課後来てもらえると嬉しいです』


 朝、下駄箱にこんな手紙が入っていた。

 差出人は言うまでもなく、皆川美依奈だ。


 完璧超人は文字まで綺麗なのかと感動する。これは家宝にしよう。

 大事に鞄の奥に仕舞い込んで教室に向かった。


 ちなみに皆川さんは同じクラスだ。

 だから何度か話したこともあったし、一応呼び出しに応じてくれるくらいには話をしてきた相手だった。恐れ多くも。


「放課後が楽しみだ」


 当然その日の授業内容はほとんど頭に入ってこなかった。

 昨日の今日だからだろう。授業中も皆川さんと目があった瞬間、一瞬で顔を真赤にしてそらされていた。すごい。かわいい。かわいいが爆発している。

 容姿端麗、文武両道、才色兼備、完璧超人。


 そんな馬鹿みたいな事を考えていたら一日が終わっていた。

 先生たちには申し訳ないけど今日くらいは許して欲しい。授業の中身はまるで頭に入ってなかった。


「なんか今日、皆川さん一段と可愛くなかったか?」

「わかる! くそー。今日は挨拶すらできなかった……」

「一回でいいからあんな可愛い笑顔を向けられてみたい!」


 こんな評価を受けている皆川さんからお呼び出しがあった記念すべき日なのだ。

 経緯を考えるとあれだが。いやそれは今はおいておこう。

 大切なのはそう。あの皆川さんがこうして俺を呼び出してくれた、そこに尽きる。


「よし……!」


 トイレで入念に髪を整えてからいざ……! 勝負の場所へ降り立った。


 ◇


「ごめんなさい!」


 勝負は一瞬で決まった。


「ああ……いやいいんだ。わかってた」

「わかってた!?」

「え? うん。そりゃ皆川さんが俺なんかと付き合ってくれるはずはないということは……」

「あ……やっぱり昨日のはそういう……」


 あれ? なんか噛み合ってない気がする。

 皆川さんの顔がこころなしか赤い。


「えっと……やっぱりその、告白というと、男女のお付き合いを望むのかしら……?」

「それはもう、もちろん」

「そうよね……うん」


 顔は赤いが反応は良くない。

 なんだろうこれ。


「あの……その……昨日の件なのだけど」

「ああ」


 どうやら仕切り直すらしい。


「えっと、まだ私のことを……その……す、好きでいてくれているのかしら?」


 もじもじと恥じらいながら上目遣いでそんなことを聞いてくる皆川さん。

 可愛すぎる。反則だ。


「もちろん!」

「はぅ……そう、そうなのね……」


 終始顔が赤い皆川さんがほんとに色っぽくて美人で可愛くて最高だった。

 どうやらまだ皆川さんは俺と話を続けてくれるらしい。


「えっと、昨日私は……その……粗相をしたのだけど」

「おしっこを漏らしたね」

「はっきり言わないで!」


 真っ赤になった顔を抑えて目をそらす皆川さん。

 最高に可愛い。


「えっと……あの……私ね。こんな見た目だからよく勘違いをされるのだけど」

「うん」

「割とすぐ、感情が顔にでるというか……表にでるというか……」

「なるほど?」

「だからその……昨日のもあの、嬉しくて……つい……」

「犬かな?」

「失礼! あ、でも犬みたいに可愛がられてみたいかもしれない……」


 何やら目の前にいる皆川さんは俺がよく知っていた皆川さんとは違う生き物のように見えた。

 まあ可愛いからいいんだけどね!


「それで……あの……もし、もし昨日の私を見てもまだ気持ちがあるなら」

「ある!」

「はぅ……はやい……」

「ひと目見たときからずっと好きでした! 見た目も中身も今日新たに知れた皆川さんも全部含めて大好きです!」

「うぅ……そんなに言っても今日は漏らさないからねっ!」

「漏らしてほしくて褒めたみたいに言わないで!?」


 とんだ風評被害だった。

 というか褒めたら漏らすってまずいのでは?


「普段はその……ナプキンとかで対応してたんだけど……って恥ずかしい! なんでこんなこと言わすんですか!」

「ごめん」


 言わせた覚えはないけど謝っておいた。


「えっと……私で良ければぜひ、付き合ってほしいのだけど……」

「え、夢? ドッキリ?」

「ドッキリは昨日! あの事件がもうドッキリ! 今日になってやり直さないです!」

「それもそうだ」


 皆川さんはテンパってるようで冷静だった。

 さすが学年一位の才女だ。おしっこは漏らしちゃうけどね。


「失礼なことを考えている顔をしているわね……」

「とにかくこれで僕らは彼氏彼女っていうことでいいのかな?」


 まさかの事態に頭を落ち着かせる必要がある。

 そのためにはたとえ天使で女神で最高な彼女の皆川さんの声も無視する必要もあるのだ。


「えっと……はい……はう……ちょっと出ちゃった」


 前途多難だなこれ。


 なにはともあれ今日、憧れの高嶺の花が俺の彼女になった。

 え、ほんと?


「だから! どっきりじゃないです! 私もその……貴方のことは……」

「昨日告白されたから好きになった?」

「それは……あるかもしれないけど」


 女神はかなり単純だった。


「とにかく! えっと、これからよろしくおねがいします。いいのね!? ほんとにいいのね!?」

「それは俺が確認するところなのでは?」

「あんな姿を見られても好きでいてくれるなんてそんなの、私は逃がすつもりがないです。覚悟してください」


 そう言うとぎゅっと俺の腕に抱きついてきた。柔らかいものが当たっている。そんなに馬鹿みたいに大きくないけど、それでもこうしてしっかり主張してくる柔らかいものがむにゅむにゅと。


「顔真っ赤だけど大丈夫?」

「それはその……好きな人とくっついていればそうなります」

「可愛い……」

「はぅ……ちょっと出た……」


 こうして俺に学園の女神、もとい、嬉ション彼女ができた。


 喜ばしいことにこのすぐ顔と他のところに出てしまう可愛い彼女との生活がこれからも続くらしい。


「えっと……これからよろしく?」

「絶対離さないから、覚悟して下さい」


 いつの間にか立場が逆転していたが、これもこれで悪くないなと思いながら感触を楽しんでいた。

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