第16話:唐突な呼び出し
月曜日。
休みが明けて俺はいつも通り登校した。
鈴原はというと俺より後に家を出るらしい。
俺との同居が他の人にバレると面倒だとかそんな理由だろう。
昨日の夜は、春沢からも大量のメッセージが飛んできていた。
そのほとんどがあの時逃げたことや来週の予定を決めるものである。
春沢には悪いが、既読をつけずに電源を切っておいた。
そのままだと電話が来そうだと思ったから。すまん、春沢。
その時は、それでいいと思っていたが朝電源をつけると大量の着信に驚いた。相手は全て春沢。怒りのスタンプマークも大量だった。
今になってやや後悔。最近、学校へ行くのが段々、嫌なものになりつつある。
しかし、新たな週明け。俺はまた心機一転、気を今度こそ引き締めたのだ。
鈴原とのあの日から俺は、隙が多すぎる。女性に触れてしまう率が非常に高いのだ。正直、今にして思えば、ここまで女子にほぼ触れずに過ごしてきたものだ。自分の危機管理意識を褒めたい。
「おーす、おはよーっ!」
そんなことを考えながら俺はいつも通りの調子で教室の扉を開き、挨拶をした。
教室からは数名、俺に挨拶を返してくれる。いつも一緒にいる、太一や春沢、篠田。鈴原もまだ教室にはいない。
「ふぅ、よかった」
「何がよかったの?」
「うわぁ!?」
「そんなに驚かなくても……」
「春沢。びっくりさせないでくれよ」
「ふーんだ。いいもん。こっちからの連絡無視してたことなんて別に気にしてないもん」
あ、昨日の件だな。かなりご立腹の様子。
「あ、いや。昨日はすまん。帰ってすぐ疲れが溜まってたんで、スマホの電池切れたまま朝まで寝てたんだ」
「ふーん? そんなことあるかなぁ」
春沢からの疑いの目は消えない。うん、普通ないね!!
「一言くらい連絡くれてもいいと思うんだけどな」
「す、すまん。この埋め合わせはまたするから! この通り!!」
俺は手を合わせて、頭を下げる。
「んー……。じゃあ、そういうことなら。今度、駅前通りのカフェでパフェ奢ってよ」
「お、おお! そんなので良ければ!! みんなで行くか!!」
「みんなじゃなくて!! その、二人がいいな? って思ったり……」
春沢は恥ずかしそうに声が小さくなって行く。
ふ、二人? 今までどこかへ行く時は、基本的にみんなで一緒に行こうということが多かったのに、どういうことだ? それってつまり……?
「え、えーっと……」
「か、勘違いしないでね!? 今度の土曜日と思ったんだけど、美織は予定あるって言ってたし、大神くんも部活でしょ! それだけだからね!!」
「お、おう。そうか」
慌てて取り繕う、春沢の姿がなんだかいつも以上に可愛く見えた。
あれ、ナチュラルに来週の予定押さえられた?
「二人ともおはよう。なんの話をしていたのかしら?」
「え? あ、おはよう。鈴原さん! 別になんでもないよ! ね、間宮くん!」
春沢は、少し気まずそうにする。
「ん? ああ、そうだな」
俺が答えると春沢はなんだかホッとしたような表情をした。
「そう。なんだか、内緒話っていうのは気持ちの良いものではないわね」
「ご、ごめん。そういうつもりじゃ……」
「ふふ。冗談よ、春沢さん。気にしないで頂戴」
鈴原はそれだけ言うと自分の席へと戻って行った。
なんだ? それだけ言うためにわざわざ来たのか?
昼休みになり、俺は購買でパンを買い、いつものメンバー+鈴原で教室で昼食を取っていた。
最近、鈴原がレギュラー化しつつある。と言っても鈴原はほとんど俺とくらいしか話さないが。たまに春沢とも話すか。
そんな日常にもクラスメイトが慣れてきたこの頃。
一つの放送がまた、俺に波乱をもたらした。
『2年4組。間宮創くん。今すぐ、生徒会室まできてください』
WHY? なぜか生徒会に呼び出しをくらったのだ。
「おい、創。お前何かしでかしたのか?」
「そうね。間宮くんのことだから、公然猥褻が妥当かしら」
「ちゃんと罪を償ってきてね」
「私、待ってるからっ!!」
「やらかした前提で話進めるのやめてもらってもいいですか」
なんだこの流れ。やけにノリがいい。
「とは言っても今の声、生徒会長だろ? あの生徒会長に呼び出されるのは死を覚悟した方がいいぜ?」
「物騒なこと言わないでくれ。確か、剣道部主将だったよな」
「ああ。剣道部主将兼、生徒会長の
どんだけバイオレンスな会長だよ。それに愛用の竹刀をそんな風に使うか?
「そのせいで一部の男子は性癖を歪められ、竹刀で叩かれないと興奮しないようになってしまったと聞く」
「どんな噂だよ」
「男子って……」
ちょ、俺にまでそんな哀れみな視線を向けないでくれ!! 女子’Sからの冷たい視線が突き刺さる。
「それに見た目もかなりの美人でな。男女関わらず、ファンも多いってわけだ。ちなみに校内女子、踏まれたいランキング堂々の一位だ。二位は僅差で鈴原だな」
そんなランキング聞いたことねぇぞ。あ、鈴原が太一のことをすごく睨んでる。
「男子って本当にそういうの好きだよね」
「俺は知らん」
「それにしてもそんな人から呼び出されるって本当に何したの、間宮くん」
「一切記憶にございません」
「あ、それ言い訳の時に使うやつ」
いや、本当だから。
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