第16話 道中3

〜前回の簡単なまとめ〜


村から出てようやく看板を見つけた、多分折り返しだろう


〜まとめ終わり〜


吾輩とフーリエはルズへの看板をようやく見つけルズへ向かっていた、陽はもうだいぶ傾いていてだいぶまわりも橙色になってきている。


「そういえばルーゴよ、ずっと歩いていて不思議に思っていたことがあるんじゃが。」


と吾輩に抱えられていたためちょっと身体が痛いから自分で歩くと言って吾輩の隣を歩いているフーリエが吾輩に聞いてきた、相変わらず飽きないのか吾輩の両手で遊んでいる。


「なんだ?フーリエ。」


「いやな、歩いているのに魔物が襲ってこないなーと思って、勿論さっきの話の内容通りなこともあるんだろうけどそのわりには静かすぎるなぁと。」


フーリエは辺りをキョロキョロしてから吾輩の方を見てきた。


「あー、なるほど、たしかにそうだな、吾輩もなにも言っていなかったしそれは言っておいたほうが良いか。」


と吾輩は歩くのをやめてその場で軽く足を上下した、そうすると吾輩を中心に結構な広さで円形で薄黒い膜のようなものが広がっていった。


フーリエも歩くのをやめて吾輩の方を向きまわりを見回すと再び吾輩の方を向きすごく文句や不満を言いたそうな表情で吾輩を見てきた。


「ルーゴよ、一応というかワシもよくは把握出来ていないから頭の中で仮説を立てておきながら質問するんじゃが……これ結界か?それともなんかの攻撃か?」


フーリエは吾輩の両手でどうやってか器用に繋ぎヌンチャクのようにしてふるふる回しながら吾輩に尋ねてきた、かなり考えているのか語気が重いような気もした。


「結界かと言われたら確かに結界だし攻撃かと言われたら攻撃では無いような気がするけど……この今見えている薄黒い膜みたいなものは吾輩のオーラ、ただの気合い、風格みたいなものだ、だから結界かと言われたら結界では無いし攻撃かと言われたら攻撃だとも言えるな。」


と吾輩は説明したあと軽く足を上下すると目に見えていた薄黒い色が消えてまわりの景色がもとに戻り色彩ももとに戻っていた。


「ふむふむなるほど、確かに結界と言われたらそうでもあるしそうではない、攻撃かと言われたらそうでもあるしそうではない、まぁ確かに……とはならんわ、どんだけ強いオーラ?気合い?じゃ、もはやわけがわからん……。」


フーリエは吾輩の手を持ちブンブンと回しながらブツブツとなにかを言いながら少し考えているようだった、まぁ吾輩自身これは気合いやオーラの類いで吾輩の呪いではない(着色は呪いだが)からなんともうまく形容し難いんだが……。


「うん、まぁ良いじゃろ良いじゃろ、なんか考えるだけ無駄な気がしてきたわ。」


とフーリエが言いながら歩きだしたので吾輩もついて歩きだした。


「まぁまた話に戻るけどつまりさっきのやつのおかげ?で魔物がよりつかない、と?」


「まぁ簡単にまとめるとそういうことになるな、だから襲ってくるとしたらよほど自信がある魔物かよほど強い魔物かそれとも……。」


とその時斜め背後から音がした。


吾輩とフーリエは互いに顔を見合わせた後、後ろを振り返るとそこにはそれなりの数のゴブリンが集団で固まって居た。


「……よほど知能が低くこちらの強さもわからない野生の勘が衰えているような魔物なんだが……まさかゴブリンかぁ……。」


ゴブリン自体は別に吾輩一人でも問題ないだろうしフーリエ一人でも問題ないだろうが、ゴブリンってこんなに頭悪かったっけかなぁ……と吾輩は考えてしまった。


「まぁルーゴが今何を考えているかは大体予想はつくんじゃが、このゴブリンたちは頭が悪かった、ってことで良いんじゃないか?と、数は十匹か、まぁまぁいるの。」


とフーリエは後半ワクワクした声で吾輩に言ってきた、まぁ確かに考えすぎるのも良くはないよなぁ、と吾輩は考えをまとめた。


「それもそうだな、さて、じゃあフーリエどうする?吾輩がやろうか?」


と吾輩が【呪いの収納】に手を突っ込みながらフーリエに聞くとフーリエはウキウキしながら吾輩の前に立った。


「いやいやいやいや、ワシがやる、村に居た時もあまり身体動かさなかったし七割八割はワシ以外が魔物倒していて最近は全く倒していなかったから久しぶりにワシがやりたいからここはワシにやらせてくれ。」


とウキウキした口調で吾輩の前に立ったフーリエが言ってきた、そんなに暇だったのか……と吾輩は少し同情した。


「ならどうぞ譲りますよ。」


「うむ譲られた。」


とフーリエはニヤニヤしながら前へと歩いて行き、それを見たゴブリンたちも、馬鹿が仲間と別れてノコノコ単独でこっちにやってきた、と言わんばかりフーリエ目掛けて一斉に突撃してきた。


「あー、突撃かぁあれやられると結構厄介なんだよなぁ……まぁフーリエなら大丈夫だろう。」


と吾輩はフーリエの方を見た。


「呪文の詠唱一節から五節まで破棄、呪文の詠唱七節から十四節まで破棄、呪文の十六節から最終前一節まで破棄、[世界を一方的に凍らせ、その身に宿るは世界の光、凍てつかせるは身に降りかかる闇]、【第十二階 永久の冷風】。」


呪文は全十五階級、その十二階を三詠唱だけで発動とは流石賢者だなぁ……というかゴブリン相手に第十二階は、よほど魔法が撃ちたかったんだろうなぁ……。


「ふー、終わった終わった、久しぶりに魔法使えてだいぶ満足満足。」


とフーリエは凍ったゴブリンに背を向けながらこちらを向いてスッキリしたような表情でこちらに歩いてきた。


「じゃが十二階を三詠唱もかかるとは少し鈍ってしまっているのかもしれないなぁ。」


と言いながら吾輩の方に一歩一歩と歩いてくるたびに後ろでゴブリンが一体また一体とパラパラパラパラと砕けていった。


「まぁ久しぶりに使ったにしては三詠唱で唱えられてこの威力なら良いんじゃない?」


「うーん……まぁ……うーん……良いか、うん。」


と吾輩とフーリエは二人して納得して砕けた氷のゴブリンの上を歩いて先を目指すことにした。


「出来るなら二詠唱ぐらいで唱えたかったなー。」


と辺りはもう先が見えるか見えないか結構暗くなってきている時にフーリエはそう言った、あいも変わらず飽きないのかまだ吾輩の手を振り回している。


「あー、さっきの話か、まぁ久しぶりに魔法を使ったんならそんなもんだよ、また慣れてきたら変わってくるさ。」


と吾輩はフーリエにそう返しながらフーリエの後をついて行くように歩いていた。


「そういえば、さっきのオーラだが実は対象外があるんだ。」


と前を歩くフーリエに言うと少し興味があるのかこちらを向き後ろ歩きをした。


「へー、対象外ってどんなの?魔物以外なら動物とか?」


「あー、動物は動物だけど違う違う、人間、ヒューマンには基本的に対象外にしている。」


「へー、なんで?」


とフーリエは結構興味が出てきたのか吾輩の手を振り回すのをやめた。


「だって行く先々で気絶とかされたら困るからね、だから基本的には人間は対象外にしてはいる、まぁやっぱり例外はあるけどね。」


「例外というと?」


「まぁある程度このオーラが感じ取れる人間や勘が鋭い人間かな、こういったのは基本突っかかっては来ないだろうしオーラを感じたら多分離れていくね、生前に似たようなことをしていたら感じた人間は離れていったのを確認したことあるから多分合っているはず。」


「へー。」


とフーリエはだんだん興味が無くなってきたのか吾輩の手を振り回し始めた。


「まぁ今の吾輩はこうして魔王なわけだし、だいたいの人間はオーラを感じ取れると思うけどね、夜が近くなってきたし範囲もかなり広げたし、これに気がつかずに安全に事を進めないのはよほど急いでいる人かよほどの強者かよほどのなにも感じ取れない人かあとはよほどの……。」


〈うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!〉


「……よほどの、なに……?」


とフーリエはニヤニヤしながら吾輩の方を見てきた、周りが暗くなってきているがそのニヤニヤしている顔つきはまだわかる。


「よほどの……馬鹿だ……この感じは……魔物とやり合っているわけではない、か。」


と吾輩はフーリエの手にあった吾輩の手を魔力で引き戻し両手とも元に戻した。


「……行きますか?フーリエさん?」


「行きましょうか?ルーゴさん?」


と吾輩とフーリエはオーラ内で感じとった場所の方に走り出した。


旅として始まったばかりだが、旅とはこんなに色々巻き込まれるものなんだろうか……?


吾輩はそう考えながら走りその場にむかった。

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