第4話 ファミレス(待ち伏せ)

 その日、陽はまだ高い位置にある午後、そのファミリーレストランの入り口側にある駐車場に、一台の高級バンが停まっていた。その車は、黒のメタリック塗装で、フロントガラスを除くすべての窓に、濃いスモークフィルムを張っていた。中には三人の男がいた。運転席のサングラスを掛けた男がドアミラーを注視しながら口を開いた。

「盗聴器を仕掛けておいてよかったですね。目的のものが発見できなかった時はどうなることかと思いましたけど」

 一人だけ、スーツに身を固めた男が、助手席側のドアミラーを気にしながら答えた。

「目的のものが、家に無かったということは、彼女が所持している可能性が高い。ここで例の女と会う前に何とかしないと」

「しかし、なんでこんなまどろっこしいことするんだよ。相手は高校生の娘っ子で、今は一人暮らしなんだろ? 深夜に押し込めじゃいいじゃないか」

 二列目の席の、派手なシャツを着た若い男が、いら立ちを隠そうともせず吐き捨てた。運転席の男は、その言葉を聞いた途端、ハンドルを平手で強く叩き、後ろの席を振り返った。

「お前は馬鹿か。表沙汰にならないようにと言われただろうが。これだから素人は困る」

「おめえが見つけられなかったせいだろうが」

 二人はつかみ合いを始める勢いで、いきり立った。

「まあ、二人とも落ち着け。いいか、もう一度確認しておく。今回の仕事は、なるべく合法的に、女子高校生から化石を入手することだ」

 助手席のスーツの男が、両手の爪を気にしながら、物静かに二人を諫めた。

「それにしても、なんでこんなに慎重なんです」

「お前たちに話す必要はないと思っていたが、まあいいだろう」

 足を組みなおしたスーツの男が続けた。

「その化石というのは、中央アジアのある国で先ごろ発掘されたもので、何やらとんでもない価値があるものらしい。依頼主は、東南アジアの華僑の大富豪なんだが、そいつは狂が付くほどの化石マニアで、そのことを知ると、どうしてもその化石を手に入れたくなった。しかし化石はその国によって厳重に管理されているから、手が出せない。しかしそのうちの一つが、現地から日本のある一人の女子高校生の元に渡ったことが分かった」

「なるほど、それで我々に依頼が来たってわけで。しかし、マニアって言うのは何でも欲しがりますからね」

「だからって、手荒な真似は出来ないってことにはならないんじゃ」

 まだ強行奪取を諦めきれない若い男が反論する。スーツの男は、臨時雇いとはいえこの男をチームに入れたことを後悔していた。

「それはな、アメリカが動き出しているからだ。だからこの国の法律に触れずに、穏便にことを済ます必要があるんだ」

 派手なスパイアクションを期待していたに違いない若い男も、アメリカと聞いて口をつぐんだ。

 と、運転席の男が声を上げた。

「来ました。間違いありません彼女です」

 車内は一瞬のうちに緊張に包まれた。

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