14.悔しくて眩しい
奏太と出かけた翌日の日曜日、小夢は夕方までほぼずっとベッドの上で過ごした。
ぼうっと呆けたようにぼんやり天井を見つめ続けた。食欲も湧かなかった。日曜日ということで、ずっと部屋にいても午前中は特に心配はされなかったが、流石に昼過ぎにもなると、心配した母親が小夢の様子を見に来た。
しかし、小夢は「大丈夫、ちょっとしんどいから一人にさせて欲しい」とだけ言って、部屋にこもった。
自分でもどうしてこんなに何もする気が起こらないのか分からなかった。
時折あふれてくる涙の訳も分からない。ただ、〝くやしい〟という気持ちだけが、胸の中に渦巻いているのが分かった。ただそのくやしさも、何に対してのものか分からない。
身体に力が入らず、ただ寝間着のままベッドの上に寝転び続け、たまにあふれて流れ出す涙を拭う。
そんなことを繰り返している内に、日が暮れた。不思議なことにちっともお腹は空かない。不思議だとは思ったが、よく考えるとほとんど動いていないのだから、当たり前の話かもしれない。
ふと、コンコンとドアがノックされて、ドアの隙間から母親の顔が覗く。泣き腫らした顔を見せたくなくて、小夢は寝返りをうった。
「小夢、大丈夫?」
「う、うん……、でも、やっぱり体調よくないみたいだから、まだ寝てるね」
「そう、何かあったらすぐに言ってね」
そしてまたドアが閉じられ、部屋の中が暗闇に戻る。日も落ち、カーテンも閉めているから本当に真っ暗だ。何も見えない。
ただ、頬に感じる熱いものから、自分が泣いていることが分かった。
小夢がその涙を拭おうとしたその時、隣の部屋から叫び声が聞こえてきた。兄である凛斗の声だ。
『——あああああぁぁぁぁああああぁぁああああああああああぁぁああっ!? やっぱりてんこちゃん天使ぃぃぃぃいいいいいいい!』
今日も兄は相変わらずである。
ブイチューバーの慈愛天使子を見て、彼女に愛を叫んでいる。凛斗は浪人生であるが、ちっとも悲壮を感じさせない。
純粋に毎日を楽しんで、その上でしっかり勉強をしている。
実際、こんなアホみたいなことをやっているにも関わらず、凛斗の成績は落ちていないようで、むしろ前より上がっていると言っていた。
去年の凛斗は、毎日苦しんでギリギリの状態で、見ているこっちが辛くなりそうな姿勢で受験の勉強をしていた。しかし今は違う。
一体何が凛斗を変えたのかと聞かれれば、答えは一つだろう。
天使子が凛斗という存在を変えたのだ。それも傍目にすぐ分かるほど。そしてそれはきっと凛斗だけじゃない。300万近いファンを持つ天使子が影響を与えた人たちはもっと、もっとたくさんいるはず。
天使子は日々活動して、それだけ多くのファンの人に、一時の楽しさや癒しを与え続けている。それがどれだけ凄い事か、実際に一人のブイチューバーとして活動している小夢だからこそ分かる。
こんなよく分からない事で、ほぼ一日動けなくなってしまうような小夢とは、まさに天と地ほどの差があるように感じた。
隣の部屋から次々聞こえてくる兄の咆哮を聞いて、奏太という一見どこにでもいそうな少年の魂が演じる『慈愛天使子』という存在の大きさを実感させられる。小夢の胸にズキンと痛みが走った。
一体この痛みは何なのだろう。——たまらなく、くやしい。
その時また、一際大きい凛斗の声が聞こえる。
『——あああああぁぁっ!? やっぱり生で見るてんこちゃん最高ぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉおおおおおおぉぉぉぉぉ』
「生……?」
てっきり、凛斗が見ているのは、天使子の動画かアーカイブだと思っていた。凛斗は勉強の休憩として、天使子のコンテンツを良く堪能している。
そして毎回叫んでいる。しかし今、凛斗は間違いなく『生』と言った。
「——っ!」
何かに弾かれたようにベッドから起き上がった小夢は、こけそうになりながらも部屋の電気を付け、デスクトップパソコンの前に駆け寄り起動する。
パソコンが起動する数秒がとても長く——、今日ベッドの上で過ごした何時間よりも長く感じた。
パソコンの電源が入り、小夢はマウスとキーボードの上に指を走らせ、天使子のチャンネルページを開く。
そのページのど真ん中に映し出されるのは、『♡エンジェル放送局♡——今日はなんと! 〝あの〟カガヤキサキちゃんとコラボ!? そして重大発表も!?——』というタイトルと、『天使子』と『サキ』が二人で笑い合っているサムネイルが映っていた。
ふと、先日、彩輝に初めて出会ってカラオケに行った日、奏太と彩輝が言っていた言葉を思い出す。
——『もーっ、ソウくんはツンデレだなぁ。二人で一緒に色々やってきたじゃんっ。あっ、あと今週末も一緒に遊ぶよねーっ』
——『彩輝さん、今週の日曜はアレもあるんだから控えめにしときなよ』
そうだ。確か今日は、天使子とサキのコラボ配信がある日だ。先日二人のツイッターでそんな告知があった。すっかり忘れていた。
小夢はカーソルを再生ボタンの上に重ねて、クリック——、パソコンのスピーカーから天使子とサキの声が流れ始める。
『きゃぁっ! ちょっとーっ! サキちゃん今のはひきょうだったよぉ! もう』
『へっへっへーっ! でもあたしの勝ちだもーんっ! はっはっはーっ』
天使子とサキがいるのは、壁床天井にマス目が刻まれたサイバー電脳空間——
一方、天使子は床に尻餅をついて、頬をぷくっと膨らませながらサキを見上げており、手には青いオモチャのピストルを持っている。
パソコンの画面端には、現在この配信を見ている視聴者たちのコメントが凄いスピードで流れていく。
『サキちゃんずるくて草』
『てんこちゃん惜しかったなぁ』
『サキちゃん勝利!』
『てんこちゃん次勝とう! 次!』
『かわいい』
『サキちゃんおめ』
『てんこちゃんかわいい』
『サキちゃんかわいい』
どうやら二人は今、仮想空間にて銃撃戦ゲームのようなものやっているらしい。
『んー? あ、はーい。なんか今スタッフさんから、時間的に次が最後だって』
『えぇー、もう最後なの?』
『ふっふっふ、次もあたしが勝つからね』
『いや絶対わたしが勝つ! 負けないから!』
天使子が立ち上がり、気合を入れるようにムンと拳を握った。その表情は真剣である。隣の部屋から凛斗の咆哮が聞こえてくる。
そして、二人のバトルが始まる。開始を知らせるようなゴングが鳴って、ピストルを構えた二人が、撃ち合いを始める。
しかし、ピストルから出る光の弾の速度はそこそこ遅く、二人は「わーきゃー」言いながら余裕をもって回避していく。このままじゃ一生終わらないんじゃないか、小夢がそう思った時、合成音声によるアナウンスが響いた。
『——問題 歴史上の人物、豊臣秀吉が温めていたのは、織田信長の何?』
『え? えーっ! なんだったっけ! わぁどうしようド忘れしちゃった!』
『あっ! はい! はいはいはい!』
天使子が首を傾げ、サキがぴょんぴょん跳ねながらピストルを振り回して部屋をキョロキョロ見渡す。
すると部屋の隅の床から、太めの円柱が生えてくる。その円柱の上には、クイズ番組などでよく見るボタンが乗っている。
それ見たサキが円柱に向かって走り出し、それを天使子はピストルを撃って妨げようとするが、サキは難なく円柱の元に辿り着いて、ボタンを勢いよく押した。
ポーンと軽い音が鳴って、サキが自信満々に叫ぶ。
『こころ!』
ブーッ! という音が響いた。
『え!? ウソ! 違うの!? ふとん!?』
またブーッ! という音が響く。そしてサキの手の中にあったピストルが消失する。
『わあぁぁぁっ! ピストル消えたぁ!』
『あ、はい! 思い出した!』
ピストルが消えて慌てているサキの元へ走り、今度は天使子がボタンを押す。
『ゾウリ!』
ピンポン! と正解と分かる音が鳴り、天使子の手元にもう一つのピストルが出現する。
『わぁそれやばいって!』
『ふっふっふ、覚悟しろ』
慌ててサキがその場から逃げ、それを天使子が両手にピストルを構えて追いかける。天使子が圧倒的有利な立場にあるにも関わらず、抜群の身体能力を持つサキは、ギリギリの所で天使子の銃撃を回避していく。
三十秒ほどでサキの手元にピストルが戻り、天使子のピストルも一つに戻る。
そして、また合成音声のアナウンスが響いた。
『——問題 赤ちゃんが産まれた時、初めてあげる声を何と言うか?』
『あっ! はいはい! これは分かる絶対分かる!』
またもサキが自信満々の声を上げるも、ボタンが出現したのは天使子のすぐ側だった。
『あぁっ! ずるい!』
天使子は反射的にそのボタンを押し、少し戸惑ったような口調で言う。
『え? バブー?』
ブーッ! という音が響き、今度は天使子の目にアイマスクが出現する。
『ひゃぁっ!? 暗い!』
視界が閉ざされてウロウロしている天使子をひとしきり笑った後、サキがボタンを押して答える。
『はつごえ!』
ブーッ!
『えぇっ! 違うの!?』
そして、サキが間違えたペナルティとして、天使子が持つピストルがロケットランチャーのようなものに変わる。
『えっ!? なにそれ! そんなのもあるの!?』
見るからにやばそうなロケットランチャーを見て、サキが悲鳴を上げる。そして目隠し状態の天使子が、サキの声がした方向に銃口を向けて引き金を引いた。
『げっ!』
特大の光の弾が発射され、それはちょうど部屋の隅にいて逃げ場がなかったサキに直撃する。
ピィーッ! というホイッスルが鳴り響き、合成音声が天使子の勝利を宣言した。
『ああぁぁぁ負けたぁ、くやしいぃ!』
本気で悔しそうなサキに、フッとドヤ顔を浮かべた天使子が言う。
『ほらーっ、わたしが勝ったでしょ?』
『むーっ』
不満そうに唇を尖らせるサキだったが、すぐに気を取り直したような顔になって、天使子に尋ねる。
『結局、最後の問題の答えは何だったの?』
『普通に産声だと思う』
天使子がそう言うと、ピンポン! という音が鳴った。
『あぁ! なんか聞いたことあるそれ!』
『えぇ、サキちゃん……、ウソでしょ。常識だよ』
『でも天ちゃんも間違えてたじゃんかぁ』
『あ、あれは、その、咄嗟だったからつい言っちゃっただけで……』
自分の回答を思い出したのか、恥ずかしそうに顔を赤くする天使子。隣の部屋から凛斗の咆哮が聞こえた。
その後、二人は『楽しかったー』『ねー』などと、少し感想を言い合った後、サキが『こちら側』に向かって敬礼しながら言う。
『それでは天ちゃんのお部屋に戻るので、しばしお待ちを!』
画面が切り替わり、『しばらくお待ちください』という文字が映し出される。背景には、天使子とサキが笑顔で抱き合っている画像が映っていた。
数分後、また画面が切り替わって、今度は青と白系統のパステルカラーを基調とした青空を彷彿とさせる部屋が映し出される。
部屋の隅にはぬいぐるみやゲーム、漫画、DVDの山が積まれており、真ん中に映し出された大きなソファアに天使子とサキが並んで座っている。
『お待たせしましたー』
『みんなただいまーっ』
天使子とサキが『こちら側』に向かって手を振る。それから、視聴者から送られてくるコメントを拾いながら、二人は息の合った掛け合いで、今日の配信の感想会のような会話をしていく。小夢がマクアとして配信している時よりもずっとテンポがよく、的確なコメントを拾って、その場に自然な笑いを作り出している。
そこで小夢は、自分が笑っていることに気付いた。この配信を一人の視聴者として、いつものように楽しんでいる自分に気付いた。
さっきまであんなに暗い気持ちで、何もする気が起きなかったのに、いつのまにか楽しんでしまっている。天使子とサキが作り出すエンターテインメントの質の高さを思い知らされる。
ただ、胸の奥に渦巻いている謎の〝くやしさ〟だけはまだ残っていた。むしろその感情は、さっきよりずっと重くなっているように感じる。
『はいっ、それでは今日の楽しい放送にも終わりが近付いて来た訳ですが、サキちゃん! 何か告知したいことなどはありますか?』
『え? なんかあったけ』
『えぇ……、忘れないでよ』
サキが不思議そうに首を傾げ、それを見た天使子が呆れる。
『ほら、円盤』
天使子がサキの耳元に口を寄せて、小声で言った。
『あぁ! それだ! はい! えぇっと、なんと! あたしのファーストライブのブルーレイディスク&DVDの発売が決定いたしました! みんなもう予約してくれた!?』
そんなサキの呼びかけに、視聴者からのコメントが流れる。
『予約しました』
『もちろん』
『もちろん予約したよ!』
『はやく欲しい』
『あ、やべ、予約忘れてた』
『予約するつもり』
『今予約した』
数えきれないほどの視聴者から、予約をしたという報告のコメントが流れていた。
『わぁーっ! みんなありがとう! 大好き! え? あ、なんか宣伝ムービーがあるみたいなんで、今から流してもらいまーす!』
サキのその言葉を合図に画面が切り替わって、どこかの現実のコンサート会場が映し出される。数千人という観客が満員でひしめき合い、サイリウムの光が輝いていた。会場正面の大きな立体スクリーンの中に、『カガヤキサキ』の姿が映っている。
『みんなーっ! もりあがってるかーっ!?』
サキのコールに応えるように、圧倒的な熱量を持ったレスポンスが返ってくる。画面越しでも、確かな〝熱〟を感じた。小夢の胸に謎の痛みが走る。
——カガヤキサキの存在感に満ちたシリアスな歌声が流れる。それを会場の観客たちは、少しも身じろぎせず、静かにただ聞き入っている。
——カガヤキサキが激しく踊りながら、アップテンポ調の曲を歌い上げる。観客たちのサイリウムがリズムに合わせて揺れ、歌詞の合間に勢いが暴走したような合いの手が入る。
——カガヤキサキがしっとりとした歌声で、会場そのものを震わせるバラードを歌っている。優しい色の光を灯したサイリウムが、ゆっくりと、寄せては返す波のように揺れている。会場を照らす一つ一つのそれらは、まるで夜空に浮かぶ満点の星だ。
——マイクを持ったカガヤキサキが、思わず込み上げたような涙を浮かべながら、今まで応援してくれたファンへの感謝を述べ始める。
————そこで画面が切り替わり、発売されるブルーレイディスク&DVDのタイトルと、発売日、そして予約受付中の文字がドン! と映し出された。
そこでようやく、小夢は自分が見ていたのがあくまで宣伝映像であったことを思い出した。
まるで夢から覚めたような感覚。そこに込められたあまりの熱量と輝きに、完全にライブの世界に入り込んでしまっていた。
締め付けられるような心臓が痛みを訴え、小夢はギュウと自分の胸に爪を立てる。
『はいサキちゃんありがとう! わたしもサキちゃんのライブは画面越しに中継で見てたけど、
もうほんっとにすごかった! 最高だったなぁ。あのライブがいつでも見られるようになるなんて、これはもう買うしかないよね!』
『うんうん! その通り! みんなもお財布と相談して是非手に入れてね!』
『そうだね、みんなくれぐれも無理はしないように。さてじゃあ、わたしの方からも宣伝を一つ』
『お? なになにっ?』
『二週間後の七月七日の日曜日! 『バーチャル七夕フェス』というイベントがあります! わたしが出演するわけじゃないんだけど、色んなブイチューバーが集まって歌ったり踊ったりの、もうさいっこうに楽しいバーチャルライブだよ! わたしのかわいい後輩ちゃんたち、『グリッターハニーズ』のみんなが出るので、ぜひぜひ興味があれば見てください! わたしも絶対見る! 現在チケット販売中です!』
『おぉーっ! 『グリハニ』の子たちも出るんだ!? 知らなかった! 見ないと!』
『サキちゃん……。サキちゃんの先輩たちだよ?』
『あ、やば』
サキが慌てて口元を押さえる。そんなサキを天使子が呆れたように見ながら、『あとでみんなに言っておこーっと。これはオシオキだね』と言う。
『え!? 天ちゃんやめて!?』
『ていうか、あの子たちもこの放送見てると思うけどね。さっき何人かコメントしてるの見かけたし』
『ウソ!?』
『はい、そんなおバカなサキちゃんは置いといて。そろそろ最後のお知らせに行きたいと思います。みんな忘れてないーっ? 重大発表のこと』
天使子がジト目で『こちら側』を見て、指先を向けてくる。
『んー、みんなそんなに気になるか。そっかそっかーっ。え? 教えて欲しい? どうしよっかなぁ』
天使子が流れてくるコメントを読みながら、視聴者との掛け合いを始める。
『ほうほう、みんな色々な予想してるね。何だと思うーっ?』
『はいはい! あたし知ってます!』
隣でピーンと手を高く上げるサキ。
『いや、そりゃサキちゃんは知ってるでしょ……。——あっ、これはヒントになっちゃうか。おー? ふむ、そうです。みんなも言っている通り、今日の発表はわたしとサキちゃんに関わることだよ。なんだろうなぁ。あ、今正解言ってる人が居た。ということで、ついに発表しちゃいたいと思います』
そこで天使子が一呼吸置いて、口を開いた。
『わたし慈愛天使子と、サキちゃんことカガヤキサキの! 初のオリジナルデュエットソングのリリースが決定しました! それもなんと! 各配信サイトでのリリースはこの放送が終わった直後から! 詳細はまた『ミリオンスカイ』公式から出ると思うので、ツイッターの方をチェックしてね!』
その発表を聞いて、コメント欄のスピードが一気に速くなる。驚きの声。お祝いの声。感動の声。嬉しさの声。ただの文字にこもる熱がどんどんと温度を増していき、小夢は拳を握った。強く握りすぎるあまり、手の肌が白くなる。
『うわあああぁぁぁっ! やったぁぁああっ! 天ちゃんとのコラボ曲だ! もう本当に嬉しい! あたしこのことが早く言いたすぎて、今日何度かポロッとこぼしちゃいそうだったもん!』
『あはは、何度か危ない場面あったね。ひやひやしたよ』
『えへへ、ごめんねー』
『もう、サキちゃんは仕方ないんだから。あっと、時間ももう残り少ないので、いよいよアレをしちゃおうと思います』
『いやー、もう緊張するなぁ。ドキドキだよ』
『それでは今から、二人の初のオリジナルデュエットソングのリリースを記念して、なんとなんと! その曲を今から、ここで、生で歌っちゃおうと思います! みんなパソコンの前で正座して、集中して聞くんだぞーっ? あ、また別のとこに移動するからそのままちょーっとだけ我慢しててね』
天使子が『こちら側』に向けて片目を閉じ、ペロっと舌を出す。
画面が切り替わり、また先ほどと同じように『しばらくお待ちください』という文字が映し出される。
コメント欄がどんどんと盛り上がりを見せる中、今度は一分もかからず画面が切り替わって、画面の中に、バーチャル世界のライブ会場が映し出される。
先ほどとは違うライブ衣装に着替えた二人が、ステージ中央で背中合わせになっていた。マイクを持った天使子が静かに曲名を告げると、イントロが流れ始める。
——その世界での二人は、輝いていた。
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