第66話 恋人に相談するのってツラいときもあるよね?




 戻った頃にはもう辺りも暗くなっていたので、帰ることにした


 俺と澪さんは他の皆と別の方向に帰るので、現地で解散した


 そして、澪さんはずっと不機嫌だった




澪「遅かったですよね、、、何を話してたんですか!?」


 そう言いながら詰め寄ってきた


和「落ち着いて、怪しいことじゃないよ。 ちょっとした相談事だよ。」


 うん、まぁ嘘はいってないな


澪「、、、私には?」


和「え?」


澪「私には、相談してくれなかったんですか?」


 電灯に当たってよく見える彼女の顔は、寂しそうだった


 、、、そうだよな、彼女よりも別の人に優先して相談したんだ


 客観的に見ても、許されないことだろう



和「ごめん、これは澪さんに相談できないことだったんだ。 でも本当に怪しことじゃないんだ。 信じてほしい。」


 澪さんはそっぽを向いた


澪「、、、和樹くんのことは信じてます。 なので、今はちょっと拗ねてるだけです。」


 いや全然ちょっとじゃないんだけど


澪「でも本当に困った時は話してくださいね。 今も、何か悩んでいますよね?」




 、、、本当にこの人が好きだ


 拗ねちゃう可愛らしいところも


 頼りになるカッコいいところも


 全て魅力的で、大好きだ


 でも、燈火さんに関してのこの話は彼女に伝えたくない


 気恥ずかしいし、何より燈火さんの暗い目のことを知られたくない




澪「、、、そうです!」


和「ど、どうしたの?」


澪「学年二位のご褒美として、和樹くんが悩んでいることを私に話してください!」


和「えぇ!?」


 それはほとんど命令では!?


澪「なら私へのご褒美としてください!」


和「ん、ん〜?」


 ご褒美が相談を聞くことって、、、


澪「いいんです! さぁ話してください!」


和「わ、分かったから肩を揺らさないで。」


 、、、最近の澪さんが積極的過ぎる


 これも彼女の一面だし、好きだけどね








澪「燈火さんが悲しい目を、、、」


 俺は燈火さんとのやり取りを相談させてもらった


 話を聞いて驚いていたが、すぐに考える姿になっていた


和「何か過去にあったのかな、、、」


澪「燈火さんと友達になって約半年ですが、そのような話は聞いていませんね。 やはり過去に何かあったのでしょう。」


和「何かしてあげたいけど、、、」


澪「当の本人が話すことを拒否しているのなら、無理に聞き出すのはいけません。 場合によってはより傷を深めてしまいます。」


和「だよね、、、でも、あんな目を見させられたら何もしないなんてできない。」


 いつもは明るい燈火さんがあんな顔をするなんて、余程のことがあったのだろう


澪「そうですね。 私も燈火さんの友達として何かしてあげたいのですが、、、」


和「、、、ごめんね、テストが終わったっていうのに暗い話をしちゃって。」


澪「いえ、燈火さんが関わっているので無下にはできません。 現状としては、今までの生活を続けることが一番かと。」


和「そのこころは?」


澪「燈火さんが話すことを拒んでいる以上、話を聞いて相談してもらうということはできません。 なら、楽しい今の生活を続ける方が良いのかもしれません。」


和「そっか、、、」



 ツラい、な


 燈火さんに何もしてあげられないことも


 恋人に情けない姿を見せてしまったことも



澪「、、、私も同じ気持ちですよ。 燈火さんの心に寄り添いたいのに、彼女がそれを拒否しているのですから。」


和「、、、、、、」


 そう言う彼女は、仲の良い友だちが離れていったような、悲しい顔をしていた


澪「ならせめて、少しでも燈火さんの心が安らぐようにいつもどおりに過ごしましょう。」


和「、、、ありがとう。 やっぱり澪さんに相談して良かった。」


澪「いえいえ、ここで相談してもらえなければ、燈火さんの心情を分からないままでいたところでした。 こちらこそ話してくれてありがとうございます。」




 この人はつよい


 心を、人を思いやる心がある


 でも、そんな人でもこんな悲しい顔をするんだ


 なら誰が彼女を癒やすのだろう


 優しい人が疲れた時には誰が付き添うのだろう


 心に寄り添える人が傷ついた時には、誰が支えるのだろう


 その人に、俺はなりたい


 だから、、、




和「澪さん、こっち向いて。」


澪「はい、キャッ!?」


 俺は澪さんをを優しく抱いた


 初夏の風は彼女には少し冷たかったようで、体は少し冷えていた



澪「どうしたんですか?」


和「分からない。 ただ、澪さんも悲しそうな顔をしてたから。」


澪「、、、、、、」


和「ありがとう。 相談を聞いてくれて、勉強を教えてくれて。 一緒に過ごしてくれて、ありがとう。」


 今の彼女にごめんと伝えても無駄だ


 伝えるなら、感謝だろう



澪「、、、私も、ありがとうございます。 和樹くんが居てくれるから、あなたが共に居てくれるから、私も頑張れます。」


和「、、、、、、」


 彼女は目を少しうるわせて、続けた


澪「ただ、さっきは少し、辛かったです。 なので、和樹くんも一緒に頑張ってくれますか?」


 そんなの、答えは一つに決まってる


和「うん、これからもずっと一緒にいるよ。 決して離れない。」






澪「ありがとうございます。 大好きですよ、和樹くん?」


 その笑顔はどんな宝石よりも美しく、どんな絶景よりも綺麗で、


 どんな華よりも、優しかった







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