第63話 恋人に勉強を教えてもらえるのって良いよね?
和「少し話したいことがあるんだけど、ちょっといいかな。」
家に帰って、いざ勉強を始めようとしていた時に話しかける
勢いを削いでしまうようだけど、これは大事なことなんだ
少なくとも俺にとっては
澪「はい、構いませんが、どうしましたか?」
和「、、、俺が澪さんの勉強の邪魔になるんだったら、遠慮なく見捨ててくれ。」
澪「、、、はい?」
言っている意味がわからないと言うように、澪さんは首を傾げる
和「俺のせいで澪さんの成績が下がったなんてことがあるのが一番ダメだ。だから教えることが面倒だと感じたら直ぐに切り捨ててくれ。」
これが俺の話したいこと
俺が澪さんの重荷になるなんてことが成績として表れたら、秀和さんたちも悲しむ
澪さんは優しいから『和樹くんのせいじゃありませんよ』って言ってくれるんだろうけど、そうなったら優しさが逆につらい
澪「、、、和樹くん、座って下さい。」
和「え?」
あれ、なんか雰囲気がまた、、、
澪「いいから座って下さい。」
和「あ、はい。」
迫力に負けて大人しく座る
澪「、、、私は和樹くんを邪魔なんて思ったりしません。 むしろ教えることで習熟度が上がるんです。」
和「そ、そうなの?」
流石、頭の良い人は考え方が違うなぁ
澪「それに私はあなたと勉強することでやる気が上がるんです。 良いところを見せたいし、和樹くんと勉強することが幸せになるんです。」
和「、、、、、、」
澪「だから自分を重荷だなんて考えないで下さい。 あなたは私を助けてくれているのですから。」
、、、この人は、どこまでも強くて綺麗だ
容姿の話じゃない
いや、容姿も言わずとも綺麗だけれども、心が綺麗なんだ
人を気遣い、思いやるという難しいことが自然にできてしまう
そんな人から元気づけられたなら、上を向くしかないじゃないか
和「、、、ありがとう、澪さん。 ちょっと弱気になってたよ。」
澪「やる気は出ましたか?」
和「当然。 厳しく教えて下さい!」
澪「言質はとりましたよ?」
和「う、うん。 どんと来いだよ。」
澪「では早速初めましょうか。 まずはどれくらい覚えているのかをーー」
こうして俺と澪さんのテスト勉強が始まった
言われた通り厳しく教えられた
凄まじいスピードで進む復習
学校の課題以外の、オリジナルの課題
徹底した時間管理 etc...
、、、でも、質問した時には正確に答えてくれて、しかも分かりやすかった
休憩時間には甘いお菓子もくれたし、飴と鞭の使い分けがスゴい
おかげで俺のテスト勉強はとても捗った
そして、確かに澪さんは自分の勉強を疎かにしていなかった
俺を教えている時も自身の復習を兼ねていたし、『ここはもっと分かりやすくできますね、、、』と言って、新しい解法を作っていた
人に教えることは自身の勉強になるというのは、どうも本当らしい
俺のネガティブな考えも吹き飛び、結果的に二人共やる気が出た
これならテストが安心だ
こんな感じでテスト勉強が捗り、無事にテストも終えれた
テスト直前にお腹を壊すとかいうテンプレな不運も無く、本当に無事に終えれた
澪「今日はテスト返却日ですね。」
そう、あとはテストの結果を見るだけなのだが、、、
澪「和樹くん、顔色が悪いですよ?」
和「ごめん、、、今更緊張してきちゃって、、、」
澪「では朝食は軽いものにしておきますね。」
和「ありがと、、、」
緊張で気分が悪いです
本番はハイになっててならなかったけど、いざ返却されるってなると緊張する
たぶん今までで一番テスト返却で緊張してる
だって、せっかく澪さんが教えてくれたっていうのに結果が出せなかったら申し訳ないじゃないか
おまけに澪さんも成績が下がっていたなら、俺はもうとんでもないネガティブ期に入るだろう
それは俺としても避けたいし、何よりそんな時にまで澪さんに気を遣わせてしまうことになったら彼氏、いや、婚約者失格だ
緊張するのも当然だろう?
澪「緊張するのも分かりますが、落ち着きましょう。 和樹くんは今まで一生懸命頑張ってきたじゃないですか。 自分を信じて下さいね。」
和「自身が持てません、、、」
澪「なら私があなたの分まで信じます、、、ってこれ、和樹くんに初めて好きって言われた時の言葉じゃないですか!」
和「アハハ!、、、そうだね。」
保健室での出来事だ
あの時の喜びと安心感が思い返される
和「、、、うん。 澪さんが信じてくれてるんだから、俺も自分を信じるよ。 ありがとう、元気が出たよ。」
澪「なら良かったです。 さぁ、学校に行きましょう。」
和「よし、行くか!」
澪「あ、ちょっと待って下さい。」
あれ? 何か忘れ物でもしたのかな?
澪「お礼と言ってはなんですが、キス、してくれませんか?」
和「え?」
澪「だから、その、、、実は私も少し緊張してて、、、キスしてくれたら元気が出ると思うんです。」
カワイイ
え? ちょっと可愛すぎない?
何このギャップ、、、頼りになる感じから甘えるモードって最強かよ
今ならどんなお願いでもやっちゃうわ
和「、、、いいよ。」
澪「ひゃっ!」
俺はそっと彼女の頭を抱き寄せ、額にキスをする
額へのキスはまだしたことが無かったから新鮮だ
サラサラした髪からほんのりと柑橘系の香りがする
澪「和樹くんはずるいです、、、どうしてそんなにカッコいいんですか!」
和「澪さんだって。 甘えてくれる姿がすごく可愛い。」
澪「うぅぅ、、、」
やっぱり澪さんは反撃に弱い
普段の凛とした姿もいいけど、反撃に焦ってる姿もすごく可愛いな
和「さ、学校行こ?」
澪「はい!」
だが、俺に聞こえないように小さく『愛してます』って彼女が言っていたことを、この時の俺は全く知らなかった
後にその事を教えられ、彼女にからかわれるのはまた別の話だ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます