第3話
時刻は午前0時を回る頃。俺は、最終電車に揺られていた。突然スマートフォンにマナーモードの振動が胸ポケットに響いた。飲み会が終わり、妻の待つ自宅マンションへと戻ろうとしていた。今日一緒に飲んだ
=LINE1件目=
『今日はお疲れ様でした。また飲みましょうね?』
『今度の土曜日は空いてる? 実は話があるの、お願い、相談に乗って欲しいの』
なんだ。さっき別れたばかりなのに、律儀な女性だな。そんな事でLINEをするとは可愛い女性だなと思いつつ、ポケットに仕舞おうとすると、また着信。
今朝は残業で遅く、午前様になるからと妻にて伝えて出て来た。夜遅いので、心配のLINEかと思いながらLINEを開けてみた。
=LINE2件目=
『もう電車に乗ってるかな?』
『飲み会は楽しめたかな? 愛してるから早く帰ってきてね?』
今度は妻からのLINEだった。そのLINEに返信を出した。
『もう電車に乗ってる。俺も愛してる!』
それに返信すると、今度は登録に無い、LINEが届いた。
迷惑設定はしていたはずだったが、こんなのが届くのは始めてだと思い、無視しようとしたが、無視すべきではない事に気づいた。
=LINE3件目=
『▲▽法律事務所』
「ん? なんだ?」
小声を出しながらLINEの内容を見た。メッセージと2枚の添付画像が付いている。
『山口千紗の男より。あなたとお話がしたいと思います。これからあなたの自宅マンションでお待ちしております。このゲス不倫野郎が! 貴様がもしこれを無視した場合や警察に通報した場合、貴様と奥さんの命はないと思え。まあ、2人でゆっくりお話そうや!』
そして……。
添付画像を見ると……。そこには引きつった笑いの妻。そしてその後ろに写る刃物を持った男の影。もう1枚は電車に揺られてスマートフォンを見ている俺の写真だった。
慌てて、自宅があるホームに到着した駅から、スマートフォンを取り出し発信ボタンを押して110番しようとしたら、突然駅のホームで先ほど別れた山口千紗からLINE通話が入った。
「あっもしもし? 山口さんか? どうしたの? さっき別れたばかりだろ?」
「ハア……ハア……ハア……ハア……」
「おい、どっ、どうしたの? 息が上がってるよ?」
「ハア……ハア……ハア……った、助けて、
「ど、どうしたの? さっき別れたばかりだろ? 何かあったの?」
「ハア……ハア……さっき話しておくべきだった事、後悔してる。お願い助けてください!」
「えっ!? どういう事? 何があったの? 山口さん?」
「わっ、わたし、ある男にずっとねら……」
突然LINEの通話が切れた。もう一度、山口千紗のLINE通話を開始しようとボタンをタップする。
「キャーーー!」
プッ……プッ……プッ……。
一瞬の山口千紗らしい悲鳴の後、無言になり、通話は切れた。心配になりもう一度山口千紗のアドレスに通話をタップする。だが、アカウントは存在しません。と切り替わった。
山口千紗が心配になり、再度タクシーで飲み会があった駅に戻ろうと思い、さらに遅くなることを伝えるため、妻の携帯へ電話を入れた。
「…………」
通話は繋がっているが、無言で返答はない。
「もしもし?
「…………お前が、イ・ケ・ナ・イ」
明らかに男の図太い声が携帯越しに響いた。
「妻に何をしたあ! 貴様あ! 何者だあ!?」
「…………俺は、千紗の男だ…………」
その言葉が俺の背後から直接聞こえたと同時に、背中の腰あたりがいきなり熱くなり、体の力が抜けた。
「ウッ…………。なっ、な、何を…………、なんだっ、これ…………」
俺はゆっくりと地面に転がるように崩れ落ちた。目の前の景色が歪み、夜の暗闇が襲ってくるように夜の景色が揺らいだ。遠くから微かに女性の声が聞こえているように思えた」
「ハア……ハア……関山さん、関山さーん」
誰だろう、知った声だ。山口千紗の声に似ている……。気が遠くなる……。
「誰か、あの男を捕まえて、あの黒のコートの男を捕まえて! 私、あの男にストーカーされてて、この男性も被害者なんですぅ関山さーん! お願い、目を瞑らないでえ!」
山口……。山口……さん……が、……叫んで……る……。
……俺……どうなるんだ……?
「お願い! 誰かあ! あの男を捕まえてえ!」
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