第59話 ずっと先の事を考えるって不安だよね?



 修学旅行翌日


 今日は修学旅行を終えた2年生のみが休みの日である


 この日を使って、俺は楓さんたちと話し合うことにした


 、、、はずだったのだが、、、





楓「それで? それで?」


澪「和樹くんが『俺と、結婚して下さい』って! かっこよかったんですよ!?」


楓「きゃっ! そんなストレートに言われたら誰でもオチちゃうじゃない!」


澪「それで、ハグしたくなって少しからかったら逆に『ほら、おいで』って言われちゃって、イジワルな和樹くんにも心動かされちゃいました!」


楓「澪をそんなふうに、、、この子、やるわね。」




 俺の黒歴史暴露会が始まってました、、、


 そりゃ、ナンパを退けたところまでは話しても良かったよ?


 でも2日目の『あ~ん』あたりから俺のヤラカシが始まっていたから、暴露される側である俺の心はもうボロボロだ


 もう止めて!


 和樹くんのライフはもうゼロよ!




和「あの、もうそろそろ止めていただけないでしょうか、、、」


楓「何を言ってるのよ! これは修学旅行の感想も聞いてるんだから。」


 ニヤニヤしながらそう反論してきた


楓「まぁ、和樹くんをイジる気持ちが少しあったのは否定しないわ。」


和「っていうか、それが本命じゃないんですかね、、、」


楓「そんなことより続きを話してちょうだい?」


 流された、、、


澪「はい! それで、プロポーズした後に不安そうな顔をしていました。 カッコいいところも好きなのですが、『支えてあげたい』と思わせてくれるところにもキュンとしました!」


 澪さんも止まらない


 俺との出来事を絶えず話し続けている



 恋人との惚気話を友達に聞かせることは、時に人を傷つける


 それを澪さんは分かっているから普段は惚気を抑えているのだろう


 だが今は許可が出ていて、おまけに相手は惚気話を聞きたい母親だから澪さんのリミッターが外れている


 だから普段は溜めている惚気を爆発させているのだろう


 隠している俺への愛情がとめどなく溢れている今の現状として、俺としては嬉しい気持ちが三割、恥ずかしい気持ちが七割、といったところだ


 なので机の隅で小さくなってる俺を笑わないこと!


 これはしょうがないことなんだ、、、だから笑うなよ? 笑うなよ!?




澪「ーー以上が修学旅行の出来事です。 このようなことがあって、私と和樹くんは婚約することを決めました。」


 ふぅ、やっと落ち着いてくれた


 いや、逆に此処からだ


楓「そう、そんな事があったのね。 それで婚約のことなんだけど。」


 これからどうするのかを含めて、色々なことを話さなければいけない


和「はい。 俺たちとしては高校卒業後に婚姻届を提出することを決めました。」


楓「それが妥当よねぇ、、、提出した後は?」


澪「二人とも大学に進学することを決めています、、、ですが、まだ何処の大学に行くかは決めていないのでハッキリとしたことは言えません、、、」


楓「そうなの。 さっきから黙っているあなたの意見は?」



秀「、、、話していいのかい?」


楓「当然じゃない。 澪の父親なんだから。」


 、、、俺たちが寝た後もたっぷり絞られたそうで、秀和さんがずっとしぼんでいる


 話し合いが始まってからも、静かにしていた


楓「あなたが澪たちを邪魔してしまったことは怒ることよ。 でも二人共もう気にしてないし、元気出しなさいな。 でしょ?」


和「はい。 もう気にしていないので大丈夫です。」


澪「私ももう気にしていませんので、萎えてないでさっさと話し合いに参加して下さい。」


 、、、やっぱ秀和さんには厳しいんだね、、、


秀「ありがとう、、、次からは気をつけるよ。 それで進学のことなんだけど。」


 あ、元気出した


秀「二人の成績を見た所、問題ないと思う。」


和「え? 俺の成績で大丈夫なんですか?」


澪「え?」


秀「え?」


楓「え?」


和「えぇ?」



澪「和樹くん、、、その成績で大丈夫ではないと?」


和「だ、だって澪さん学年一位でしょ? そんな人と同じ大学を目指すなら、もっと頑張らなきゃいけないんじゃ。」


秀「いやいや、君も十分に優秀だよ。 それに僕もこれくらいの成績だった。」


和「そうなんですか!?」


 社長を務める秀和さんはもっと成績が上だったのだと思っていたのだが、、、


秀「あぁ。 しかしあることを始めてから僕の成績は爆上がりした。」


和「それはなんですか?」


秀「楓に勉強を教えてもらったことだ。 楓は全国模試3位の成績だったんだぞ?」



和「ええぇぇぇぇ!?」


 楓さんが、全国三位!?


楓「やめてよぉ、もうずっと昔の話でしょう?」


秀「そんなことない。 今も君の目は理知的だ。」 


楓「嬉しいわ。 でも私が教えてあげたこともあるけど、あなたの頑張りもあったでしょ? あの時のあなたの頑張り具合は教えていた私も驚いたわ。」


秀「素晴らしい成績の君に並び立てる男になるためには一人で頑張っていてはダメだと気づいてね。 恥ずかしがっている場合では無いと決意したのさ。 それに好きな相手から教えられて、やる気が出ない男が何処にいるんだい?」


楓「思えばあの時から両思いだったのよねぇ。 私はいつでもOKだったのにこの人ったら、『君にふさわしい男になれるまで思いを伝えない』って決めてたのよ?」


和「そ、そんな事を、、、」


澪「私も初めて聞きました、、、」


 澪さんも初めてだったの!?


澪「あと惚気けるのは止めて下さい、、、」


 うん、それは俺も思った


 この人たちはす〜ぐイチャイチャしだすんだから、、、


 え? ブーメラン?


 何言ってんだよ


 俺たちが無意識にイチャイチャしてるって言いたいのか?




秀「すまないね。 それで、成績のことなんだが、、、君が不安だというなら澪に教えてもらえばいいじゃないか。」


 え!?


澪「良いですね。 私も和樹くんと一緒に勉強するなら大歓迎です!」


楓「それに相手が澪ならやる気が出るでしょう? 良い案だと思うわ。」


 皆乗り気だな、、、俺も嬉しいが


和「こちらからもお願いします。 澪さんに教えていただけるなら頑張れます。」


澪「私は厳しくいきますからね、、、覚悟して下さい!」


 き、厳しく!? だが、、、


和「うん、よろしくね、澪さん。」


秀「良い返事だね。 これで勉強のことも大丈夫かな。 他に相談することはないかい?」


和「これで大体大丈夫です。 話をしていただいてありがとうございます。」


楓「澪をお願いね?」


和「はい。 、、、といってもまだお世話になりますが、、、」


 中学生の俺たちにとって自立はまだ程遠い


 結婚、住居、家計、出産、etc、、、


楓「そうね、でも今は学生をしっかり楽しみなさい。 人生は永くても学生は短いんだから。」


和「そうですね、、、ありがとうございます。」


 楓さんの言う通り、今は学生を楽しもう






 そんなこんなで、澪さんのご両親との話し合いを終えた


 次は俺の母さんだ





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る