再び、胸アツ(当社比)の現実
部屋に戻ったら秘密の本棚が整理整頓されていた如き絶望感よ君に届け
オンボロワークチェアに座っていた司令がスッとスマホ画面から視線を外し顔を上げた。待ってましたと反射的に司令の方に振り替える。
俺の過去をより詳しく説明するために、口頭での説明を
青沼さんはグーグー寝てて、桃井さんは再び
俺は特にする事も無く、それならばボーっとしていたかったんだけど…モモの
「なるほど…」
瞳を閉じ何を
「レッド」
司令の瞳が開かれ、俺を映す。
「は、はい」
「君は何と言うか…ポエミィだな」
「コロ…シテ……コロシ…テ…」
一部の思春期少年が
いやそりゃあ自分で見せたんだけどさ!
「ふむ…君の御友人だが、状況から察するに恐らく偶然にも " 力 " に目覚めてしまったのだと推測できる」
「! やっぱり…そう思いますか」
『練習したい』と言っていた理由やあの子が消えたと同時に無かった事になっていたボヤ騒ぎ。イタズラで火遊びをした可能性も無くは無いけれど人に迷惑がかかるような遊びは絶対にしない子だったし、だったら…ってうっすら予想してはいた。
「君にとっては辛く不快な話になってしまうかもしれないが」
先程俺が見せてしまった荒れた姿を
「消えてしまった者達に高確率で共通している事の一つに、 " 力 " の発現がある」
「…えっ…?」
司令は帽子の角度を調整し直すと続けた。
「勿論、全員がそうであったかは近い者の記憶からの推測でしかないので
力に目覚めた者が
「それは、つまり…」
「そう。その
全身が泡立つ。
俺も、あの子と同じように?
「安心しろ。君はもう
「…もし俺がここに来なかったら…?」
「勿論日常を選択した者もいるが、一度でも我々に接触した能力者が世界から消えたという記録は無い。本人には申し訳ないが、一応発現してしまった能力が社会に混乱をきたさないか
「そう…なんですか…」
もし俺がここに来る事を選ばなかったらそうなっていたのか。
確かに気持ちのいい話じゃないよな。風呂とかお湯沸かすってだけの力で監視されるとか。公園の噴水でも
「話を戻すが、御友人の能力は推測するに【火】に関連するものであると思われる。建物を
ふと、あの子の日常の姿を思い出した。
確かに、建物を落雷でうっかり吹っ飛ばすか光線でうっかり溶かしそうな気がする。うっかりと。
「本部の研究所の報告によると、怪人の持つ能力は消失前に発現した力をそのまま引き継いでいる可能性が高いそうだ。それは同時に、青沼君、桃井君、そして君にとっての
そうか、それがつまり───。
「消えてしまった " 誰かにとっての大切な人 " に会えた例があった、って事ですよね? 例え怪人の姿であっても」
「その通りだ」
さっき俺はその事実に絶望した。
けれど確かにそれこそが希望でもあった。そう気付かされた。
消えたまま二度と会えないワケじゃない。どんな姿にされたとしても、少なくとも生きているんだ。死んでしまえばそれこそ二度と会う事なんて出来ない。
「フッ…」
司令はそれに気付いた俺を見てどこか満足げに
「モモ」
『はぁ~い御指名ですかぁ~❤』
空気を無視した音声でポンコツAIが返事をした。
まだ続いてたのオカマBARのノリ。
「組織が過去に
『え~~~? それお高いわよぉ??』
ちょっと何言ってるか分からない。
「フッ…ではいずれ知るであろうレッドの秘密でどうだ?」
『うおっしゃあああぁぁぁぁぁゲットだおぅルあぁぁぁぁァァァァ!!!』
「なんでやねん!!!!」
勝手に秘密を売られる予定にされた俺のツッコミは綺麗に無視された。
モモの映っている画面の余白?にいくつも表示されるウィンドウ。そして次々表示されていく【番号+アルファベットの組み合わせ】で名付けられたファイル。
え…怪人ってこんなにいるの…?
『ちょっと画面内に表示しきれないけどどうする?』
「構わん。その中から火に関する能力を持った怪人のデータだけ表示してくれ」
『りょ~かい❤ …ふンぬヴァッ!!』
「ヒッ」
モモの筋肉が一瞬盛り上がった。
えっ、なに、検索ってそうやるわけ? やだこわい。
『こんなん出ました~❤ あら、少ないわね?』
「…二件?」
『一つは " 逃走 " 、もう一つは " 凍結処理 " されてるわね』
凍結という単語に喉が鳴った。先程聞かされた空間凍結の意味───。
しかし司令は淡々と指示を出す。
そうか…きっと司令は何度もそれを目の当りにしてきたから…。
「戦闘記録ドローンによる映像はあるか?」
『どっちもバッチリあるわよぉ★』
「そうか…」
司令は腰かけた椅子をこちらにくるっと体ごと向け、俺を真っ直ぐに
「レッド。聞いての通り、君の御友人がもし怪人として現れていた場合、このいずれかにその姿が映されている。どうする? もしアレなら
「見ましょう」
「…!」
俺はブラウン管テレビ画面の真正面にドカッと爪先を立てて正座した。
この怪人の対処の結果は " 逃走 " に " 凍結 " …。凍結の解凍方法はまだ分からないけれど、少なくともどちらも
希望が残されているなら絶望するのは後でもいい。
「よし。モモ、映してくれ」
『りょ~かい♪』
俺、信じてみるよ。
君がまだきっと生きてるって。
(本編次話【RPGで敵がパンツマンだった時の勇者はどれだけ複雑な心境だったのだろう】へ続くッ!!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます