Episode Ⅴ (1-5)
西陽が指す頃、い組の生徒達は校内にある桜の木に来た。
普段、部員と委員会活動の生徒がほとんどの放課後。
しかし、この時期は違った。
生徒達はお花見の席取り準備を始める。
お花見の準備はその日限りの実行委員会が取り仕切る。
今回も軽食の調達から、中学の敷地使用許可など生徒達は気合が入る。
い組のルーム長。エレンが中心となって、お花見の準備を進めてきた。
外部入学してきたばかりのアテナは陰光に伝わる春の伝統については寝耳に水。
それだけ陰光の文化となっているのだろうとアテナは思う。
帰りの会も終わり、アテナは皆と一緒に会の準備を手伝う。
設営が完了した。
いよいよお花見の開始。
部活に参加している生徒も飛び入りで来た。
一同は整列し四列に並び座っていく。
実行委員の進行によって、エレンは一人立ち上がった。
「い組の皆さん。付属小からの進学。他校からの進学。同じ陰光生として切磋琢磨していきましょう。では、頂きます」
彼女の返事にい組の生徒達も続く。
「「「「「頂きま~す」」」」」
ブルーシートの上にはサンドイッチ、おにぎり、桜餅。
宴会の定番が用意されている。
二列で軽食が並ぶ。
食べ物の寄せ集めを前に数人の子供達が片手に炭水化物。
もう一方に唐揚げを手にしている。
「う~ん、おいし~! アテナもそう思うでしょ?」
「そうだね。すごくおいしい」
アテナとミツキは、クラスメイトと共に会食を楽しむ。
エレンはミツキと話すアテナの元に来た。
「アテナさん、学校には慣れました」
他校から入学して来た同級生を心配して来た。
「はい。とても楽しい学校です。皆も優しいので、とても居心地よく過ごしています」
アテナが満足そうに言った。
「そう、良かったわ」
一年い組に入学して来た転校生は十人。
飛び級してきたのはアテナだけだった。
「何かあったら、私にも相談してね」
「はい、ありがとうございます。エレンさん」
彼女の言葉にアテナは勇気づけられた。
「さん付けしないで。これからはエレンで、お願いします」
「あっ、はい。エレン……ちゃん」
呼び捨ての慣れないアテナは間を置いてちゃん付けした。
二人は桜の木の下で、握手を交わす。
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