おはよう [日常/ほのぼの/朝/朝食/春]

「うるさい」


 手を伸ばした先にあるはずの起きろ起きろとさわがしい目覚まし時計は、どうやら棚の上から落ちていたらしく、聞いているとイラついてくる忌々いまいましい音をいまだに鳴らしている。


「最悪……」


 残念ながら、ベッドの中に居ては目覚まし時計には届かない。わざわざ温かいベッドの外に出なくてならないなんて、口からこぼれ出るほどには最悪だ。苛立ちとうるささのおかげで目は覚めてしまったし、時間も7時と良い頃だったので、仕方なくも起きることにする。


 目覚まし時計を拾って音を消し、アラームを切る。洗面所へ向かって、歯を磨いて、顔を洗って。リビングに戻ったらテレビをつけて、ニュースを流す。

 今度はキッチンへ向かい、電気ポットに水を入れてスイッチを押し、カップを取り出して、横にフィルターをつけたドリッパーとステンレス製の細口ポットを出しておく。

 コーヒーにはこだわりがあるんでね。


「さて、何食うかな」


 いつもなら同時に食パンをトースターに入れて、コーヒーを入れている間に焼くのだが、今日は休日だ。休日にアラームをセットするという阿保をやらかしていなければ、昼までは眠れていたのに、起きてしまっては腹が減る。

 食パンは昨日食べ切ってしまったから無いし、冷蔵庫の中はすっからかん。あるのは─────


「カレーか……」


 昨日の晩に作ったカレー。あまりは結構あるし、というか、何日か保たせる気で大量に作ったのだから当たり前だ。

 朝からカレーとはなかなか重いだろうが、これしか無いのだから仕方がない。

 コンロに火をつけ、カレーが入った鍋を温める。同時に炊飯器に残っていたご飯を器に入れてラップを掛け、レンジに入れて1分30秒ほど。カレーが焦げ付かないようにオタマを回していると、レンジと電気ポットが同時に音を鳴らした。レンジのご飯はそのままに、ある程度温まったカレーの火を止め、コーヒーの作業に移る。

 電気ポットのお湯を細口ポットへ移し、コップにもお湯を入れる。10秒ほど経ったらコップのお湯を捨ててドリッパーを設置。コーヒー粉を入れてドリッパーを軽く振って平にしたら、ゆっくりつ同じ量でお湯を注ぎ、落ちるコーヒーを見ながら調節して何度かに分けて入れる。

 香りを楽しみながら入れるこの時間が一番の至福だ。

 入れ終わったらドリッパーをシンクに移し、レンジに入ったままのご飯を取り出し、掛けていたラップを捨てる。温まったカレーをそこに入れ、コーヒーが入ったカップと一緒にリビングへ向かう。ソファに座り、ニュースを眺めながらコーヒーを一口飲み、朝食を食べ始める。

 話には聞いていたが、意外にもカレーとコーヒーは本当に相性がいいらしい。思った以上に美味かった。平日は重くて無理だが、休日くらいならカレーも悪くないな。


『今週は全国的に暖かく、今日は18度と特に暖かくなる見通しです。一部の地域では、早咲きの桜が咲いており、春の訪れを感じさせます。続いてのニュースは─────』

「桜か。近くのは咲いてたっけな」


 ニュースに出てきた『桜』が気になり、ベランダに出てみる。

 残念ながら、ベランダから見える通りの桜はまだ蕾で、咲くにはまだ少しかかりそうだ。

 それにしても、今日は本当に温かい。いつもなら肌寒い風も少し落ち着いて、春らしく、一つも雲のない青々とした空が広がっている。


「春だな」


 今日は久々に散歩にでも出てみようか。ここ最近、ポケGoもあんまりできてないし。

 帰りに桜餅でも買って帰ろう。春はまだ先だが、ちょっと先に気分を味わうくらいいいだろう。


「今年は花見、できるかなぁ」


 できるといいなぁと心の中で呟いて、家の中に戻る。

 こうして今日の朝は、穏やかに過ぎて行った。

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雑多ベース 朏 天音 @tukitune

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