14話 ドラゴン
ブラックから貰ったペンダントが光った瞬間、私は暗い空間に移動したのだ。
さっきまで地上にいたはずなのに、今私に見えるものは光の入らない地下と思われるのだ。
ほとんど見えない場所に急に来た事に驚いたが、ブラックのペンダントが光っている事で、辺りが少し確認出来たのである。
そこは地下宮殿のような広いスペースとなっており、もしかするとかつての魔人の国の城の地下なのではないかと思われたのだ。
何故ここに呼び寄せられたかわからないが、ブラックから貰ったペンダントが光っていることから、これが関係しているのだろう。
そう思った時、奥の方で同じような光を見つけることが出来た。
とりあえず、外に出る方法もわからないので、その光に向かって歩く事にしたのだ。
しかし光に近づくにつれ、何かの気配を感じるのだ。
先がわからないだけに、一歩一歩慎重に進む事にした。
ブラックから貰ったペンダントがあるので、ある程度のものからは守られているはずなのだ。
その光の近くまで行くと、私は足を止めたのだ。
そこには自分が想像したものとはかけ離れたものが存在したのだ。
それは魔獣かと思ったが、今まで見てきた魔獣と比べ物にならないくらいの大きさなのだ。
私が知っているものに例えると、アニメなどに出てくるドラゴンのような形をしているのだ。
そして光っていたのは、額のあたりに埋め込まれた宝石のような石であった。
それは、ブラックから貰ったペンダントと同じ石のように見えて、同じように光っていたのだ。
今更ながら、こっちに歩いてきたことを後悔した。
そのドラゴンのような怪物は眠っているように目を閉じていたので、そーっとその場を去ろうと思ったのだ。
しかし、残念なことに寝ているわけでは無かったのだ。
「その娘、待つのだ。
ブラックの気配を感じ、こちらに呼び寄せたのだが。
ブラックはいないのか。」
その怪物から思念が伝わってきたのだ。
なんだか弱っているようにも感じたのだが、その風貌を考えると安心は出来ないのだ。
「ええ、ブラックはいないわ。
私が持っているペンダントのせいね。
ブラックが魔力を込めてくれた石なの。」
私は恐る恐る話したのだ。
「あなたは誰?」
身体は動かず、目だけ見開いて答えてきた。
「私はブラックを主人にするもの。
この500年ほど主人の帰りを待っていたのだ。
私は人間により消滅させられたと思われたが、魂のみ存在し、やっと最近肉体も復活を遂げることが出来たのだ。
ただ、ここから出るにはブラックの許しがないとダメなのだ。
ブラックとの契約となっており、肉体が消滅した後もその縛りは消えなかったのだ。
だから、ここでずっと待つしか無かったのだよ。」
何だか一人でこの暗い中に500年もいたと思うと、かわいそうな気がした。
きっとブラックはこのドラゴンが消滅してしまったと思ったのだろう。
そうでなければ、置き去りにして移住するとは思えないのだ。
「わかったわ。
あなたが復活したことをブラックに伝えに行ってくるわ。
私を地上に戻してくれる?」
「ああ、頼んだよ。
まだ体が万全ではないのだ。
地上のエネルギーを吸収して生命を維持しているのだが・・・」
なるほど。
このドラゴンの影響でこの辺り一帯が草木も生えない状況なのかもしれない。
草木の生命エネルギーを吸い取って生きながらえていたようなものか。
身体は大きいがかなりまだ弱ってる感じなのだ。
私は今回持ち歩いている薬が一つだけあるのだ。
誰かの命の危機になった時に使える薬なのだ。
鉱山の視察について行くだけなら、危険な事はないと思っていたが、お守りのように持って来たのだ。
このドラゴンに効果があるかわからないが、使ってみようと思ったのだ。
体力回復に効果が少しでもあればと思ったのだ。
「ねえ、この薬を使ってみてはどうかしら?
少しは体力が回復するかもしれないわ。
私を信用してくれると嬉しいのだけど。」
確かに初めて見る人間から与えられる薬なんて、信用できるはずがないかもしれない。
そう思われても仕方がないのだ。
人間に消滅させられたとは、やっぱりハナさんの薬のせいかもしれない。
ここにも闇の薬の被害者がいたのだ。
だが、意外な答えが返ってきた。
「ブラックの石を持つ者は私と友であるのと同じだ。
その石を持つものは信用に値する。」
「良かった。」
私はそう言って、うずくまっているドラゴンの足のあたりに回復の薬を振りかけたのだ。
光る粉が舞い散り、すぐに吸収されたのである。
その後すぐに私は地上に移動させてもらえたのだ。
ドラゴンがどこまで回復出来るかがわからなかったが、少しでも役立てばと思ったのだ。
地上に出て採掘場に向かうと、カクが私を探し回っていた。
流石に死の大地には近寄らなかったようで、採掘場の現場などを色々探していたようだ。
「舞、どこに行ってたんだい?
心配したよ。
急にいなくならないで。
もう、こっちの仕事は終わったから、帰れるよ。」
「ごめんね。
ウロウロして迷子になってたの。
帰ろうか。」
私は地下のドラゴンの話はせず、まだ内緒にしておく事にしたのだ。
カクの事だから、二度とここには来ないと言い出しかねないからだ。
ブラックに解放して貰えば、魔人の世界に行くことが出来るので、いらぬ心配をかける事はないからだ。
私たちはまた飛行船のような乗り物に乗り込んで、帰る事にしたのだ。
安定した飛行で、食事をしながら外の雪景色を楽しむ事が出来たのだ。
またブラックに会いに行かなくては。
私は会う理由ができた事に、少し嬉しかったのだ。
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