廃れたお城の煌びやかな窓

品定め

みすぼらしい格好で時計を眺める私。

あらやだ、ジトジトとした視線を感じるわ。


ボロボロのカバンからブランド物の財布をチラつかせる。


ほら、空気が変わった。

お目が高いですね、なんて話しかけてきちゃって。

さっきまでの視線は、一体どこへ行ったのかしら。

この場に見合う人物であることに、ほっとしたの?

確かに、さっきまでの私だったら不相応よね。

それなのに、ブランド物の財布があれば、一気に相応しくなれちゃうなんて、魔法みたいだわ。


…でもね、残念。私はあなたの誘いには乗れないの。

売上に貢献できなくてごめんなさいね。

だって財布の中は空っぽなんだもの。

この中身を見てもあなたは話しかけてくるの?

答えはNOでしょ?

わかっているわ。見かけが全てなのよね。


私の中身を見てくれる人はどこにいるの?


まだ私にはボロボロのカバンがお似合いだわ。

ブランド物の財布はただのお守り。


もう一度、似合う私になるまで待っていてちょうだい。

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