18.アイドル
七月七日、日曜日、夕刻十七時。相川奏太が普段通っている高校に向かうと、今にも雨が降りそうな曇り模様を見せる空の下、閑散とした校門前に一人の少女が立っていた。
可愛らしく整った容姿、スラリと伸びた手足——現役高校生アイドルの日向晴華は、ワインレッドのメガネに黒いキャップを被り、だぼっとした白のティーシャツに黒いスキニーという装いで、腕を組んでいた。
晴華は奏太の存在に気付くと、苛立たしげに奏太をにらむ。
「遅い」
「申し訳ない。でも、まさか本当に来てくれるなんてね」
「勘違いしないでよ。たまたま偶然奇跡的にスケジュールが空いてたから、来てやってもいいかなって思っただけよ。この私が『かわいそう』だなんて思われるのは癪だったし。あんたが言うブイチューバーの輝きってヤツをこの目で見て、やっぱりしょうもないって言いにきただけだから」
そう言って、晴華が鼻を鳴らす。気に入らないという表情で奏太を見るも、奏太が何も言わないのを見てますます顔をしかめた。
「さて、それじゃあ僕の家に行こうか」
「は? なんで?」
訳が分からないという顔になる晴華。
「だって僕の家じゃないと、君に見せたいものが見せられない」
「あんたの家に行って、そのブイチューバーの輝きってヤツが見れるの? ふざけてんの? もしかして私を騙そうとしてる?」
「君がどう思うかは分からないけど、僕はとても素晴らしいものを見せてあげられると思ってるよ」
奏太が飄々とした態度で言うと、晴華は訝しげに視線を鋭くした。
「私これでも、現役のアイドルなんだけど」
「うん、知ってる」
「あんたみたいな男の家に行って、変な噂が立ったらどう責任を取ってくれるわけ?」
「それならもう、ここに二人でいる時点で手遅れだと思うけど」
「……」
晴花は無言になり、ため息を吐いて小さな舌打ちを漏らすと、キャップを深く被りなおした。
「……あんたと話してると、疲れるし、なんかイライラしてくるわね」
「それは申し訳ない」
「はぁ……、もういいわよ。さっさと連れて行きなさい。あんまりあんたと一緒に外に居たくないから」
「わかった。じゃあ行こうか」
奏太は顎を引くと、踵を返して元来た道を引き返す。晴華はそんな奏太と一メートルほど距離を空けながら、その跡に付いて行く。
お互い何も会話が無いまま十分ほど歩き続け、『相川』という札が付けられた建物の前にやって来た。
「ここがあなたの家?」
「そうだよ」
「……中々立派な家ね」
「両親には感謝してるよ。ほとんど家に居ないけど」
「今日もいないの?」
「うん」
ガチャと扉を開ける音がして、家の中から一人の少女が出て来たのはその時だ。
扉の向こうから顔を出した奏太の妹——音羽は、今から外出すると分かるオシャレな恰好で、肩掛けのポーチを提げていた。
しかし音羽は家の前にいる奏太と晴華を見ると、ぽかんと口を開けて、そのまま石像のように固まる。が、不意にハッと意識を取り戻したように、音羽は言った。
「お兄ちゃん……、その人、誰……」
「学校の知り合いかな」
「なんか、わたしが良く知ってるアイドルに似てる気がするんだけど」
「気のせいだね」
「だ、だよねー……、あり得ない、よね。お兄ちゃんなんか、が」
音羽はぎこちない笑みを浮かべたまま奏太と晴華の横を通り過ぎる。
音羽と晴華の目が合い、晴華は愛想のよい笑顔を浮かべ、無言のまま軽い会釈をした。そんな晴華に、音羽はおずおずと頭を下げて、そのまま遠ざかって行く。
「あんまり遅くならないようにね」
音羽の背中に奏太が声をかけるも、返事はなかった。
「今の……妹さん?」
「うん」
「全然似てないわね」
「よく言われる」
「バレなかったかしら」
「大丈夫だよ。もしバレてたとしても、妹はそういう噂を変に言いふらしたりしないから」
「ならいいけど……。もう家には誰もいないの?」
「いないよ」
「……私を家に連れ込んで、変なことするつもりじゃないでしょうね」
「だとしたら、妹は初めから外に追い出してるよ」
「……」
奏太は玄関の扉を開けると、中に晴華を誘った。
「はい、どうぞ」
「……おじゃまします」
晴華はどこか納得できない表情ながらも、素直に奏太の跡に続き、玄関で靴をそろえてから家の中に上がり込んだ。
「こっちが僕の部屋」
階段を上がり、奏太の部屋に入った晴華は、渡されたクッションの上に座りながら、視線を周囲に巡らせた。
「思ったより片付いてる……というより、そもそも物が無いわね」
部屋の中には、ベッドと本が並べられた棚、中央に置かれたローテーブル、そして机とパソコンしかない。
「シンプルなのが好きなんだ」
「まぁ……汚いのより、よっぽどいいけれど」
「じゃあちょっとお茶を入れてくるね」
そう言って部屋から出て行った奏太は、数分ほどでトレイの上に冷えたお茶が注がれたコップ二つと、包装されたお菓子をいくつか乗せて帰って来た。
「どうぞ」
「お気遣いどうも……」
気に入らないという表情でローテーブルの上に置かれたコップを取って、お茶を飲む晴華。もう一つのコップを手に取って、奏太はベッドの端に腰掛けた。
そこで晴華は何かを思い出したように、奏太のことを見た。
「そういえば私、あなたのこと何も知らないんだけど」
小夢と一緒に居たので、コイツが怪しい人物ではないことは理解している。が、しかし、初対面の男子の家にいきなり上がり込むなんて、我ながらアイドルとしての自覚が足りないと思う晴華。
ふと小夢の顔が脳裏を過ぎって、晴華は口の中で舌打ちをした。気に入らない。
「私と同じ学校、なのよね」
「うん、根上さんと同じクラスの相川奏太です」
「相川……ね。……小夢とは、どういう関係なの?」
「友達、かな」
「とてもそんな風には見えなかったけど」
二週間前、小夢を見かけた時、彼女が奏太に向ける視線を思い出して、微妙な顔をする晴華。
「まぁ、あの時はまだ友達になってまだそんなに経ってなかったからね」
「そういう意味じゃないんだけど……」
「逆に聞いてもいいかな」
「なによ」
「日向さんと、根上さんは、どういう関係なの?」
すると晴華の表情が一気に険しいものになる。
「別に、今は疎遠になった幼馴染みってだけよ」
床に視線を落として、吐き捨てるように言う晴華。
「なるほど」
「……なんかあんたの顔、ムカつくわね」
「それは僕にはどうしようもない」
「そういう所がさらにムカつくんだけど」
「悪かったよ」
ほとんど動じていない奏太に、晴華は煩わしいとでも言いたげなため息を吐いた。
「今日の本題に入っていいかな」
「……好きにしたら」
「それじゃあ、軽く説明しておくね。今日の十七時半から、色んなブイチューバーたちが集まるライブイベント『バーチャル七夕フェス』が始まる」
「十七時半って、もうすぐじゃない。こんなとこにいていいの? もしかしてその中継をここで見るって訳?」
「いや違う。『バーチャル七夕フェス』はバーチャルの世界で開催される」
「あんまり詳しい事は知らないけど、ブイチューバーのライブとかって、私たちが使うようなライブ会場でやるんじゃないの? おっきいスクリーンか何かを置いて。なんかそういうの聞いたことあるけど」
「よく知ってるね。うん、そういうのもあるよ。でも、ブイチューバーはバーチャルの存在なんだから、もちろんバーチャルな仮想空間でライブをすることもある」
「それって結局中継みたいな事なんじゃないの?」
「いや違う。僕たちがバーチャルの世界に行くんだよ」
「は?」
首を傾げる晴華を見て楽しげに微笑むと、奏太は立ち上がって机の下の引き出しから二つのヘッドマウントディスプレイを取り出した。
「まあ実際に見てみた方が分かりやすいよね。もう入場できると思うから、行ってみようか」
そう言って奏太はデスクトップパソコンを起動して、数分ほど色々いじった後、ヘッドマウントディスプレイを晴華に手渡す。
「付け方分かる? あ、別にメガネをかけたままでも大丈夫だから」
「何となくね。あとこれダテだから普通に外すわよ」
晴華はヘッドマウントディスプレイを手に取って興味深そうに観察した後、メガネをテーブルの上に置いてそれを身に付けた。耳にぶつかる位置にあったヘッドホンをしっかり装着する。
すると、晴華の視界に飛び込んでくる煌びやかな光景——そこにあったのは、ライブ会場だった。
中央に大きな円盤状のステージがあり、それを取り囲むようにして観客席が一周している。
晴華がいるのは、そんな観客席の上の方の一席だった。ステージ部分の上空には、カラフルな光を放つ球体が浮いており、会場を明るく照らしている。
観客席にはデフォルメされた人間や人間と動物が合体したような者、そもそもよく分からない不思議生物がひしめき合っていた。
「どう?」
急に隣にいた目も鼻も口もない真っ白い人影が話しかけて来て、晴華はビクリと肩を震わせる。
「あんた……相川?」
「うん、そう」
「もしかして……今の私もそういう姿になってる訳?」
晴華は自分の身体を見下ろす。真っ白な肉体が見える。
「そうだよ。普段僕が使ってるアバターがこれだから、申し訳ないね」
「それはまぁいいけど。じゃあここがバーチャル世界の会場ってこと?」
「その通り、すごいでしょ」
「そうね……」
晴華は感心したように、このバーチャル世界の会場を見渡す。
「こういうのがあるって言うのは知ってたけど、実際に体験するのは初めてだわ。思ったより違和感が少ないのね」
「近年の技術の進歩の賜物だね」
「確かにすごいわね。まぁだからと言って、ブイチューバーがすごいかどうかという話は、また別だけれど」
「まぁそれはこれから見られるよ。それより、位置はここでいい? 一応ステージの正面が一番見やすいのはここだと思うけど」
「移動できるの?」
「観客席がある場所ならどこにでも行けるよ。バーチャルだからね」
「もしかして、席の定員とかもないの?」
「流石に限界を超える人が来たらサーバーが落ちるから、無制限って訳じゃないけど、少なくとも現実のライブ会場よりはずっと多く入れると思うよ」
「へぇ、なるほどね……。まぁ、席はここでいいわ。私は初めてだから全部あんたに任せるわよ」
「任されたよ。それじゃあ、ここで見よう。もうあと一分くらいで始まると思う」
奏太の言葉通り、一分ほどが経ったところで、急に会場の照明が落ちた。
そして暗がりの中、円盤状ステージ中央の上空に、巨大な半透明のスクリーンが浮かびあがり、『30』という数字が映し出された。
同時に、会場の至る所に半透明の帯のようなものが出現し、そこに〝コメント〟が映し出された。
『29』『28』『27』とカウントダウンが減っていくに連れ、ステージ中央部分を避けた会場全域に、様々なコメントが浮かんでは消え、また別の場所に出現する。
『キタァァァァァアァァアアアアアアッ!』
『待ってました!』
『アマリスちゃーーーんっ!』
『26! 25!』
『なんかこっちが緊張してきた』
『うおおおおおおおおおおおおおおお!』
『マジで楽しみ』
『きたきた』
『我大興奮也』
『今日の為に生きてきた』
「な、なに、あれ……」
若干引いた様子で、次々に出現しては消え、また出現するコメントを見る晴華。
「今これを見ている人たちのコメントだね。設定で消すこともできるけど、今回は有りで見よう。何なら僕たちも打ち込むことができるけど、送ってみる? これを付けてるから、ブラインドタッチか、音声認識って形にはなるけど」
「い、いや、遠慮しておくわ……」
やがてカウントダウンが『0』を示し、その次の瞬間、ステージ中央に光の爆発が起こる。虹のような光が広がって、その中から現れたのは、頭部が〝マイク〟になっているスーツ姿の男性だ。マイク頭の男性がライトアップされ、上空のスクリーンにその男のアップが映っている。
マイク頭の男性はマイクを手に持つと、興奮した口調で言う。
「さぁさぁさぁ! 始まりました『バーチャル七夕フェス』。観客の皆さんが住んでいる
そんな男の掛け声に合わせて、至る所に映し出されているコメントの量が一気に増え、盛り上がりを見せる。
『いえぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!』
『またお前が司会か』
『待ってましたあぁぁぁぁ』
『マイク野郎の司会は安心できる』
『ふぅぅぅぅぅぅぅっ!』
『うおおおおおきたぁぁぁぁあうおうおうおう』
『やったぁぁぁぁぁあああっ!!!!』
「盛り上がってますねーっ! 皆さんの声がリアルとバーチャルの壁を破って聞こえてくるようです。あぁ自己紹介を忘れていました。初めての人はお初にお目にかかります。司会の仕事とあればどこへでも駆けつける——世界初司会系バーチャルユーチューバーの〝まいく〟と申します。以後お見知りおきを」
マイク頭にスーツ姿の男——まいくは優雅な礼を決めると、表情の変わらないマイク頭を会場全域にグルリと向け、またマイクを構える。
『それではさっそくトップバッターの登場だああぁぁっ! トップを飾るのはこの可憐な少女たち。『ミリオンスカイ』所属の正統派バーチャルアイドルグループ——『グリッターハニーズ』の皆さんです!』
するとまいくの姿がパッと消え、また会場が暗がりに戻る。シンと静まり返った真っ暗なステージ。
数十秒の静寂を経て、パッとその中央にカラフルな光が灯った。
光に照らされて浮かびあがるのは、五人の少女たちの姿。同じデザインで各々色が違うアイドル衣装に身を包んで、瞳を閉じて背中合わせになっている。
それを認識した次の時、ポップなメロディが流れ始める。
アップテンポ調のイントロが終わり、その瞬間、五人の少女たちがパッと目を開けてメロディに乗せて歌い始めた。
一人ずつが順番に歩きながらそれぞれのパートを歌い、五人全員が平等に歌い終えた時、彼女たちは横に並んでいた。
そして五人が一斉に口を開き、息の合ったハモリを魅せる。
サビが終わり間奏に入ると、それぞれが新しいポジションに着いてダンスを始める。彼女たちの動きに合わせて、煌びやかなエフェクトがステージ上に弾けている。
コメントは大盛り上がりで、彼女のファンたちが彼女らの名前を呼んだり、歌やダンスを称えたり、ただひたすらに感動していたり、愛を叫んだりしている。
盛り上がりやすいポップな曲が終わると、照明の色合いが温かみのある淡いものになり、彼女のたち五人の衣装が一瞬にして切り替わった。
さっきまではフリルが多いミニスカートだったのに対し、今度は落ち着いた雰囲気のあるロングスカートだ。そして、しっとりとしたバラードを五人で歌い上げる。
二曲歌い終わった所でまたマイク頭のまいくが現れ、彼女たち五人の紹介を交えながら、テンポの良い掛け合いを始めた。
コメント欄に笑いが起こる。
それが終わると、次に現れたのは鋭い目付きの青年と、たれ目の青年の二人組。男性アイドルらしい格好に身を包んだ二人は、最初に自己紹介をしてから、曲名を告げて歌唱を始める。
疾走感があり転調の多いメロディで、そんな難しい曲を綺麗に歌い上げる二人。
コメントは相変わらず大盛り上がりである。現実のライブで起こる歓声とはまた違う、独特の雰囲気があった。
一曲を歌い終えた所で、二人は別れを惜しむ台詞を口にしながら次の主演者の紹介をして、去って行った。
そして新たに現れたのは、煌びやかな長い銀髪に金のメッシュ、派手なゴスロリに身を包んだ一人の幼い少女だ。その少女は高らかで可愛らしい笑い声を響かせると、
「ごきげんよう同胞諸君! よく来たな! 此度はこの
一組目、二組目と、アイドルらしい人物だったのに対し、今度は全く毛色の違う人物が登場した。しかしコメントは特に動揺した様子もなく、口々に思いを叫んでいる。
『アマリスちゃーーんっ!』
『アマリスーっ!!』
『出たな厨二ロリ』
『お、アマリスか』
『きたあああああああああああああああ!』
『アマリスすき』
『まさかアレを歌うのか?』
アマリスと呼ばれている少女はステージ中央で謎のポーズを決めたかと思うと、タンッとその場でターンを決め、バッと両手を左右に突き出すように広げた。左右で色の違う彼女のオッドアイが光る。比喩ではなく、本当に光った。
「おぉぉぉおおおお、おぉぉおおおおおっ!? く、来るぞ……っ! この妾の肉体に秘められし
その次の瞬間、アマリスの背中に漆黒の翼が生え、天に向かって急上昇した。
「ハーハッハッハッハ! フハハハハハハハッ! ハーーーハッハッハッハーーッ!!」
「——!?」
予想外過ぎる現象が起こり、思わず晴華は吹き出した。
しかし隣にいる奏太も、映し出されているコメントたちも、それを当たり前のものとして受け入れている。そして晴華は、このブイチューバーのライブに見入っている自分自身に気付いた。
「さぁ——、宴を始めよう。今宵妾が奏でるのは、この妾が自ら言霊を刻んだ
そして激しいメロディが流れ始める。宙に浮いているアマリスは四方八方に飛翔しながら、豪快に歌い上げる。彼女の激しい動きに合わせて、炎が上がったり、雷が落ちたり、爆発が起こったりともう
また、その背後には、派手なエフェクトをまき散らしながら曲の歌詞が映し出されている。異様に難解な漢字が多く、その殆どに横文字のルビがふられていた。
最後まで空中に浮遊したまま歌い切ったアマリスは、くつくつと笑いをこぼしながら言った。
「同胞諸君の拝聴に感謝しよう。この妾に続くのは、とある事情により今宵の宴への参加が不可能になってしまった同胞の代わりを務めてくれる魔界からの使者——
哄笑を残して、物凄いスピードで天高く舞い上がったアマリスは天空へと消える。そして、視線をステージ上に戻した時、そこには一人の少女が立っていた。
赤みが勝った黒髪、可愛らしく生えた小さな二本のツノ、蝙蝠のような翼と、先がハートの形に尖った尻尾。どこかダークな雰囲気のあるアイドル衣装に身を包み、その少女はマイクを手にしている。
〝彼女〟とは似ても似つかないその姿に、何故か晴華の胸の奥がざわついた。
その少女が、緊張の面持ちでマイクに向かって口を開く。
「こ、こんばんは! 魔界から来た小悪魔のマクアです! 初めましての方が多いと思います! このイベントの最初の告知があった時は、本当は別の方がここに立つ予定でした。その方を期待していた人が居たら、ごめんなさい」
少女が頭を下げて、顔を上げる。その瞳には、意思があった。しょせんただの〝絵〟、しょせん〝
「——でも、絶対に後悔はさせません。今日、ここでマクアのことを知れてよかったと思わせてみせます。聞いてください————」
少女が曲名を告げ、イントロが流れ始める。
晴花は思わず隣の奏太に声をかけた。
「ねぇ相川、あの子って———」
「なに?」
「……いや、やっぱりいい」
晴花は言いかけたその言葉を呑み込んで、ステージ中央に立つ一人の少女に、ただ視線を向けた。
◇◆◇◆
【アイドル】——輝く存在。人々に夢を与える存在。
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