13話 死の大地
私は洞窟を出てブラックにしがみつくと、カクのお屋敷の前に一瞬で移動したのだ。
ブラックが送ってくれたのだ。
洞窟を抜けると、そこはまた白い世界となっており、カクが準備してくれたローブなど防寒具を身に付けないといられない世界であった。
魔人はほとんどの環境には左右されないようで、真冬の世界でも寒さは問題ないようなのだ。
私は最後に見た黒い翼の人物が気がかりだったが、ブラックに気にしなくて良いと言われたのだ。
確かに魔人の国での事であり、私には関係ないと言う意味なのかも知れないが、少し突き放された気分でショックだったのだ。
森も復活した事だし、私の助けなんてもう必要ないのだと思った。
「送ってくれてありがとうございます。
森も復活したし、少ししたらまた自分の世界に戻りますね。」
私は出来るだけ元気に話したのだ。
「もう、帰ってしまうのですね。
出発するときは、ちゃんと声をかけてくださいね。」
私はブラックの言葉に頷くと、カクのお屋敷の中に入ったのだ。
「舞、外は寒かっただろう。
魔人の国で危険な事は無かった?」
カクが暖炉のそばに行くようにと勧めた。
前と同じように温かなお茶を用意してくれて、私はホッとしたのだ。
今回の森での件は魔人の幹部達も知る事となったので、カクやヨクにも伝える事にしたのだ。
人間が魔人の国に行くときに注意出来ればそれに越した事はないのだ。
「そんな怖い事があったんだね。
舞が無事でよかった。
当分は近づかないほうがいいね。」
カクは青ざめた顔で話したのだ。
「でも、ブラックが警戒を強めると言ってたし、何百年に一度現れると言う話だから、もう遭遇する事は無いんじゃないかな?
それに黒い翼の者については不明だけど、実際現れたわけではないから。」
カクから予想通りの言葉が発せられて、いつものカクと変わらないなあと思ったのだ。
「なるほど、異世界も色々な事情があるのですな。
まあ、魔人達であれば、上手く立ち回れるであろう。」
ヨクはそう言って付け加えたのだ。
「そうだ、舞。
明日、シンピ鉱山にカクが視察に行くのだが、一緒に行ってみるかい?」
シンピ鉱山とは色々な鉱石が発掘されている場所なのだ。
今まで使っていた風や水、光などの鉱石は全てここで採掘された物なのだ。
その場所は以前魔人の国があったと言われる大地に隣接する場所らしい。
今は以前栄えた魔人の国の痕跡は全く残ってないようだが、何となくブラックが過ごしていた場所に行ってみたいと思ったのだ。
「いいのですか?
是非行ってみたいです。
カク、案内してね。」
カクは嬉しそうに明日の準備を始めたのだ。
ヨクから、明日は飛行船のような物に乗っていくと言われたのだ。
今まで、自分の世界でもそんな乗り物に乗った事がなったので、カクではないが私も楽しみとなったのだ。
次の日、お屋敷の前に馬車で迎えが来て、飛行船の乗り場まで送ってくれたのだ。
そこには自分の世界にもあるような飛行船と同じで大きな気嚢のようなものの下に旅客のいるゴンドラがついていた。
しかし、動力は風の鉱石が関係しているようで、自分の知っている飛行船とはちがうようなのだ。
チケットを渡すと私達は外が見える一等席のような立派な場所に通されたのだ。
カクはなんだかんだ言っても王室付きの薬師のため、色々と優遇されるらしい。
私達が乗り込むと、すぐに出発した。
飛行機とは違ってゆっくりと上昇し外の風景をみるのも楽しかった。
風などによる揺れもなく、お茶をゆっくり飲みながら旅行気分であった。
ふと外を見ると一面雪化粧であったが、私達が向かっている方向に、ある部分だけ雪が全く積もってない大地が見えた。
「何であそこだけ雪が積もってないの?」
外を見ながらカクに聞いてみたのだ。
「ああ、あれが魔人の国があったと言われている大地だよ。
地熱の関係か、あの場所だけ積もらないんだよ。
それに何故か草木も生えないところなんだよね。
ちょっと不気味でね。
死の大地とも言われてるんだよ。
だから、未だにどの国にも所属していない土地なんだよね。」
なるほど。
今度ブラックに聞いてみよう。
何か理由があるのかも知れないのだ。
その大地を横目に、シンピ鉱山の採掘場に私達は到着したのだ。
カクは王室からの依頼で定期的な視察に来ただけなので、採掘場に問題があったわけでは無かった。
しかし採掘状況について、関係者に色々聞き取りをしなければならないようなのだ。
私はその間、少しだけ採掘現場を見せてもらった。
鉱山自体はとても大きいため、まだまだ資源が枯渇する心配はないようであった。
ただ、光の鉱石は本当に稀にしか採掘できず、私が見ている間に採掘される事は無かった。
本当に貴重なものなのを実感したのだ。
私は一通り採掘現場を見ると、隣接する雪の無い大地に向かった。
そこは採掘場から500メートル位しか離れておらず、徒歩ですぐに行ける場所であった。
カクの話ではその大地に入ると気分が悪くなったり、居心地が悪くなったりと、どうも長時間滞在しづらい場所でもあるようだ。
何か魔力らしきもので人を寄せ付けないようにしているのかも知れない。
しかし、私はブラックから貰ったペンダントがあるのだ。
先日の黒い影の一件の後、ブラックが近くにいなくても、常に結界を張ったような状態になるようにペンダントに魔力を込めてもらったのだ。
私がこれを身に付けている間は、何の影響も受ける事は無いはずなのだ。
私がその死の大地とも言うべき場所に立った時、予想通り何の問題も起きなかった。
その大地はやはり地熱のようなものの関係か、暖かな感じがしたのだ。
これなら雪が積もらないのも納得出来るのだ。
しかし、草木が生息しない理由がわからなかった。
土を見ても、特に気になる事はなかった。
放射線のたぐいだと問題な気もしたが、魔人がいなくなって500年はたっているので、影響はないと思うのだ。
その時である。
ブラックから貰ったペンダントが急に光ったのだ。
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