キケンなアノコとイケナイアブナイランデヴー♥神様お願い帰りたい

         








「で…」

『で?』

「出たあああああああああ!!!!」

『やっだー初対面なのに♥ 「出た」なんていきなりそんな大胆♥ ウコたっぷり?』


 なんでやねん。

 たい焼きみたいに言わないで下さい。味の想像しちゃったでしょ。ヴォエ!


「あ、あ、あ、あなたは一体、何なんですか!?」


 思わず敬語になってしまった。初見しょけんで敬語が飛び出したって事は多分これしばらく抜け出せないだろうな、と直感した。


『あらやだ、アタシの事はからすでに聞いてるモンだと思ってたワ』


 オカマだという情報は1μmも聞いてないです。


『そうねぇ…折角の出逢いだし、これからふっっかなっっがぶっっと御突おっっつき合いになるんだし、自己紹介から丁寧ていねいで濃厚な関係を築くのも悪くないかもしれないわねぇ』


 今明らかに漢字違う単語あったよね?

 誤字ゴジじゃなくて真字マジで。


「え、あ、じゃあ、自己紹介お願いしま」

「馬鹿野郎!!!」

「!?」


 突然青沼さんが怒鳴る。

 あれ、何かマズかったのか?


「相手を知る為にはまず自分を知ってもらうのが大事であり、人としての最低限の礼儀だろうが!」

「あっ…! た、確かにそうですよね…」


 なんでいきなり人間キャラ属性ブッ込んで来たんだろう。


「それが例えオカマでもな!」


 声に出すなや!!

 すると沈黙を守っていた司令が俺のマイクをスッと抜き取り話しかけた。


「お初にお目にかかる、AI殿。私はこの支部の司令官…『ハァァァァァァァァァックショイオラァァァッッ!!!!!』と言う者だ」


 なんでAIがおっさんみたいな野太いくしゃみするんですか!!!

 司令の名前聞きそびれたじゃないか! 昭和コントドリフかよ!


「以後宜しく頼む」

『失礼♥(ズビィィィ) ハァイ、司令。貴女アナタの事は桃井からのデータでよく知ってるわ、とても有能な上司みたいね。まあそう言うの、あの子は恥ずかしがって絶対口には出さないでしょうけど♪』

「フフッ、お褒めに預かり恐悦至極きょうえつしごく


 司令はそう言うと画面に向かってうやうやしく一礼する。

 凄いなこの人、AIという疑似ぎじの存在に対しても司令官という立場として堂々と、けれど敬意を持って接している。これが秘密組織の一翼いちよくおさという大役たいやくになう人間の矜持プライドという奴なのか。


『それと、【AI殿】なんて味気あじけ無い呼び方はやめて頂戴ちょうだい。気軽にフランクにフレンドリーにラブリーに【モモ】って呼んで♥』


 ラブリーって他のと意味合い違うよね。


「了解、モモ」


 司令がマイクを再び俺に渡す。

 心臓が一瞬ね上がった。次は、俺───


「ちょっと待ったァ!! 序列じょれつ的に次は俺だろ!」


 青沼さんがマイクをひったくった。序列とか気にしてたのかこの人。

 てかこの人数で序列とかあるのか? 司令は別として…多分、桃井さんの方が上というか絶対青沼さんの下ってポジションを認めないと思う。


「あーあー、マイクテスッ(←鉄板)。 初めましてモモ、俺は」

『うるせえ黙れ20代』

「理不尽!!!?」


 めっちゃドスの利いたボイスで一蹴いっしゅうされた。

 ホント期待を裏切らない人だな。


「なんで20代がダメなんだよ! 差別だろ!!」

『カーーーーーーー! ペッ!!!』


 うわ絶対こいつ桃井さんの分身だ間違いないタンMk-Ⅱマークツーだ。画面外にどうせ痰壺たんつぼとかあるんだきっと。


『チェンジ』


 モモは親指と人差し指でUの字を作ると地面と水平にくるっと回した。


「ひどい!! 20代がダメなら司令はどうなんだよ!?」

『…』「…」


 司令とモモが見つめ合う。背景に稲妻ベタフラが走った気がした。


『いいのよ歳なんて。同じ女として』

「フッ…そういう事だ」


 目と目で通じ合ったようだ。


「異議あり!!」

『異議は棄却ききゃくするわ。さっさとプリティボーイと変わりなさい、下郎げろう。女は忙しいのよ』

「お前オカマだろうが!!」


 あ、それは…


『タマタマ付いてる癖に小せぇ事言ってんじゃねえぞ小僧!! それともアレか? 付いてるモノも小せぇってのかオラァ!? いっちょんだろか!? モミモミしたろか!? ア゙ァ゙!??』

「ぬぐぅッ…!!!」


 メンタルに重傷を負った青沼さんが貞子みたいに項垂うなだれながら俺にマイクを渡す。ジェンダー批判は現代じゃ地雷だと言う事を知らないんだな。南無。


『心が女と叫んでいるならば体がどうであれ女は最強なのよ』


 何言ってるか分かりません。


『…さて…カモンプリティボーイ♥』


 どうして、ぼくは、こんなところでオカマにゆうわくされかかってるんだろう。

 脳が一瞬げた。しっかりしろ俺!!










 (次話【出遭って3分で人生相談? モモの部屋にカモンボーイ❤】に続くッ!)





       

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