妄想だと言えば何でも許されると思っている世界の中心で哀を叫ぶ

           




 

(この辺りに登場する主要CAST)


赤城 (♂)… 心にむ最強の相棒マサカズや無口で無表情のR、いつでも崩落してくれる床などの【強力な人外達】ばかりがパーティーに増えつつある青年。現代の桃太郎にでもなるつもりか。強力な仲間について忘れた場合はここまでの物語を復習してたもれ。


司令 (♀)… 外貨と話術で巧みに隊員を操るちょっと良くない上司。尊厳そんげんは薄い。前回、衝撃の負傷の事実を明かし一波乱を呼んだ。詳しくは前話までを読み返してたもれ。今回は成年男子諸君が…いや、読めば分かる…大丈夫か今回…。


青沼 (♂)… いかにも脳筋な感じで現れたハズが、もしかしたら違うんじゃないか?みたいなブレッブレのキャラ像になりつつある兄貴。それが伏線なのか素なのかは作者も分かっていない考えていない


桃井 (♀)… 情報収集担当にしてこの拠点のブレイン的メガネっ娘。ギャルゲーならプレイヤーに確実に最後の攻略対象にされる事い。重度の異世界ダイバー兵士()でもある。タンペの狙いは外さないシューター。






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「まあそう気を落とさずにとりあえずソレDVD見ようぜ」


 …! そうだった、もうすでに忘れかけていたコレの存在をッ!

 俺はもう誰に断る事も無く、部屋のすみにちんまりとえられた球面ブラウン管テレビの向きを裏側が見える角度に勝手にひねった。


「重ッ!? なにこのテレビ、こんな小さいクセに……あれ、無い…HDMIの差し込み口…横にも…無いな? どうやってつなげば…ブツブツ…」


 そもそもこんな古いテレビ、実物見たのだって初めてなんだし今の仕様がそのまま通用するわけ無いよね。


「やってやろうかー?」


 青沼さんが助け舟を出してくれたが、


「いいです! 自分で何とかします!」


 俺は自分でもよく分からない意地を張ってしまった。あれ、俺またやっちゃいました…?


「この赤白黄の3色の端子は今も付いてるから…【入力1】【入力2】? あれ、どっちだこれ…DVDプレーヤーの方は…【IN】と【OUT】…???」


 いやいやいくら何でも説明端折はしょり過ぎじゃない!? 何よこの暗号…昔の人達ってこれで理解出来てたわけ?

 今は【アンテナから】とか【~へ】とかって書いてあるもんな。製造側が親切になったって事か、もしくは理解できない人が増えたって事なのか…願わくば後者であってほしい。


「全く、配線くらいでな~に意地張ってんだか…」


 後頭部側から聞こえる青沼さんの声は『呆れた…』よりも『俺にもあったなそんなナイフみたいにトガってた時代が…』みたいな理解を示すものの様に感じられた。なんかムカつく。

 俺が若さゆえの奮闘ふんとうをしていると、二度と登場しないだろうと作者も思っていた(メタァ)桃井さんが暗黒の部屋からニュッと顔を出す。


「司令、いい物あったからこれあげます」


 手にはなんか小さい箱。デザインからして市販の医薬品か?


「む、これは…?」


 司令も知らないのか。


「口内炎の薬。シール状になってて患部にふたするみたいに貼り付けるタイプのヤツです。初めてだとちょっと貼るのに苦戦しますけど、うまく貼れると刺激から守ってくれて結構いいですよ」


 へえ、世の中にはそんな物もあるのか…。


「なん………だと……!!?」


 司令が過去最大の目の開きを見せた。

 そんなにつらかったんですか口内炎。どんな勢いでんだんだよ。


「まあ、口内炎がつらいのは分かるんで…たまたまですよ? たまたま前に買ったそれが残ってたの思い出したんで…別に…たまたま…」


 若い娘がツンデレ顔でタマタマって連呼しないで下さい。


「ピンク…、若い娘がタマタマ連呼すんなよ」


 言うなや!!!


「うっさいハゲ!ね!」

「あと10年はハゲないし死なん!!」


 え、10年で人生と髪の毛に見切りつけるのって早くない??


「桃井君…すまん、感謝する。お礼と言っては何だが…あと2万追加しよう」

「2万!? ウヘ、ウヘ…ヘヘヘヘ…ウヒョヒョヒョ…(っ¥ヮ¥c)ウゥッヒョオアアァアアアァ…」


 桃井さんは両の瞳に¥を輝かせながら、気持ち悪い笑顔でヨダレ垂らしながら暗い部屋の中に引っ込んでいった。

 …完全に女を捨ててるなあの人。200円未満の為に。(前話参照)


「…青沼君」

「はいはい、いってらっしゃい貼ってらっしゃい」


 司令はそう言い残すと目をギラつかせて六畳間から洗面所?の方へ出ていった。

 やり取り的には見方によってはなんかカッコいいハズなんだけど、口内炎が全てを台無しにしていた。

 いや今はそんな些末さまつな事よりも配線だ。


「ええと、確か…映像を映す媒体ばいたいに最終的に映像の電気信号を流せばいいんだったっけ…。て事は、テレビには【入力】しかないからつまりこれがゴールで、【OUT】がスタート…か??」


 ヤバい、こんがらがってきた。

 青沼さんに素直に頼まなかった事を俺は早くも後悔した。意地張った手前頑張るけどさ。


『あっ…』

「!?」


 その時、洗面所の方から司令の思わず耳をそばだてた。

 や、だって、その、………ねぇ?


『ん…こんな風になってるのか…。思ったより…大きい…はふ…、んん…っ』


 … … … … … … … … … ナニガオオキイノデショウ?


「おーいレッド、どうした? 降参か?」

「ハッ!? い、いいえ、自分はもう高校は卒業しておりますので高三降参ではありません!!!」

「何言ってんだお前…」


 ハアアアアァァァァァ!!?? ちょ、ま、落ち着け自分!!!

 薬! 大きいって薬の事だからきっと!! それからあの司令だからね俺!!! 変な想像しないで深呼吸して現実を見よう、サン・ハイ!!!!


『んぐ…、ゲホッ…! ハァ、ハァ…嘘、これを…奥まで…? そんな…初めてなのに…』

「ファアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


 おわあああああどっからこんな声出てるんだ俺ええええぇぇぇぇぇぇ!!!???


「お、おい、マジで大丈夫か? ヤバい電波でも拾ったのか?」


 電波ならどれほど良かったでしょう。


「だだだだだだだだだだいじょうぶぶぶぶですすすすすプピ」


 滑舌かつぜつがちっともだいじょばなかった。


『…ガハッ…! や…痛っ…んぐっ…ゴホッ! …ハァッ…ハァッ…! もうやだっ…痛いぃ…どうして…ひどい…』

「口内炎! 口内炎!! 患部かんぶが奥だから苦戦してるんです! 偉い人にはそれが分からんのです!!」


 俺にも分からなかった。

 そうだ、こんな時はおまじないだ!!


「滅却! 滅却! 心・頭・滅・却!!」


 俺は頭の中でリズミカルかつ必死に鎮魂ちんこん文言もんごんを叫び、体はベランダで布団を叩くかのような動作をしていた。これではまるで音楽を鳴らしながら退去引越をお隣さんに迫っているみたいじゃないか。(嫌な…事件だったね…あれ、もしかして分からない世代…?/作者)


「おまっ、ちょっ…落ち着けぇぇぇぇ!!!」


 青沼さんが両手で俺の頭をボールのようにはさみ込んだかと思ったら…


「ひゃああああああ冷たいいいいいいいい!!!???」


 板氷いたごおりで顔全体を包まれたかのような強烈な冷気に俺の意識が一気に覚める。

 冷静さを取り戻したのを確認すると、青沼さんは両手を俺の顔から離してススっと距離を取ってそ知らぬ顔。

 俺は思わず自分の顔を撫でまわして確認する。青沼さんの手が触れていた辺りを中心として冷たい。でも濡れてはいない。


「あ、青沼さん…、今の…もしかして…」

「…極度の末端冷まったんひしょうなんだ」

「嘘つけぇぇぇぇぇ!!!」


 冷えすぎだろ! 死体か!! 触ったことないけど!


「どうした、大騒ぎして」


 司令がいつの間にか戻ってきていた。

 少し荒い息で、汗ばんで紅潮こうちょうしたほおで、まるで事goあばばばばばばばばば


「ダマサレナイヨッ!!」

「何がだよ」


 まさかの青沼さんからツッコミが入った。


「ふふ…初めての事だから緊張の糸が切れたのだろう、当然の事だ」


 司令はゆっくりと俺の方に歩み寄り、妙に火照ほてった感じのする手のひらを俺の頭にスッと乗せる。

 あ…あああ…あばば…


?」


 少しだけ熱を帯びてうるんだ瞳が、かすかな笑みをたたえ俺をのぞき込んだ。


「きゅぼっ」


 人間って、オーバーヒートするとマジでこんな音が出るんだな。

 そんな他人事みたいな考察を浮かべつつ、俺の意識はそこで途切れた。









(本編次話【伏線と気付かれないと寂しいから、神はやたら点を打つ】に続くッ!)


 


         

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