第81話 田舎に帰省するのって良いよね?



七「和樹、もうそろそろ着くわよ。」


和「んぁ? もう着くのか、、、」


 車に揺られて大体2時間ちょっと


 代わりのラノベを読んでいたところ、寝てしまったらしい



 ふと窓の外を覗くと、THE・田舎な景色が広がっていた


和「なんか、この風景見ると懐かしくなる。」


七「分かるわ。 辺り一面の田んぼとか最近じゃ市内だと見なくなったわよね。」


和「緑が足りない、みたいな?」


七「ホントそれよ。 お隣さんから鉢植えとか貰って育てようか悩んでるのよね。」


和「良いんじゃない? トマトとか簡単に育てれると思う。」


七「最近息子が家にいることが少なくなったから、トマトを息子と思って育てるわ。」


和「それに関してはすみません、、、」


 もう三条家に住むことが当たり前みたいな感じになってるんだよなぁ、、、


 っていうか、当初の目的は付き合い始めてから起こる混乱を防ぐためだったんだよ


 もう付き合い始めて暫く経つし、俺と澪さんのカップルも学校に馴染んでるし、もう母さんの家に帰っても良いかもしれない


 学校から少し遠くなるが微々たるものだし、特に問題は、無い


 、、、無いのだが、俺も彼女も同棲という状況をお互いに楽しんでいる


 十中八九澪さんも、同棲を続けなくても良いことに気が付いてる


 気が付いていながら、黙っているのだろう


 訊いてみないと分からないが、多分そういうことだと思う



 、、、でも、母さんのことも心配なのも本心なんだ


 ずっと見ないことにしてたけど、俺が三条家に居候してるってことは母さんは家に一人なんだよ


 勿論、俺がいつか独り立ちした後に母さんは家で一人だろう


 ならば今を母さんと一緒に過ごさずにいつ過ごす?


 、、、今度澪さんに相談し「和樹?」


七「もう着いたわよ? ぼーっとしてたけど、なにか考え事?」


和「あ、あぁ、ごめん、少し考えてた。」


七「ふぅ~ん、、、ま、今度教えなさい。」


和「了解っと。」


 返事と共に車から降りる


和「、、、懐かしい。 何年振りだっけ?」


七「和樹が小6の時の夏だったから、2年振りね。」


和「2年ぶり、か、、、」


 爺ちゃんと婆ちゃん、元気にしてるだろうか




⁇「お~七海さんに和樹じゃないか。 いらっしゃい。 和樹はまた大きくなったねぇ。」


七「お久しぶりです、お義父さん。 元気そうで何よりです。」


父方の祖父「お久しぶり。 挨拶はこれくらいにして荷物を片付けなさい。 お話はそれからにしようや。」


 家から出てきたのは父方の祖父、汐入源蔵


 ちなみに父方の祖母の名前は汐入智子


和「久しぶり、爺ちゃん。 婆ちゃんは?」


源「智子さんなら裏で牡蠣を割っとるよ。 お隣さんから良〜い牡蠣をもらっての。 儂も手伝っとったんだが、『邪魔だから退いていて下さい』と追い出されてな。」


和「爺ちゃん、まだ尻に敷かれてんのか、、、」


源「良いもんじゃぞ! 美人の尻に敷かれるのも!」


和「後で婆ちゃんに言っとくわ。」


源「止めてくれぇ! 後でお小遣い上げるから、ネ?」


 爺ちゃんは今年で56、婆ちゃんは53になるというのに未だにアツアツの夫婦である


 爺ちゃんも婆ちゃんもまだまだ元気で、たま〜に爺ちゃんが調子に乗っても婆ちゃんの方が強いのですぐ尻に敷かれる、、、のだが、爺ちゃんもそれを喜んでいるのが何か嫌だ


和「年齢✕千。」


源「それはひどくないかの!? せめて年齢✕五百じゃろう!」


和「そうか、、、爺ちゃんは今日の牡蠣は無しだね。」


源「年齢✕六百!」


和「きっとプリプリで美味しい牡蠣なんだろうなぁ。」


源「年齢✕七百!」


和「ヨシ! それで手打ちだね。」


源「まったく、、、背が伸びていくに連れ可愛げがなくなるのぉ。」


 ブツブツ言いながらもちゃんとお小遣いをくれるくらいには、俺を可愛がってくれるのだ


智「源蔵さん? 和樹ちゃん? 何をしているのかしら?」


和「爺ちゃんが遊んでました。」


源「おぉい孫ぉ!?」


 現れたのは鬼神のような顔をした婆ちゃん


智「和樹ちゃんありがと。 荷物を片付けたら、台所のお饅頭食べてもいいからね? さぁ源蔵さん? 夕方まで色々と働いてもらいますから。」


源「いやぁぁぁ!」


 婆ちゃんに引きづられていく爺ちゃん、、、その背中に楓さんと秀和さんを見た


 俺と澪さんも、もしかしたらあんな感じになるのかも、、、イヤイヤイヤ!


 夫婦で仲がいいのは見習いますけど、息子や孫に情けない姿は見せたくないなぁ


七「和樹〜!? 片付け手伝いなさ〜い!」


 家の中から母さんの声が聞こえてきた


和「は〜い!」


 急いで片付けをして、余った時間は辺りの散策でもするかなぁ





 と、いうわけで片付けも終わり、夕食まで辺りをお饅頭片手に歩き回ってみることにした


 まず小さい頃によく行った山まで行ってみよっと


 それにしても、、、


和「ホントに変わってない、モグモグ、、、爺ちゃんの家のお隣さんは、小さい頃に表札の名前が全然読めなかったんだよなぁ。 懐かしい。」


 成長した今なら読める


 『如月』か、、、如月?


 どっかで聞いたことがあるようなないような、、、ま、いっか!


 田んぼの畦道を五分ほど歩き、麓にある神社に来た


和「あ、人がいる。 女の子、か?」


 俺と同じくらいの背の女の子がお祈りしてる、の、だが、


 ?????


 あの服装、あの髪、あの立ち姿、あの後ろ姿、、、


 ど〜っかで見たことあるような、、、


 あ、こっち向く!




澪「!! 和樹くん!?」


和「澪さん!?」


 はい、澪さんでした


 ここで思い出しました


 楓さんの旧姓って『如月』だったわ


 、、、地球って狭いんだなぁ








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