第33話 彼女の家に住もうとするのってビビるよね?




 澪さんとの抱擁を見られた後、どちらの親にもさんざんイジられた後、母さんと別れて秀和さんの車に乗り、三条家へ向かっていた


 てっきり車もすごいと思っていたが、意外と普通だった


 秀和さんの興味は家や家具などだけなのかも



秀「いや〜、少し目を話した鋤に抱き合うなんて、和樹くんも情熱的だねぇ。」


 まだイジるのか、この人は


澪「お父さん? それ以上するとお母さんに言いつけますよ?」


秀「ごめんなさい、だからどうか楓にだけは、、、」


 即答だった


 楓さんどんだけ怖いんだよ


 、、、、、なんか将来の自分見てるみたいだった



秀「えーそれでは改めて和樹くん、少し早いけどいらっしゃい。 事情は澪から聞いたよ。 僕達が泊まらせてしまったばかりに、済まなかったね。」


和「いえ、、、俺も楽しみにしていますので。」


秀「ありがとう。 そういえば部屋はどうするんだい? また澪の部屋?」


 少し前の俺だったらここで日和ってたけど、今回は事情が違う


和「あ、是非。 澪さんの朝のお世話をすることになったので。」


秀「アハハハ! 澪、からかったつもりが返されて驚いたんだろう?」


澪「はい、、、まさか和樹くんがカウンターに強いなんて、、、」


秀「いいじゃないか、まずはお互いを知ることが大事だよ。 朝の澪は本当に弱いからね、よろしく頼むよ。 朝が弱いのは楓も同じでね、いつもは私がーー」



 その後、延々と秀和さんと楓さんの惚気話を聞かされた


 控えめに言って車内がピンクになった







 三条家に到着して、俺は荷物をおろした


 うん、何度見ても大きい家だ


 これからここに住むのか


 、、、なんかここに来るたびネガティブになってる気がする、、、





楓「おかえり、和樹くん。 手を洗ったらおやつ食べてもいいわよ。」


和「マジすか。 ありがとうございます。」


 そうか、、、『おかえり』って言われるようになるんだよな


 やっと住むって実感した気がする


 そしたらなんか緊張してきたけど、、、


 俺なんかが大丈夫か?


 こちとら一般庶民じゃぞ



澪「和樹くん、、、今、不安そうにしていますよ。」


 やっぱり澪さんにはバレちゃうよな


澪「大丈夫ですよ! こんな両親ですし、すぐに慣れます。」


秀・楓「「ひどくない!?」」


和「、、、ありがとう。 よろしくおねがいします、秀和さん、楓さん。」


秀「うん、、、まぁいいか。 よろしくね、和樹くん。 何なら『お父さん』と呼んでも良いんだぞ?」


楓「じゃあ私のことは『お母さん』と呼んでね♪」




 、、、、、、なんか新鮮だ


 俺は生まれて間もない頃に父を亡くした


 父の記憶はまったくなかったから、家に父親がいない理由を理解しても特に悲しむことも、気にすることもなかった


 でも、周りが父親のことを話し始めると、みんなには父親がいるから自分だけが違う世界にいるみたいに感じて、ずっと嫌な気持ちがしてたんだ





澪「!? 和樹くん、どうしましたか!?」


和「どうしたって、、、なにもないけど?」


澪「なにかあるに決まってます! だって和樹くん、、、泣いてるじゃないですか。」



 、、、、本当だ


 頬に涙が流れる感触と冷たさを感じた


 あれ? なんで泣いてるんだっけ?、、、、、





 、、、、、、、そっか、ホントは俺、寂しかったんだ


 母さんだけに頼り切ってたけど、心の中はみんなの言う『両親』に憧れてたんだ、羨ましかったんだ


 いろんなことを『両親』に話してみたかった、ネガティブに考えてしまうことを『両親』に相談したかった



 でもできなかった。 母さん一人にこれ以上悩みを与えるのが怖くて


 勿論、母さんにはこれ以上無いくらい感謝してるし、俺の母親はあの人だ



 でも、今を『両親』と呼べる人たちに初めて出会えて泣くほど嬉しい


 だから、どうか今だけはーー




秀「大丈夫だよ。 これからも色々と話してくれ。」


楓「悩んだりすることがあったら、いつでも相談してくれて構わないのよ?」


澪「安心してください、和樹くん、、、私がついていますから。」






 ーー今だけは、この人たちの家族でいさせてくださいーー

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