塗装された綺麗な窓
私の世界
暗い世界の中で、ひとりぼっちだと思った。
少しでも世界と繋がっていたくて、部屋を暗くしてカーテンを全部開けた。夜も深いというのにまだ煌々と輝いている光は、海に反射する漁船の光に似ている。そう思えば、この冷たい世界も、少し溶けるような気がした。
上質な生地のキャミソールとショートパンツに、ふわふわのカーディガンを羽織って、温めたワインをゆっくり飲む。意味もわからぬ洋楽をかけて、やっと使い慣れてきたキャンドルを灯して。なんて贅沢なんだろうと、自分でも思う。素敵な夜だ。
それなのに、このまま光の海に溺れてしまいたいと思う私は、贅沢が過ぎるのかもしれない。
世間一般的には「高層」であろう場所から、無数の光をぼんやりと眺めていれば、やっぱり虚しさが募った。こんなにも素敵な夜を手に入れて、これ以上、何を望めば良いのだろう。私は、何を望んでいたのだろう。
「こんなの、私じゃない…!」
思わず投げてしまったワイングラスは、いとも簡単に砕け散り、赤いシミが手触りの良い絨毯に広がる。それと同時に、私の視界もぼやける。
ねぇ、私って、どんなだったっけ?
どんな風に笑って、どんな風に喜んで、どんな風に泣いたっけ?
窓に反射した私は、嫌味なほどに、とても美しかった。
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