第3話 山賊

さてさて、どうもこの街には神様は居ない様だ。

いきなり投獄されていきなり虐殺が始まっちゃうとか物騒な世界だねぇ。(しらばっくれ)

なんか知らないけど、財布を沢山貰ってお金を沢山貰ったからとりあえず懐は暖かい。(しらばっくれ)


おっぱいの小ちゃな宿屋のそばかす娘さん曰く

「こここここここの街は裁判所を管理するだけの街なので、そそそそそそもそもそもそも人口自体がすすすすすす少なくので、宿屋どやどやどやどやは私共一ケケケケこけー!」

まだ思春期だろう娘さんが鶏化して失禁して壊れちゃったので、こいつもアイツらの共犯なんだろーなの親父に聞くと


「裁判所しかない街で、平民には旅人の中継地でしか無いから宿屋は他にありません。すいませんごめんなさい許してください現金はそれが全部ですなんならウチの娘も差し上げます多分まだ処女です。」

処女ですかそうですか。そういえばしばらくご無沙汰だな。

処女の初々しさは大好物ですが、幾ら処女でも尿塗れの、まだ膨らみきってない少女は範囲外なので、バイバイと手を振りながら宿屋を出た。

向かいの食料品店の店先にカボチャみたいな野菜と並んで禿頭が置いてあるのが見える。何処行ったかと思ったら、あそこにあったんだ。幾らなんだろう。店の人に聞いてみたくなったぞ。悪ふざけで。


夕べはいきなり宿屋に入っちゃったから、この街の様子はよく見ていなかった。

要はメインストリートが一本、両側に商店が並び裏通りに人家が立ち並ぶ。

メインストリートの片方は、さっき無くなっちゃった裁判所という名のスタジアムに通じ、もう片方は街の入り口になっている、本当に裁判所用の街だった。

変なの。

考えてみれば俺も宿屋に泊まりに来ただけだし、神様がいないなら居る必要もない訳で。

娘さんの処女は少し惜しい気もするけど、オシッコ塗れの処女はノーサンキューだな。


街の出口に戻ると駅馬車が止まっていた。

もうすぐ夕方なのに、馬車は出るらしい。

中年男の馭者が舫を外していた。

「馬車は出るのかい?こんな時間だけど。」

「ああ、お客様かい?お客はこの駅馬車初めてかい?」

「田舎者でな。旅をして見聞を広げてんだけど、夜馬車ってのは見た事無いからさ。」

「なるほど。こいつの厩舎は隣街にあるんだ。峠を一つ越えるんだが、今から出るとまあまあ宵の口に着くのさ。どちらかと言えば人より物を運んでいるんだが、ほれ。他の街に納品して一仕事終えたんだ。本来ならこの街で肉の仕入れが出来る日なんだが、なんかデカイ建物が壊れちゃって肉の入荷とか今日は出来ないらしいんだ。だから丁度帰ろうとしてたとこだよ。」


なるほど、肉ね。

つまりあのキメラは殺しても食べない訳だ。高度な魔物なら肉じゃなく精気を取り込むから、殺した肉は肉に処理して売る訳だ。

…この世界の肉が食べられなくなるじゃねぇか。

今後は何肉か、きちんと確認してから注文する様にしよう。


「で、どうするのかい。乗るのか乗らないのか。出発したいんだけど。」

「ああごめん。乗せてくれ。そっちの街には宿屋はあるのかな。」

「街道筋の宿場町だから、宿屋なんか腐る程あるぞ。」

「出来ればあまり腐って無い新鮮な宿屋を紹介して欲しいんだけどね。」

「女は?ピンからキリまで揃ってるぜ。」

「とりあえず要らない。明日も動かにゃならんからね。その分宿代弾めば文句無かろう?」

「兄さん。まだ若いのに真面目だね。」

さっき無料の処女を一個お断りしてきたしね。

「では、乗った乗った。出発だ!」


馬車に乗るのも久しぶりだ。

ここ二つの世界では、移動魔法が普通の世界やサイバーパンク上等蒸気シュシュポポの正反対な世界だったからね。日本じゃ観光地で乗ろうとしたけど、馬の呼吸が凄くて、なんか可哀想で止めた。

馬からすればいつもの仕事!なんだろうけど。

ここの馬車はわりかし快調で、馬も息を切る事なく快調に歩いている。

人間の客は俺1人。あとなんか魚の燻製が積んである。

馭者の親父曰く、内陸の街だから海魚はどんな物でも好まれる。だ、そうだ。


やがて街道はゆっくりと登り始める。

葛折か、懐かしいな。世界によっては真っつぐ直線で山越え。それが男!な世界も珍しくなかったからなぁ。いろはの看板とか立てたいくらい見事に行ったり来たりしてるぜ。

などと鼻歌交じりで山越えを楽しんで居たら、来ましたよテンプレートが。

この世界って俺がしらばっくれなくても充分に物騒だった。

馬車の行方を男達が塞いだのであるよ。


「この峠は山賊が出るのかい?」

「聞いた事ありませんよう。今まで何年も昇り降りしてますが初めてです。」

手綱を握る手は震え、馬も尻尾を巻いて怯んでいる。

「ふーん。」


黒覆面を被った男達は無言で剣を抜いた。

ジリジリと馬車の包囲を狭めていく。

馬車の正面に立った大人は手の中で魔法を練っている。あの魔法は…、うーんと何だっけ。

「お客さん、もう駄目だ。あれは火球の魔法だあ。」

火球かぁ。こんなとこで火を使ったら山火事になるんじゃないかな。それに強盗なら俺達を燃してどうする。

「狙われる心当たりはあるのかな?」

「ありゃしませんよ。あたしはただの馭者ですよ。馬車の積荷ったって碌な物はないはず。お客さんの方じゃないんですかい?」

俺か?さっき散々殺した捲ったけど、こんなに早く手配されないだろう。

馬車の中はと?うん、確かに魚の燻製の他は牛蒡が1本だけだ。

「美味そうな牛蒡だなこれ。」

「野生の牛蒡を引っこ抜いただけだから、灰汁抜きしないとただの木の棒ででででででやばい射たれる。」


親父が噛み始めたのを聞いて、やっと魔法が練り終わった事に気がついた。魔法使いの手が明るく輝くと、火球がヘロヘロに馬車に飛んできた。

「ほれ。」

飛んで来たのを手に持ったままの牛蒡で地面に叩き落としてみた。

「!」

慌てて男達が切り掛かって来たが、牛蒡でそのまま2~3人の首を叩き落としてみた。みたみたみた。

「この牛蒡切れ味いいな。俺に安く譲ってくれないか?人参と鷹の爪と一緒に胡麻油で炒めると美味しいんだ。」

魔法使い?が慌てて魔法を練り直そうとしてる。遅いしショボいし、こんな放火魔を放置する訳にもいかないか。

「そ〜おれいっと。」

牛蒡で魔法使いの襟を引っ掛かると上空高く成層圏まで放り投げてみた。

あ、牛蒡も一緒に投げちゃった。


「主人悪い。牛蒡を投げちゃった。後で弁償するから足しといてくれるか?」

「あわあわあわあわ。」

なるほど。慌てている様子を口にしてくれる。分かりやすいぞ馭者の親方!

あれ?首が無くなった山賊の他は何処いった?逃げちゃった?

まだ4~5人居たよね。あんなの残しとくと、この親方の商売上がったりだな。

「親方。ちょいと掃除しとくわ。」

荷台から馭者台に場所に移動すると、馬の尻をぽんぽんと叩く。馬は俺に尻尾と鳴き声で「大丈夫」と返答してくる。ある程度知能の高い動物なら簡単な意思疎通が出来る。実は俺のちょっとした特技だけ。

んじゃ、ちょっと息を吸うと声を張り上げた。

「ま"!」

森の中に逃げ込んだ黒覆面達はそのまま山を越えて遥か彼方の何処かへ飛んでった。

あ。お空に流れ星(さっきの魔法使い)だ。


「お客人。あんた何者だよ。」

「だからただの田舎者だよ。」

「あんな事しといてただの田舎者もないだろう。」

「せっかく助けたのにベソかくのは止めてくれ。」

「あっしもただの馬屋なんだから、殺さないでえ。」

「殺さん殺さん。だから早く山を越えてくれ。」

「本当か?」

「嘘つくなら牛蒡代を車代に纏めてくれとか言うか?」

「わ、わかった。とりあえず早く街に向かおう。」

「そうしてくれ。さっきから牛蒡料理が食いたくて堪らないんだ。」

「もう牛蒡はないぞ。」

「八百屋にでも行って探すよ。」

「あんたは本当になんなんだ。」

「実は正義の味方、牛蒡仮面なんだ。」

「素顔じゃないか。」

「素直なんだ。」


俺達の会話の馬鹿っぷりに早く行こうぜ!と馬が主張して来た。

うん、早く行こうぜ。

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