第26話
嫌な予感がしてたまらない。本当に、冗談抜きでかなり、そして非常にマズいのでは?
「おいオタクー。綾と一緒にイチャイチャしながら、仲良くお勉強かー? 綾のこと狙い過ぎだろー、アンタ」
「イチャイチャしてないし、狙ってもいないんだけど……」
「恥ずかしがんなよー!」
茶化してくる蝶番さんに対応しながらも、僕は小鳥遊さんの勉強を見てあげる。蝶番さんは横目で金城さんをチラチラと確認していたけど、何かあるのだろうか。
金城さんが言いたげだった。
「綾も勉強してるなら、ウチもやるー!」
嘘だろ。マズいな、これは。予想していた通りになってしまった。面白半分でやっているのかもしれないけれど、こっちからすれば、言い方が悪いからあんまり表現したくないが、邪魔をしにきたように感じられる。当然、彼女らに直接いう気はない。多分殺される。
金城さんは僕に何も確認を取らずに、隣にやってくる。放課後の教室であるため、生徒は僕たち以外の姿はない。つまりここには四人がいるだけ。僕、小鳥遊さん、蝶番さんに金城さん。この四人がいて、あとはクラスの生徒の机と椅子がある。
勝手にその椅子を使用して、僕の隣に強引に座ってきた。
「ウチもやる……。いいよね、オタクっち!」
「え、いや、あの、僕は小鳥遊さんに……」
「い、い、よ、ね! マジで男女平等に接するべきだよ! ウチよりも綾を優先するとか、マジで男女平等にするべきだとは思わない? ウチはそう思う! それだと綾が特別扱いみたいになっちゃうじゃん! それはダメ!」
「ああ、はいはい……分かったよ……」
ものすごいスピードで話が進んでいくのだが、誰かこれの解説を頼みたい。僕じゃ対応できねえよ。
「つまり、僕は小鳥遊さんに加えて、金城さんにも教えないといけないのか……。マジかよ……」
「何か言ったかな、オタクっち?」
「いいえ何も……」
「そっか! それは良かった! 綾に独り占めされるなんて絶対にあっちゃいけないもんね!」
「……」
金城さんも同じく、僕を赤面させるためにやっているのだな。しかしそんなやり取りをしている中で、隣にいる小鳥遊さんは少し不満そうな顔つきだった。不満でありながら、加えてシュンと寂しそうな雰囲気である。
「小鳥遊さん?」
「……ふぇ?」
「どうしたの? 寂しそうな感じだけど、分からない問題でもあった?」
いやおかしいだろ。なんで寂しそうな感じなのに、その原因が問題になるんだよ。ほかにあるはずだろ。……と、言った直後に思ってしまった。
「う、うん……。ここの全部かなー……」
「あ、ああ、そうなんだ……」
合ってた。すごいな僕。
小鳥遊さんは勉強熱心で、テストに向けていい姿勢が見られて、僕としては早めにこの勉強会的なものが終わりそうだった。
****
勉強を教え始めてから、少し経つ。
今現在、僕の両隣には美少女ギャルが、それぞれ右と左に分かれて座っている。なんだかいつもと同じような光景になっているが、放課後の教室であるため、周りに人がいないというのが決定的な違いだ。
小鳥遊さんと金城さんの二人。彼女らが隣にいて、それを蝶番さんが保護者のように見ている。これもいつもの感じだな。ただし、少しいつもとは異なる点がある。もう先に結論を言うが、小鳥遊さんと金城さんはいつも通りである。なら他の人、ということになるため、蝶番さんが挙げられる。
蝶番さんのいつもと異なる点。少しだけ異なる点。違い。それは彼女が保護者のように僕たちを見ていないのだ。それに、二人の異常なちょっかいを静止することもない。さらには、ただ立っていることもないのだ。
彼女は座り、教科書とノートを開いていた。綺麗な腕で頬杖をつきながら、明らかに不満そうで、不機嫌そうな表情だった。
そしてその座っている場所にも注目したい。まず僕が彼女の顔を確認できる位置にいるということ。だが僕の両隣には、小鳥遊さんと金城さんが先着でいる。……ならどうなるか。
彼女は……蝶番さんは……。
「アンタ、アタシの顔見過ぎだろ。正面見るより、アタシが分かってないところに目を移せよー」
正面に座っていた。
彼女の顔を見ていたことに僕自身も動揺する。どうして人の顔ばかりを気にするのか、そこに動揺していたのだ。
「や、そんなことよりも……」
「そんなことよりも? どんなことよ?」
「なんで蝶番さんも参加しているのかな……? 二人を担当するのにも一苦労の上に、君も、となると……」
「アンタが二人を担当してるからでしょ。二人が勉強するなら、そしたら必然的にアタシが一人で帰ることになるじゃん? それは嫌」
「トホホ……」
「別にいいでしょ? だっていつも……ハッ!」
「え、何?」
何かに気づいた蝶番さん。僕も他の二人も、同時に彼女に注目する。
「「いつも……?」」
小鳥遊さんと金城さんは、『いつも』というフレーズが気になるのか、追求していく。
「い、いやいや! なんでもないよ! 気にしないでいいから!」
「うん?」
「う、うん……」
すぐに話題を教科書の問題に切り替えた。蝶番さんは何事もなかったかのようにペンを動かす。
「あっぶなぁー……。『いつも教えてくれてるじゃん』って言いかけたぁー……。二人に聞かれないように気をつけないと……。
分からない問題文でも復唱したのだろうか。よく聞こえなかった。
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ヤバい。色々と忙しかったのでストックがなくなった。またいっぱい書かないと……。
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