妖怪と宇宙人に囲まれて助けを求めたら人外魔境まで現れた件
「
布団ミルクレープの外側から司令のくぐもった声が聞こえる。
ん? 何だったっけ…? 何かを必死に
「思い出した!!」
俺は上に
「ちょ…おわっ! 重ッ、これめっちゃ重ッ! あと湿気くせぇ!!」
跳ね飛んだ布団がそのまま山になって青沼さんを埋めた。
そんな物体を人に
《いきなりそんな動くと筋肉つっぱるぞー……》
布団山が喋っているけど気にしない。
確かに全身つっぱって痛いけどとりあえずそんなの後回しだ。
「DVD! 桃井さんから渡されたDVDを見ようとして確か俺…」
「途中で放置してぶっ倒れちゃったから私がコード繋いどいてあげたから。感謝しなさい」
桃井さんが腕組んでドヤった。そんな
いや、そりゃ確かに自分には配線出来なかったけどさ。ちくしょう。
「ふふ…、ここまで
先程までの穏やかさが一転し、
背筋を冷気なのか電気なのか分からないビリっとした緊張が走り、
「覚悟は、出来ているかね」
「───はい」
「よろしい」
司令は満足そうに
「お、いよいよか! 俺も見るからちょっと待ってくれよ」
布団山からもそもそと
「あ、じゃあ私は見る必要ないからあっち戻りまーす。
「え??」
なんか引っかかる。なんだろか?
「だってその内容、私が知っている事の丸写しみたいなもんだし、見て得られる物が無いなら見る必要無いでしょ? それに私が戻らないと仲間が全滅するかもしれないしね。じゃ、そゆ事で!」
言いたい事を一気に叩きつけると桃井さんは再び暗い
あの人
まあそんな
「じゃあ電源入れますよ」
俺は指先が震えているかのような錯覚を覚えつつ、押し慣れているはずの現代機器の電源ボタンにまるでミサイルの発射ボタンでも押すかのような心境で指を伸ばし───
「ちょっと布団畳み終わるまで待ってくれよ!」
ホントKYだなあんた!
「あとで手伝うから先に見ましょうよ! はいスイッチオン!」
「ぅをぃ!!」
青沼さんの雑な扱いは
古臭い球面ブラウン管にDVDプレーヤーの電源を入れた瞬間の一瞬のノイズが走り、数秒のブラックアウトの後、白い文字で画面に英単語と数字の羅列が狂ったような速度で表示されては次々と画面の上に向かって押し出されていく。
昔のPCの立ち上げ画面の様だった。
「なんか随分とアナログだな…」
青沼さんが
しかしその不安を
「…なんだろうこの背景…? 飲み屋…バーか…?」
意味わからん。これが桃井さんの頭の中の丸写しなんだろうか。酔っ払いかよ。いや酔っ払いだな。うん。
「なんでいきなりディスったん…?」
「え…? はぃ…??」
…??
青沼さんが俺を見て悲しそうな目。
「いや…いいさ…」
どゆこと???
ディスったって、俺は画面見て「バーか?」って言っただけ…
バーか? …BaーKa? …バーカ……
「あっ」
「どうした?」
「分かり
「??」
なんでそこで不思議そうな顔するんですかこのKY太郎は。宇宙人かよ。いや宇宙人だな。うん。
「しっかし、画像
うるさいなもう。
いい加減文句言おうとした矢先…
『システムオールグリーン、情報伝達プログラム起動。疑似人格AI【モモ】をアーカイブ管理者として固定。アンサー・スタンバイ』
やけに前時代的なメカメカした音声が無機質に情報を読み上げた。
そして画面中央に人の上半身のようなシルエットが浮かぶ。ぶっちゃけるとバーの背景のせいで店のマスターのようにしか見えない。
…イカン! 思考がまたしても逸れてきたぞ、こいつぁ良くない
「レッド、もしかしてそのマイクでもう話せるんじゃね?」
青沼さんは俺がいつの間にか握りしめてた対話用カラオケマイクを指差した。
「えっ? あ、そうか、これで話すんでしたね。えーっと…、あー…、あれ…なんだっけ…何聞こうとして…」
慌てて質問すべきことを考える。でも浮かんだ言葉はまとまらずに
当然と言えば当然で、質問とは本来 " 得たい回答に導くための疑問 " であり、それが明確に己の中に確立しているからこそ初めて " 質問 " という形状を取れる。
何が疑問であるかがそもそも自分の中に形作られていなければそれは質問にはなり得ない。疑問が無いのに質問が出来る訳が無いのだ。
…ああくっそ、またこんな所で
覚悟を決めた筈なのに、何よりも煮え切らない自分自身に腹が立った。焦りとイライラでとにかく叫びたくなり、もういいやとりあえず一発叫んでしまおうと大きく息を吸い込んだ瞬間───
『オゥラァ!!! ちょっとアンタ…
「ブフーーーー!!!?」
(本編次話【キケンなアノコとイケナイアブナイランデヴー♥神様お願い帰りたい】に続くッ!!)
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