死にたいマイレージとかあったら今日だけで貯まる。2回分は

     



(この辺りに登場する主要CAST)


赤城 (♂)… 普通に毎日を過ごしていた無気力少子化世代の青年。ある日自分が異能力者だと知ってしまう。詳しくは第1話を読んで復習して。


青沼 (♂)… チャリに乗って現れた、体育会系&人の話を聞かない系アニキ。ここで詳しく述べるとネタバレになりかねないから本文を読んで察して。






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 バイト先での嘘みたいな出来事からはや数日、色々と考えた末に俺はあの変な艦長から渡された紙に書かれた場所に行く事を決意した。

 あれから何度か、あの出来事自体が夢だったんじゃないかと思いたくて同じように記憶を頼りに " 力 " を試した。

 …嬉しいのか悲しいのか、どんな量の水であっても沸騰ふっとうさせる事が出来た。温度調節を意識すれば風呂も最高の気分になれる温度でかせた。ガス代が節約できるのは嬉しかった。そんな風に思っちゃう、小市民で───


 ───意外と順応性のある自分が嫌だった。




 後日、某所。

 なんて事は無い、日本のどの地域でも頑張らずに見つけられるような何の変哲へんてつもない閑静かんせいな住宅街。

 その只中ただなかに、これまた何の変哲もない(ハズだった)俺がひとり、ぽつねんと立っている。

 もう一度メモの住所とスマホのナビを確認する。…間違いない。むしろ間違っていてほしい。


「ここ、だよな…。ええぇぇ…? どう見てもただのオンボロアパート…??」


 住んでる人には本当に失礼きわまりない事を言っているのは分かっているけれど、よく【あの超有名漫画家が昭和の下積み時代に過ごしたアパート】とかの、ドキュメンタリーで必ず登場しそうなたたずまいの眼前がんぜんにおわしました。

 いやいや、もしかしたらあの艦長は実はものすごい組織の幹部とかで、このアパートは数ある拠点の一つで、見た目はこんなんでも中は超ハイテクでカモフラージュでわざと


「もうダメだ死にたい」


 思考の途中で現実に耐えられなくなった。自分の脳味噌が数日でこんなにも愉快ゆかいになっちゃってる現実に。

 ショックで首がカクーン!と前倒れる。多分横から見たら綺麗に直角に折れてるだろう。横書きのカギ括弧の左側みたいに。

  ※(→「 」)

 やだちょっと右側に比べると少し浮いてないこれ? 死ぬの? 死んだの? 吊っちゃっt


「うわああああぁぁぁいい加減にしてくれ俺の脳味噌おおぉぉぉぉ!!!」


 俺は自分の頭を両サイドからアイアンクローでめ上げた。もう割れてもいい。

 そして割れる寸前、後ろから激しく自転車のベルを鳴らされて我に返った。


「あっ、すいません不審者で」


 !?

 おおおお俺なに言っちゃってんのぉぉぉ!!??

 おおお落ち着け自分!!!

 心のマサカズツッコミ役が復活していたのが心強かった。死にたい。

  

「おたく、何してんの? 新聞の勧誘かんゆうも宗教の勧誘もウチはノーセンキューよ?」


 不審すぎる返答をさして気にした様子も無くいぶかしげに話しかけてきた男性は、これまたいつ瓦解がかいしてもおかしくなさそうなレトロな自転車に乗った、体格ガタイの良い短髪のアニキ風の人だった。


「い、いえ、そういうんじゃなくて…」


 どうしよう、『目覚めた力の使い方を教えてくれるという、宇宙戦艦の艦長っぽい人に教えられた住所を探してる』なんて言えるわけが無い。例え殺されても。言っても社会的に死ぬけど。

 絶望的な思考のデッドエンドで俺は死を覚悟した。


「ん、…もしかしておたくが司令の言ってた?」


 男性がピーンと来た顔でもっと不審な事を言った。


「レッド!? あ、赤? え、いや、自分、赤城って言うんですけど…」

「そうかそうか! 見つかったんだ! これでやっと楽できるぜ~!」


 そして初対面の俺の肩をバンバンバン。痛い。全く聞いちゃいねぇぞこのアニキ。

 …って、? ??


「ちょ、あ、あの…」


 またしても考える隙を与えてくれない展開に先日の既視感デジャヴを覚えながらも、今度は置いて行かれないように気をしっかり持ち、

 【男性】改め【謎のアニキ】はそんな俺の何かを察してくれたようで、ニカっと笑みを浮かべると、右手の親指をビッ!と自分に指してこう言った。


「ああ、俺は " ブルー " だ。ヨロシクな!」


 頭パーーーン! 分析なんて無理でしたーー。

 もうどうにでもなーーれーー。


「外国の方なんですか?」

「アホか、めっちゃ国産やっちゅーねん。本名は青沼って言うんだよ。」


 青沼だからブルーって安直あんちょく過ぎませんか。ていうかそれ自分で名乗ってて恥ずかしくないのだろうか。

 うん、多分気に入ってるんだろうな。いや多分じゃなくて絶対。


「ほら来いよ。司令に会いに来たんだろ?」


 謎のアニキは片手で器用に自転車を押しながらアパートの敷地に入っていき、空いてる手でカモンカモンとひらひらさせた。


「司令って…、宇宙戦艦の艦長みたいなコスプレの…」


 もし間違ってたら全力で逃げよう。口からすべり出た文章が恥ずかしすぎる。死にたい。

 しかしその問いは合っていたようで、【謎のアニキ】改め【青沼さん】はしかめっ面で訂正した。


「コスプレじゃねえ、れっきとしただ。ってかあの人また制服のまま出歩いたのか。目立っちゃいけないって自分で言ってて一番目立ってんだもんな。どうしようもねえよな!」


 やれやれ、って感じでカカカと笑う。

 うーーーん、まだ何とも言えないけど、悪い人ではなさそう? とはいえ、状況が全く明らかになっていない事だけは変わっていない。

 俺は警戒を解かなかった。


「ま、後でお前のも渡されるだろうがとりあえず司令の所行くぞ!」


 バト…!?




 赤城アラートが瞬間的に発令された。に。


 あ、やっぱ完全に毒されてるわ俺。死にたい。








 (本編次話【メタァのメタってメッタメタのメタだよね。ジャイアンかよ】へ続くッ!)





      

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