第80話 帰省の準備って意外と早く終わったりするよね?




七「和樹、帰省するから一度帰って来なさい。」


和「マジか。」




 いつも通りの夏休みを過ごしていたところに、母さんから電話がかかってきた


 何事かと電話に出てみれば、帰省の連絡らしい


 まぁ、夏休みもまだまだ続くし、、、澪さんと離れるのは寂しいが


和「了解。 それでいつ?」


七「明日。」


和「連絡するの遅くない?」


七「二泊していくから、そのつもりで澪ちゃんに伝えておきなさいよ。」


和「息子の話を聞いてくれよ、、、はぁ、分かった。 明日までには準備しておくから。」


七「昼頃に迎えに行くから。 あ、昼ごはんは済ませておいて。」


和「そのまま行くわけね、、、承知いたしましたっと。」


七「じゃ、よろしく頼むわね。」



 、、、さて、澪さんにこの事を伝えなきゃ


 澪さんは、っと、丁度廊下にいた


和「澪さん、少し良いかな?」


澪「あぁ和樹くん、丁度良かった! 伝えなければならないことがあるんです。」


 おや?






和「え! 三条家も里帰り!?」


澪「そうなんです。 お父さんの仕事の都合上、この3日しか行けないことになってしまって、、、」


 秀和さんの仕事の、、、それはどうしようもないな


和「でも二人とも重なるなんて、珍しいこともあるもんだなぁ。」


澪「ですね、、、でも本当にタイミングは良かったのかもしれません。 和樹くんと離れるのは寂しいですが、帰省が重なったことにより離れることが一度だけで済みそうです。」


和「なるほど、そんな考え方もできるのか、、、」


 俺は彼女と離れることばかり気にしていたが、彼女にも家の用事はある


 自分のスケジュールばかり気にしていたが、彼女は俺の家の用事のことまで考えてくれている


 本当に、すごいなぁ、、、



和「じゃあ、少しの間離れるのか、、、」


 何度納得しようと思っても、寂しいものは寂しい


 と思ったら澪さんが突然話し始めた


澪「、、、この前インターネットで見かけたのですが、相思相愛の関係でも倦怠期というものが訪れるそうですね。」


和「あぁ、聞いたことあるよ。」


 恋人関係が始まって数ヶ月経った頃に訪れる、互いにドキドキしなくなったりマンネリ化する現象のことだ


澪「倦怠期が訪れるカップルと訪れないカップルがあるとも書かれていました。 勿論、私は毎日ドキドキしているので倦怠期は訪れないと自信を持って言えます!」


和「お、おぉ、、、」


 毎日ドキドキしてるのね、、、そう言う俺も毎日が幸せなのだが


澪「ですが、仮の話だとしても私は和樹くんに飽きたり飽きられたりなんかしたくありません。 なので倦怠期を未然に防ぐために、この帰省の間はチャンスと言えましょう。」


和「確か、、、倦怠期の解決法の一つに、『少し各自の時間をとる』ってあったはず。 もしかしなくてもそれの事?」


 他にも色々な解決法があるらしいが、澪さんが今言っているのはそれだろう


澪「はい! なので帰省で会えない時間はのではなく、と捉えてみれば良いのではないでしょうか?」


和「澪さん、あなたは天才か!?」


澪「フフ、そんなことも、、、あるかもしれませんね!」



楓「あなたたち、何やってるの?」


 俺は天才的な考え方を生み出した澪さんを拍手や口笛で讃えていた


 澪さんは褒められたことが嬉しいのか、胸を反らして自慢気にしていた


 その場面を見られたのである


 だから二人共恥ずかしくて叫んだのはしょうがないことなので、楓さんもそんなにニヤニヤしないでください、、、




秀「娘から話は聞いたね? 帰省する予定ができてしまったのだが、君はどうする?」


和「そのことなんですが、実はーー」


 澪さんにした説明をもう一度秀和さんと楓さんにした


楓「凄い偶然ね! なら暫く家は閉じておかないといけないのね。」


秀「できれば君にも来てもらいたかったのだが、重なってしまってはしょうがない。 君は君で、里帰りを楽しむと良い。」


和「えぇ、秀和さんも楓さんも楽しんできて下さいね。」


秀「ありがとう。 では、そろそろ準備を始めないといけないね。 衣類の他にーー」


 お二人は荷造りに入ってしまった


 俺も準備を始めようかな




和「、、、と言っても俺の場合は本当に服だけなんだよなぁ。」


 二泊三日分の衣類を鞄に詰め、はい、終了


 あ、でも道中で暇になった時のためにラノベを数冊持っていこう


 久しぶりに読みたいラノベがあったし、、、


澪「暇つぶしのためにですか?」


和「うわびっくりした! 突然背後に現れないでよ!」


 足音も気配も遮断されていて、接近にまったく気づかなかった


 何処かの国の暗殺者かな?


澪「驚かしてしまってすみません。 それで、その小説は暇つぶしのために?」


和「んぁ、うん。 そうだけど、どうかした?」


澪「、、、いえ、何でもないです。」


 そう言って彼女は荷造りに戻ってしまった


 こういう態度って、相手に何かしてほしい時、だよな、、、


 小説、ラノベ、里帰り、暇つぶし、、、


 、、、もしかして、澪さんもこのラノベを持っていこうと考えていたのでは?


和「あの、澪さん?」


澪「はい、何でしょうか?」


和「あ~、その、他に読みたいラノベがあったのを思い出してさ、よかったら、これ持ってく?」


澪「!」


 彼女の驚いた顔から推測するに、ビンゴだな


澪「、、、良いのですか? 和樹くんが先に取ったのでは?」


和「うん、全然良いよ。 棚を共通にしている以上、こういう事はいつかは訪れたはずだろうし。」


澪「その、ありがとう、ございます。」


 おずおずと手を出し、差し伸べた小説を受け取る澪さん


 こんな姿もカワイイ





 可愛い彼女との間に倦怠期なんか訪れさせないために、この帰省を上手に使おう










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