第31話 澪視点①



 和樹くんのお母様に連れられて、私はリビングへ行きました


 元気づけてもらったとはいえ、やはり緊張しますね


 和樹くんもこんな気持ちだったのでしょうか?



母「じゃあ、そちらに座ってちょうだい。」


 そう言ってお母様は机を挟んで反対側の席を指します


澪「、、、失礼します。」



 早速お母様が話しかけてきます


母「いきなりなんだけど、和樹との馴れ初めを聞かせてくれないかしら。」


 いきなり!? 和樹くんのお母様も!?


 やはり親というのは子供の話が聞きたくなるものなのでしょうか


 私もいつか和樹くんとの子供ができたときにはわかるのでしょうね


 、、、、、! あっ、そのっ、まだ聞かなかったことにしてください、、、、、



澪「分かりました。」


 そうして私は和樹くんとのことを話しました


 私の事情のこと、出会って初めは少し警戒していたこと、でもいい人だって分かったこと、つらそうにしていたので元気づけたこと、気がついたら好きになっていたことなどーー


母「、、、なるほど、和樹との出会いは分かったわ。 じゃあどうして家に住んでほしいのかしら?」


 次に私は和樹くんと周囲の事情を話しました


 彼を家に招待したこと、親が無理を言って泊まってもらったこと、、、


 、、、そして、和樹くんを誰にも渡したくなくて、わざと周囲に見せつけてしまったせいで起こったことーー


母「なるほど、大体の事情はわかったわ。 展開の速さはあなたが和樹のことを好き過ぎたせいで起こったことなのね。」


澪「、、、合っています、、、」


母「和樹のことを好きになった理由もわかったわ。 さっき必死で言ってくれたものね。」


 そう、 先程和樹くんの良いところを反射で恥ずかしいぐらいに言いました


 思い返せばもっと恥ずかしいです、、、











母「、、、、、あなたは和樹の父親のことを聞いているかしら?」


澪「いいえ、聞いていません。」


母「そう、、、和樹は言ってないのね。 ねぇ、和樹の父親のことを聞く気はある?」


 そうお母様は問いかけます


 ですが勿論、私の答えは決まっています


澪「はい、お願いします。 和樹くんとこれから付き合っていく中で避けられないことのようですので。」


母「分かったわ、、、、、実はね、和樹の父親、つまり私の夫は、和樹が生まれてすぐに亡くなったのよ。」


 っ!


 私はその言葉に驚きを隠せません


 、、、そういえば、和樹くんが連絡するのも相談したのもお母様でした


 ここからなら見える2つしかないお茶碗もそれを語っています




 、、、まさかお父様が亡くなっていたなんて、、、


澪「その、不躾なことをお聞きしますが、原因は、、、」


母「交通事故よ。 その時の保険があったから、私一人でもあの子を育てられたんだけどね。」


澪「そんな、、、」


母「あなたがそんな顔をする必要はないわ。 とっても小さい頃だったから、和樹は割り切ってるのよ、、、でも、私はそういうわけにはいかない。」


 そう言うと、お母様の周りの空気が張り詰めます


母「和樹はあの人が残してくれた形見みたいな子なの。 勿論和樹が自由に恋愛するのは構わないと思ってる、、、でも、結婚を見据えているようなことをするのは私も慎重にならざるを得ないわ。」


澪「そう、、、ですよね、、、」



 しかし、お母様がフッと笑い、張り詰めていた空気が緩みます


母「でも、あなたと少し話して安心したわ。 だってあなた和樹のことを好きすぎるんですもの。」


 ちょ、ちょっとお母様!?


 事実ですけどももう少し言い方を、、、


母「でも、まだ完璧に信頼したわけじゃない。 なにか裏があって、和樹のことを悪くするんじゃないかって思ってる。 それは理解できるわよね?」


澪「はい、、、ですが、あえて言わせてください。 私は和樹くんが好きです。 出会って間もないけれど、和樹くんのことはとても信頼していますし、信頼してくれていると誇れます。」


母「、、、、、、、」


澪「だから、必ずお母様からの信頼も得てみせます。」




 和樹くんは、偶につらそうな顔をします


 これからも彼はあんな顔をするかも知れない


 でも、私はそんな時に彼の隣りにいたいし、頼られたい


 そんなふうに守りたいと思わせてくれるところも、私は好きなんです




母「そう、、、なら、これからもよろしくね、澪ちゃん?」


澪「はい。 よろしくおねがいします、お母様。」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る