第14話 待ち人は小動物と
突然の登場に貴族の拘束。部屋にいた者たちは唖然となっていた。
「ハスラム! オマエ戻って。お、お帰り」
沈黙を破ったのはオリビエだった。
「ああ、意外と手間取った」
オリビエの正面に立ち笑いかける。
「何に?」
詳しく聞きたいが、おしえてくれない時のハスラム独特の言い回しだった。
嘘は言ってないが、かなり簡素化している。また後で詳しくという。
「でもさ、よく戻ったな」
「オーリーの雑学が役に立った」
背後に移ったと思うやふと頭に何かが当たる。
いつものように撫ぜていると思ったが感覚が違う。
撫ぜたのではなく頭に指が当たっただけか。
「どれが?」
役に立ったということは、褒めている。
怒られることが多いだけに嬉しい。何にか早く知りたい。
「あれ、みんなどうしたの?」
真後ろに立っているハスラムを見ようと視線を動かした時、動線上にいる正面の皆の表情が見えた。
さっきと全然違っていた。戸惑っていたり赤面していたり。
「あ、あの」
目が合ったフェリオが口を開けた。
「オレたちはどうすれば?」
オリビエの頭に軽くキスをした姿も衝撃だが、その後の表情に見とれた。
男の色気というか、あの幸せそうな顔。ずっと見ていたいと思ってしまう。
「タニア、君にはこれからオレと一緒にリードの残した研究やパトロンの判明の手伝いをしてほしい。ベリーテはどうやら悪い意味で巻き込まれているようだから、クラスト子爵と一緒に見学してくれ」
言い終わると同時に魔法騎士たちがベリーテの両脇を掴み連行する。
「何をするんだ!」
抵抗するが、無駄だった。
「ベリーテ、知っていると思うけど彼らは魔法騎士だから、君ほど剣は使えないが、それを補えるだけの魔力がある。大人しくしていてくれ。オレもいるから」
今度は見る者を怯えさせるような笑顔を向ける。
「オレたちは?」
怒っているハスラムの様子にオリビエは仕事モードになる。
「フェリオと二人で実験の助手をしてくれ」
「どんな?」
ハスラムが指さす先を見る。
「うわぁ! 毛皮の小動物」
かわいいとオリビエは入れられている檻に突進する。
「いろんな種類のがいる」
織は三個あった。一匹ずつ入れられていた。
「バーズ、オーリーを助手に使ってくれ」
控えていた魔法騎士の一人に声をかける。
「は! いいのですか?」
恐縮しきった声や態度を返す。
「オーリー、バーズだ」
ハスラムほどの実力者になると、魔導協会の仕事の時は専任の警護を送ってくる。
「初めまして。あなたのお話しはよく聞いてます」
オリビエはぺこりと頭を下げる。
「いえ、こちらこそ」
同じように頭を下げた。
「あの、ハスラム様、その……」
紹介されたもののバーズとしては、仕えている者の大切な存在を助手にするなど恐れ多いと態度に出ていた。
「オレ、魔術あんまり使えないけど、それ以外ならがんばるから、よろしくお願いします」
力が無い者を助手にと言われ戸惑っていると感じたオリエビは、また頭を下げて即行動と檻を両手で持った。
「どこへ持っていけばいいの?」
「昨日オーリーが魔術を使った部屋に」
「はーい!」
謎が解明すると上機嫌で部屋から出て行く。
「か、かわいい!」
それを見送るように声がする。
「男の子でもかわいいけど、女の子だと分かったらますますよね。あれ磨けば美人よ! 誰もが見惚れるような。ハスラム様とはまた違う美人に」
「オレ、男だから美人ではないよ」
こんな状況で的外れなことを言い、興奮しているタニアにまず訂正を入れて指示を出す。
「タニアは、その袋を持って行ってくれ」
もう一人いた魔法騎士から受け取る。
「フェリオはこの本を三冊頼む」
テーブルの上に乱雑に置かれた本を見る。
「クラスト子爵にこれを投げるところだった」
ハスラムは笑い言う。
当たればどうなっていたか分からない。
「ははは、かなり重いですね」
この重さ。暴挙を抑えてくれてよかったとフェリオはしみじみ思う。
「付いて来てくれ。やることは後で指示するから」
ハスラムは部屋から出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます