第12.5話 綾、帰宅後

 複数人によるデートを終えて、綾は自宅にゆっくりとした足取りで帰ってきた。


 大きな屋敷にはこれまた大きな門があり、そして大庭園が周りに広がっている。小さな池まで管理しているほどだ。その池の中には数匹の錦鯉がおり、綺麗な白と黒が分かれている服装の人が餌をあげている。


「ただいまー」

「おかえりなさいませ、お嬢様。今日はいつにも増してご機嫌ですね」

「うー! うーん! んー! ご機嫌ねぇー、半分斜めで半分最高かなー」

「斜め、ですか? 何か気に触るようなことでもあったのですか?」

「あったけど、まあ別にそこまで怒るほどのことでもないかなー。ちょっと悩んだりとか考えたりしないといけないことではあるけどね……。それでも半分だけなら気分は最高だよー」

「それはよかったです。ところで、本日はどのようなことをしてお帰りになられたのですか?」

「デート!」


 綺麗で可愛らしい服装の女性は、突然の綾から繰り出された発言に驚いた。驚きのあまり『はぁっ!?』という声が上がってしまう。


「で、でででで、デートですか!? なんと! お嬢様はそんなところまで大人の階段を登っているなんて!」

「大人の階段なのかなー。でも男女が二人組でするお決まりのああいう感じではないよー」

「……? では、どのような形でですか? まさか複数人でですか?」

「そうだよー?」

「なぜそのようなことになったのですか?」

「分からないからー。初めてだったからー。ボク、こう見えて恋愛経験ないからさー、本当にノープランだったしー、内心心臓止まりかけてたんだよー」

「なぜそのような状態で……。もっと計画的にですね……」

「計画立てたって、どうせボクはオタクくんと二人きりになったら頭の中で整理できなくなるし、思い出せるわけがないしー。実際ボク鬼チョロいしー」

「回数を増やせば自然とできるようになりますよ。それよりも……『オタクくん』ですか……」


 何かを考えるように、その女性は口元に手を当てた。


「オタクくん……。最近になってお嬢様がよく口にしている、メガネ少年ですか……」

「そうそうー! あの少年だよー!」

「その『オタクくん』という名称は、愛称なのですよね? まさか蔑称じゃ……」

「愛称に決まってるじゃーん!」

「で、ですよね……。ならいいのですが……」


 何かにホッとした女性。この女性の服装は、あまり街を歩いている女性たちが着るようなものではない。かなり特殊な例だ。埃ひとつないメイド服は、どこにも皺など見当たらない。


「どうしてそんなことを聞いてくるのー?」

「いえ、ただ、人は敏感な生き物ですので……。言葉には出さなくても、傷ついている可能性もありますので……。一度本人に確認を取ってみてはよろしいのでは……?」

白川しらかわはまじめだねー。そういう話をされると、なんか彼のことが心配になってきたじゃーん!」

「それは申し訳ございません」

「しょうがないから明日に聞くよー!」


 両手を清潔にしてから、綾はすぐに大きなソファが置いてある第一リビングに戻ってくる。そしてゆっくりと腰を下ろして、上を向いたのだった。


「はぁ〜〜〜!!! オタクくんと恋人繋ぎしちゃったぁー! それに本物の恋人みたいな距離でデートもしちゃったしー! ボク、嬉しすぎて爆発しちゃいそうだったよぉー!」


 周りにメイドや執事がいるのを、ここの周りは天井と壁がかなり広く設計されており、ものすごく響いてしまうことを、綾は忘れているのだろうか。


「またデートできたらいいなぁー……。今度は二人っきりでね……!」


 綾は期待しているのであった。



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 三人称視点が下手くそですみません。もっと練習、そして勉強しなくては……。

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