第4話 101

「なんとしても、101歳の誕生日を迎えさせたい」


お母さまの誕生日までは生きていてと望む娘さん

長年病床で過ごされているお母さまを看続け、先の望みを101歳の誕生日とされた


お元気なときの写真が、笑顔のお母さまの写真が、病床のお母さまを見続ける

100歳のお身体は、私たちが触れるたび生きている証を知らせてくださる

温かく

柔らかく

時に熱く、時にひんやりと指先の色を紫にして

まぶたの奥の目を動かして


101歳のお誕生日まであと1日

「あいたい」

声を出すことができなかったはずなのに、娘さんに「あいたい」と

確かに、か細い声を出された


娘さんは、お誕生日に向けて持ってくるものを準備していたけれど

1日早く面会に来てもらい、特別に付き添いをしてもらう


「あいたい」と声をふりしぼってから少しずつ呼吸が乱れてきた

酸素をつけて、少しでも楽なようにするけれど

管をつけるよりも、娘さんの声が聞こえる時、手に触れている時が一番楽に見えた


医療より家族

これが一番の特効薬


101歳のお誕生日を迎えた深夜0時すぎ

しっかりと娘さんの願いをかなえて旅立たれた


101年目に私たちと出会う時間を作って下さったことに感謝

家族のすばらしさを、きずなを、希望をありがとう










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