〜第2話〜

静まる馬車の中に石造りの道を走る馬車の音がカラカラッ、と響く中『ルベリア学園』へと向かう道中、シャルロッテは外を眺めゲームのあらすじを思い浮かべる。


『らぶどき♡聖女とイケメン守護者たち』

代々クレイトス王家が収めるクレイトス王国。そこにはある噂が何百年も前から受け継がれてきた。


【地に眠りし暗黒竜、目覚めし時王国に2人の乙女が現れん──。】


2人の乙女……。それは竜巫女とも呼ばれる、所謂聖女のような存在。クレイトス王国には代々、竜巫女と呼ばれる少女達が生まれ、その力を持って暗黒竜が眠りから醒めぬように毎年祈りを捧げてきた。


竜巫女が何らかの原因で亡くなった場合…その力を受け継ぐ少女が必ず1人生まれてきた。そして竜巫女は賓客として扱われ、王家と婚約を結ぶことになっている。


そしてその竜巫女が悪役令嬢、シャルロッテ・アレキサンドル。

生まれた時から竜巫女の証である白百合の刻印が胸元に刻まれており、皇太子殿下との婚約も決まっていた。

然し、シャルロッテが15になり、『ルベリア学園』へ入学が決まった時、クレイトス王国の小さな村でもう1人の竜巫女が生まれる。彼女の名前はリュカ。『らぶどき』のヒロインであり、今後の学園生活においてシャルロッテの人生を大きく左右するであろう人物だ。


(……この世界が本当にゲームの世界なら、リュカが巫女の力に目覚めているはず…)


シャルロッテが口元に指を当て、眉間に皺を寄せて深く考え混んでいる姿に心配げに見つめる侍女のミナ。いつも傲慢な態度のシャルロッテが溜め息を付き、悩んでいる姿に思わず笑みが溢れてしまう。


「あら。どうかしたのミナ?」


「ふふっ。シャルロッテ様も緊張をなさるんだなぁ…と思いまして」


2人は小さな頃から家同士仲が良く、シャルロッテの天真爛漫な姿に憧れを抱いたミナは伯爵家の娘であるにも関わらず自らシャルロッテの侍女に名乗り出るほどシャルロッテの事を敬愛していた。


「ふふふ、いいえ。違うわよミナ。私はねこれから起こる事に胸を高鳴らせていたの。だって私はアレキサンドル公爵家令嬢、シャルロッテ・アレキサンドルなんですから。」


胸に手を当て自信に満ち溢れたその様は正に未来の妃に相応しい凛とした姿。その美しさにミナは ほぅ、と息を付き柔らかな笑みを浮かべる。

そんな和やかな雰囲気の中、馬車は進みあっという間に『ルベリア学園』へ到着したのであった。

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