出遭って3分で人生相談? モモの部屋にカモンボーイ❤

     







 マイクを握りしめる手の内側にじっとりと汗をかいているのが分かる。けれどここで立ち止まっていたら何も進まない。

 俺は再び深呼吸し、そして一気に畳み掛けたッ!!


「…ぁ…、ぇと…、…初めまして、赤城っていいます……」


【畳み掛けたッ!!】って嘘ですごめんなさい。


「文字は、赤い城って漢字でs」

『赤い白って紅白じゃなーーーーい!? やっだーーオメデターーーー♥♥』

「なんでやねん!!」


 またそのネタかよ!

(↑【人類はその日、カタカナ4文字で殺られる事を知った】参照)


「青沼さんと同じ事言わないで下さい!」

『うォげっ!?』


 うォげっ、って。


迂闊うかつ…。我が人生で最大最悪のヤラカシだわ…死にたい…』

「どんだけだよお前!? そもそも人じゃねぇし人生今始まったばっかだろうが!」


 青沼さんが先程の屈辱くつじょくをここぞとばかりに叩き返す。子供か。


『小せぇ事言ってんじゃねえよ御玉弱子おタマじゃくしが! タマタマだけじゃなくて人間も小せぇのかオラ!?』

「ふんぐぐぎぎ…!!」


 なにその梅干しが梅干しんだような顔。挿絵にしてもらえないかしら。(イラスト版だと有りマス)


『さ・て★ クソ雑魚ザコナメクジな邪魔が入ったけれど無かった事にして続きをどうぞボーイ♥』


 ホント容赦無いな。


「ぇ…と、あの、その、とても言いにくいんですけど…」

『あらぁん? ナニゴト? もしかして恋❤の悩み? もしや性♥の悩み? バッチコイや!!』


 いつからオカマの人相談コーナーになったんだろう。


「実は…俺、あ…、あと何か月かで20代なんですが…」

「おい聞いたか!? 20代! こいつだってもうすぐ20代だってよ! どうだ、グゥとでも言ってみやがれ!!」


 ホントうるさいなもう。

 しかし覚悟していた罵声ばせいは無く、モモは何か感慨かんがい深げなため息と共に呟く。


『オーゥ…。少年が じ っ く り た っ ぷ り 時間をかけて、ココロもカラダもれたオトナへと変化していく…。タ マ ん な い わ ね … !!』


 モモはねっとりと舌なめずりした。ヒィ!


「なんでじゃああぁぁぁぁぁぁ!!!! 差別じゃああぁぁぁぁぁ!!!!」


 傷心のKY太郎は再びとっ散らかった布団の中に消えていった。


『うるさいのがやっといなくなったわね。…で? おいしそうなレッドチェリーボーイ🍒❤』


 チェリーって挟まないで下さい。

 いや…その…ねえ…? モゴモゴ。


『アタシに聞きたいことがあるから呼んだんでしょぅ? 緊張をほぐす為の軽いジャブトークはここまでにして、と…♥』


 ヘヴィなジャブだった。


「その、あの…、俺の " 力 " についてと、この組織がいったい何なのか…」

『あら…恋❤とか夜🌙の悩みじゃ無いのね…オネェさん悲しいワ』


 ガチだったのかよ人相談コーナー。


『でもま、悩めるボーイとちゃんき合うのもオネェさんの務めだものねぇ♥』


 絶対今また真字マジ入ってましたよね。(前話参照)


『 " 力 " については…そうねぇ…。恐らく司令からどうやって能力に目覚めたアナタを見つけたかの説明はあったと思うからそこは端折はしょるわね』


 すいません、その話、青沼さんのばーちゃんのせいで全く聞いてません。

(↑【どハイテクとどアナログがお手手つないで俺の脳を殺しに来るんですが】参照)


『 " 力 " その物に関してはあまり深く考えないでいいと思うワ。それが何なのか・何故なのかの小難しい話を解析するのは本部の研究者達が勝手にやってるし、アナタは人類がむか~しから想像して追い求めてきた魔法や超能力が「なんかいきなり手に入っちゃった!」ってくらいの感覚でもらっておけばいいのヨ♥』

「そんな簡単な…」

『あらん? じゃあ「復活する魔王を倒すために目覚めた力です」って言われたらハイそうですかって信じられるのぉ?』


 モモは演技がかった口調で問い掛ける。


「いや…確かにそれは…」

『でしょう? アナタにとって大切なのは、力を手に入れてしまったという事実。そしてその使い方。その上でこの組織が何の為に存在し、何と戦っているのかを知る事。最終的にアナタがどう判断して生きていくのか…まあそれは追々考えてもらう事になるかしら?』


 なんて事は無い。───と言われた気がした。

 とても大切な事だと自分ではずっと思い続けていたのに、改めて他人に言葉にしてもらうと本当になんて事は無いのかもしれない、って思えてしまう。

 我ながら情けないような、そんな不思議な感じだけどさ。


「あの、何回か聞きましたけど、戦うって…?」


 これ程までに日常的に目にしながら、これ程までに非現実的な響きがずっと頭に引っかかっていた。


『アナタ、特撮トクサツは見たことある?』

「えっ? トクサツって、あの、変身ヒーローとかの特撮ですか?」

『そうそれ』


 予想外の単語に一瞬戸惑う。


『さっきの魔王の話じゃないけど、驚かないでね?』


 モモは人差し指を口元にあてがい、どんな意図が潜んでいるのか分からない上目遣うわめづかいで俺を射貫いぬいた。


『この世界には、普通の人には絶対に分からない側面で… " 怪人 " が、確かに存在してるの』






 これまた聞き慣れた、しかし非現実的な4文字を俺は理解するのにかなり時間を要した。


「か…か、いじ、ん…!?」







 耳鳴りが、遠雷えんらいのように鳴り響く。

 この愛すべきくだらない日常が、悲鳴をあげるかのようにきしんだ気がした。









 例えばさ、『変身願望』って言葉があるじゃん?


 小さい頃なんかだと変身ヒーローとか、大人なんかは今の自分を変えたい、とか。まあ色々さ。けどそれはやっぱり願望であって、願ってはいるけど頭のどっかでは「無理ではあるけど」みたいな一文がくっついてると思うんだよね。


 でもそれって普通の事で、現実に対してそういった空想があって、そんでもって今とバランスを取ってるって言うやつ? まあ早い話が、俺はこの日常が嫌いじゃないんだよね。別に変わって欲しいとかは望んでなかった。


 けれど。


 空想出来る事は起こり得る未来の可能性…ってヤツが、ラッパを鳴らして登場しちゃったら?


 その時、俺達に選べる選択肢って…そうあるのかな。









(本編次話【説明キャラが出てくると大抵物語は加速する。ましてやオカマじゃもう遅い】に続くッ!!)


(その前に、長い番外編が入ります)




       

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