ガ〇プラ完成!
何がなんだか、ワケが判らないよ!
特職商人のアインガンさんにまた会う予定の前日。例によって安宿で、新たなる変身、「ゴーレム
いきなりマヌーに、猫パンチを食らった!
「チュウゥゥゥゥ!」
悲鳴をあげて俺っちは吹き飛び、ベッドの端に叩きつけられた。
「いたたたたたっ、何すんだよ!」
「……クライン、お前は今まで、身体がバラバラ死体になってたんにゃ!」
うっ、マヌーが激怒してる。
「バラバラって、どういう……」
フー、フー、と肩で息をしながら(猫に肩はないけど)、マヌーは説明を始めた……
突然、俺っちが首も手足もバラバラになって崩れ落ちたこと。
突然、俺っちたちのことを知っているらしい金色に輝く謎の球体が現れたこと。
その球体に、俺っちが魔力切れなので魔石をあげるよう言われたこと。
そこで、日用品を手あたり次第に壊して魔石を拾い、俺っちに魔力を吸わせたこと。
その結果、俺っちの崩れた身体は、あやつり人形のからくり紐を引っ張るがごとく、元にもどったこと。
「はあ、その球体って、何者なんだろう……?」
「あ゛~!! そんなの、どうでもいいにゃ!」
ケットシー族は俺っちに吠えた。
「クライン、お前が変身から戻るとき股間や尻を指差ししてるのを、おいらは見てるにゃ。変身には危険があること、お前は知ってたはずにゃ。だいいち、身体がバラバラになるほどのことなら、前もって何か感じてたはずにゃ。お前は本当にすぐ調子に乗るにゃ! ……ああ、おいらがお前並みに利口だったら、何か気付いてやれたかも知れないのに、かんじんのお前ときたら……間抜けにもほどがあるにゃ!!」
「あ……ご、ごめんよ、心配かけて」
デカ猫の
「……でもさ、ホントにさっきまでバラバラになってたんなら……ぶっ叩くのはやりすぎなんじゃないかな……」
マヌーは俺っちにとってライオンよりもデカい顔を、ぐい、と近づけた。
「ネズミはそう簡単にくたばらないニャ。それに……」
猫顔が凶悪な笑みに歪んだ。
「お前が間抜けで無駄に死ぬのをただ見てるより、おいらがこの爪で殺してやるほうが、ずっとマシにゃ」
次の日の午後おそく。
僕たちは、また特職ギルドの建物を訪れていた。
僕の姿は、例によってゴーレム
「本当に大丈夫なのかにゃ?」
車掌バッグを覗き込み、マヌーが声をかけてくる。
「今のところは。ヤバイと思ったらすぐ解除するから」
「やばい……?」
マヌーを説得できた理由は、僕の工夫にある。夜遅くまで頑張って(マヌーはすぐ寝た)、そして早起きして(マヌーは昼まで寝てた)、なんとかカタチにしたものだ。
もちろん掃除もした。ちょっと眠いぜ!
工夫その1。
いまの僕の背中には、体内魔力が少なくなると色が変わる三角形の「タイマー」がついている。魔灯の魔法陣を色々と
これも才能かな~
なんで背中だって? もちろん、
そう言えば、前世の記憶にある巨大ヒーローたちは、胸に堂々とエネルギー切れ警告ランプがついてたっけ。敵にピンチをワザワザ教えるなんて、正義の味方ってフェアなんだな~と思ったものだ。でも、今なら判る。あれは要するに、仲間にも身体の状態を教えるという役割があったワケか~
工夫その2。
マヌーの話によると、ゴーレムの僕は魔石から魔力を吸収できたそうだ。それなら、魔力を持っているヒトから吸収できないものか、と考えた。そこで
さらに、モノは試しとばかり車掌バッグをマヌーの上に置いて(起きないんだなこれが)、バッグの中から魔力を吸ってみた。これも上手くいった。
習ってないからマヌー自身は魔法が使えないけど、もともとケットシー族は人種的に大量の魔力を持っている。猫っぽいのにヒト族でいられるのはそのせいだろう。だからマヌーに持ってもらった車掌カバンの中にいる限り、たぶん魔力切れの心配は無いと思う。
それにこの事実は、特職を選ぶ基準にもなりそうだ。たとえ護衛パワーが少なくても、魔力が多いヒトなら買う価値がある。いざという時は、その魔力を吸い取って僕自身がレア魔道具を使える見込みがあるからだ。
工夫その3。
とは言うものの、自分の身体だけで動きまわる場合には、別途に魔力を補給する仕組みが必要だ。僕が考えた方法は「リザーブタンク方式」だ。身体の適当な場所に魔石を固定し、必要に応じてそこから魔力を供給すればいい。取り回しとかデザインとか考えて作ってみた。
それにしても、僕ってアイテムの加工とか上手くなったよなあ。もともと金属磨きとか縫製とか細かい作業が得意だったけど、ゴーレム
小物に限るけど!
いまの僕の姿は、頭・前腕・胸・背中・脛がカクカクしてる。プロテクターを全身につけたように見えるのかな。腕なんかはまるで
いいね! いっそ、これをガ〇プラ・モードと呼ぼう!
もちろん、ガ〇プラのガ〇はガントレットのガ〇だ!
……我に返ると恥ずかしいので、できるだけ我に返らないようにしようと思う。
だけど、この「リザーブタンク方式」には問題がある。
起き出してきたマヌーのやつが、ネボけ顔のままであたしを指さしてゲラゲラ笑いやがった。
「なんにゃそのカッコ。腹ボコ妖精にゃ!」
顔が真っ赤になったのが自分でも判った。
あたしはマヌーをキッと睨みつけた。
てめー言っていいことと悪いことがあるぞ。とうぜん知らないで言ってるんだろうけど、前世でフィルタリングしてないデバイスでその言葉を画像検索したら、大変なことになるんだぞ!
まあ、とにかく、そんなこんなで、マヌーも工夫を納得してくれて……
僕たちは、特職商人アインガンさんのオフィスに到着、そのドアをノックしたのだった。
謎の金色の球体は、今も僕たちを見ているのだろうか、と頭の隅で考えながら。
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