神敵をやっつけろ!
ちくちく、ちくちく。
脳内スケジュールの予定通り、何日もかけて、仕事の合間に準備を整える。
ちくちく、ちくちく。
あいつらとの対決に備えて、こうして着ぐるみを縫っているのだ!
ちくちく、ちくちく……って、あれ?
どうしてこんな音が出てるんだ?
俺がいま持っているのは確かに、縫い針と普通の布(薄め)だが、サイズ的には
そろそろ完成する。でも何ていうか、着ぐるみのつもりで作ったものだけど、どう見てもペラッペラッの激安コスチュームだ。紐とか使ってるし。量販店の忘年会用コスよりもレベル低いよ~
これを、着る?
うわっ、誰よそんなお調子者。あ、俺か……
とは言うものの。
この出来では効果は疑問視。やっぱり他の要素でカバーしないといけないことに俺は気付いてしまった。
これはひとつ、あの
その日の仕事終わりに。
俺は一座の仲間のひとり、マヌーを呼び止めて話しかけた。
「何の用ニャ? ネズ公」
俺を見下ろすその顔は超巨大なライオンのように威圧的だが、普通のニンゲン族から見れは、立って歩くデカ猫だ。まあ、こいつと本気のケンカをすれば俺は簡単に潰されるだろうけど、その点については幼女のリーズが相手だって同じことだ。
俺にとっては、誰もが巨人だ。
「いやあ、偉大なるケットシー族、マヌー様にちょっとお願いがありましてですね」
「その言葉使いは止めてほしいニャ、ネズ公。気持ち悪い」
「日頃の感謝をこめて言ってみましたが……じゃあ、いつもの口調で」
お前への感謝の気持ちがあるのは本当だけどな。もしマヌーの野郎が俺のことを本気でネズミのたぐいと思っていたのなら、俺はもっとネズミっぽくなっていたはずだから。
このツンデレ猫め!
「俺って、前にネズミのせいでひどい目にあわされたろ。少しは仕返ししたいんだ。それにはネズミのことを知らなきゃいけない。マヌーだったら、そこらへんのヒトよりは、あいつらに詳しいだろ。よかったら教えてほしいんだ」
「ふにゅ……おいら様に目をつけるとは褒めてやるニャ。何だかお前、ネズ公のクセに最近ミョーに利口になってきたような気がするニャ。もちろん……」
こいつ、あいかわらずニャーニャー
「もちろん、カネは出す。それなりに。授業料としてだけど……それ以外にも、頼みたいことがあるんだ」
「ニャ!? ネズミ退治なら服が汚れるから手伝わないニャ」
いつも三つ揃いのスーツ着てるもんな、俺のショウに出るとき以外は。でも、それじゃない。
「俺の頼みは、演技指導だよ」
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ヤツだ! ヤツがいる!
ツーフェ町にある町教会。
そこを仕切るシスター、エレナは、廊下の隅にいる小さな黒い影に気付いた。それなりに歳を食ってはいるが美しい顔が、いきなり険しくなる。まるで冷酷な殺し屋のように。彼女に憧れる町の若者には、とても見せられない顔だ。
あれは、輝きに
シスターがそう確信すると、ネズミはなぜか急に動きがよくなって、すごい速さで走り始めた。エレナはネズミ除けのお香を決してケチらなかったが、時々こうしてヤツの姿を見かけることがある。ヤツらはお供えや、町民のたくわえを荒らす。聖究院の通達では毒の糞をまき疫病も広める悪魔だという。
決して許してはならない!
エレナは、腰に下げた棍棒を素早く外し振りかぶる。それは
バコーン!
棍棒はむなしく床に当たり、にっくきネズミは飛び上がってシスターの罰をかわした。完全に死角からの攻撃だったはずなのに。いつも思うが、あいつらはまるで探知魔法でも持っているかのように動くことができるのが不思議だ。
何と生意気な!
転がる棍棒を走りながら拾い、教会に勤める年上の女聖官たちが悲鳴をあげたり、腰を抜かしている情けない姿を横目に、彼女は逃げるネズミを勇ましく追いかけた。いつもは町民に慈愛を振りまくシスターは、黒衣を殺意にひるがえして、風のように走った。
ネズミは壁を走り、曲がり角を三角跳びし、やがて廊下のどんづまり、少し開いたドアの隙間から、コティングリーに貸している部屋の中に逃げ込んだ。エレナはヤツの反転に注意して、ゆっくり慎重にドアを開き、中に入ってすばやく閉める。
そして……
テーブルの上にいる、あの、リーズィヒとかいう名前のフェアリーと目が合った。
「あ……妖精さん、いまネズミを見かけなかった?」
「いえ、何も」
フェアリーは、可愛らしい声でそう答えた。小さな彼女は、なにやら小さな黒い包みの上に座っていた。その包みは、雑にたたんだ黒い布を太い紐で縛った物のように見えた。
ネズミの尻尾のような、太い紐で。
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あぶねーっ! ヤバかった、ヤバすぎた!
あやうく
でも、ショウは無事成功した!
なんというか、
ネズミの
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