第3話 旅行の始まり

〜前回の簡単なまとめ〜

 

 魔王しゅじんこうは自分の身体部分を隠せる衣類を見つけようやく旅行に出かける


〜まとめ終わり〜



 城を出て深そうな森が少し遠くに見えてきた時、ふと


「あ、吾輩どこに何があるか判らん!地図もかなり昔のやつだからいいかなって思ってたり、地形も対して変わってないからいいかなって思って置いてきちゃったし、今の見どころみたいな場所も全然知らない……」

 

 と、歩きながら若干の不安を感じていたが、


「まぁいいかな?新しい物を探し見つけみたいな旅行でもいいと思うし、まぁ……知り合いもとい魔王達に聞いても良いが出てすぐに聞くのもなぁ……恥ずかしいよなぁ……」


 そう言いながら森の中に入って行った。城が少し小高い丘にあったのだがそこから見て知ってはいたけど随分と深そうな森だ。


「まだ日が高いうちに出てきたから良い塩梅で木漏れ日が入っているなこの場所はまだ、もう少し先に行ったらもう薄暗いぞ……」

 

 文句を言いつつもテクテクと歩いていく。


「かなり昔の、人間辞めて魔物だった時の記憶だが確かこっちの方角に人間の街があった気がしたのだが……運が良かったらまだあるだろう、運が良かったらだが。」


 街についたら地図を手に入れて休む必要もないからどんどん歩いていくかな、と、考えていると、


『………!………!』


「うん?なにか聞こえたか?いやでもここら辺りにも吾輩の呪いが掛かっていたはずなんだが……もう無いが。」

 

 と、首を傾げ不思議がってなにかが聞こえた方に、自分が往く方角とは外れた方角に歩みを進めた。


「うーん?いややっぱり気のせいだったのかな?とくになにも聞こないな、葉と葉の擦れで生じ『……けて!た……て!』た、音ではなさそうだな、声か?」

 

 と、声が聞こえた方に歩みを進めた。


 そして、声がハッキリと聞こえてきた。


「ちっ、弓を置きやがれ!」


「助けて!助けて!」


「彼女を離せ!」


 と、小競り合いしているのを吾輩はそこから離れた木の裏から見つけた。


「女性と女児の二人はダークエルフかな?魔物時代にはたまに見たけど多分そうだよな、んで女児を拘束している男とその後ろにいる三人は人間だな、そして悪者か。」

 

 と、木の裏から見ていた。


「人間魔族間での条約で人身売買は禁止な筈だ!彼女を離せ!」


「けっ、んなこと悪党な俺たちに関係あると思うか?魔族の女子供は高く売れるんだよ!」


「なるほど、条約違反か。なら手を出しても良いか、【重力の呪い《グラヴィティ・カース》】。」


 ダークエルフの女と女児を抱えていた男は急にした声に驚きお互いの身体の向きは変えずに顔だけこちらに向けた。


 後ろに居た三人の男たちは身体ごとこちらに向こうとしたが、


「なんだてくぇっ?!」


 と、三人ともこちらに向く前に姿が消えていた。


「なん、魔族?ここに?」


「なんだてめぇ!どこから出てきやがった!」


「どこから、と言われたらそこの木の裏だが……いやもういいや話すことは無いな、【呪いの掃除】。」


【呪いの掃除】、吾輩でも変な名前だなと思うし城の掃除に使っていたぐらいだが威力を調整して人体に打つと、


「呪い?なにを言っ、言っ、言、い、い、いいっ?!」


 人型あたりなら血液やら身体の水分、周りの空気、内臓等色々な物を抹消そうじしてくれる。


「すまないが女児よ、今手を退かすから待っていてくれ。」


「うん……」


 まだ抹消中の悪者ざこが急に力を入れる可能性もあるから早めにしなくては、と、思い【呪いの収納】から魔剣を一本取り出した。


「魔剣空振、名は体を表すやらなんやらと言われるがまぁ実際この魔剣、剣と言っても刃はないんだけど……女児よ、絶対動くなよ。」


「ちょ、ちょっとなにを……!」


 弓のダークエルフを他所に吾輩は空振の柄を持ち鞘から離し女児を抱えていた腕部分を斬りつけるように腕を振った。


「よし、もう終わった。女児よ、前に歩くようにしてみろ。」


「???、わ、わかりましたっ!?」


 女児が前に歩くようにしたとき女児は男の前に居た。


「え?えっ?」


「よし、大丈夫そうだな、髪が少し斬れたぐらいか」


「な、なにが起こったんだ……」


 よいしょ、と、女児の状態を確認したあと男の前に行き、


「【呪いの掃除】の威力を確認してみたが絶命には少し長いな、まぁ、後悔しながら死ぬがいい。」


 そう言ったあと、ダークエルフ二人の方に行った。


「ふむ、大丈夫か?すまんが詳しくは知らんが条約違反と聞こえたから人間をヤッたが。」


「あぁ、大丈夫だ。私たちはダークエルフ、で私はエル、こっちはルインだ。」


「ルイン、です。」


 よかった、ダークエルフだったみたいだ、久しぶりに見たから当たっていたかわりと不安だった、と、考えていると、


「貴方は……スケルトンメイジ?いやあの魔法の威力はリッチ?いやでもその服装、さっきの魔剣?は……」


 と、聞かれたので返さなくてはと思ったので


「あぁ、吾輩は魔王だ、あっちの方向にある城から来た。」


「ま、魔王?な、なるほど貴方があの魔導の。」


「いや違う、確かに方角は魔導のと同じ方角だが大陸が違う、吾輩は呪いの魔王だ、聞いたことは?」


 と、聞くと二人とも首を傾げ頭の上に疑問符がたくさん並んでそうな表情だった。


 ここまで魔族側にも知られていないと逆に吾輩凄いな、悲しいけど悲しくなくなってくる、逆に誇っても良いのでは?と、考えていると、


「あ、あの……」


 と、女児が話しかけてきたので我にかえり、


「そういえばなんでこんなところにダークエルフが?森にも瘴気があったはずだが?」


 と、質問した。種族は知ってるものの詳しいことはほとんど知らないからな。


「あぁ私たちダークエルフは多少瘴気があってもそこらの魔族より大丈夫なんだ、勿論人間なんてもってのほかだ。ここら辺りはちょっと強めだが瘴気があり人間はほとんど近づかなかったんだ。で、今日二人で村から出て狩りや採取をしていたら急に瘴気がはれて瘴気外の森近くにいた奴隷商人に捕まりそうになったんだ。」

 

 なるほど、なるほど……


「すまない……瘴気をはらしたのは吾輩だ……」


「え?あ、あぁそう、か?」


「いやぁすまない、すぐに森の瘴気はもとに戻す。」


「え?いやなにをいっ、」


「【永久に続く愛の呪い《エターナル・ラブ・カース》】……」


 そう呪文を唱えるとこの森の空気感が変わった。


「な、瘴気が……」


「これでこの森全体に瘴気が戻った、な。」


 正直呪いを張るのはそんなに苦ではないのだが1回消したものをまた張り直すのは少し手間な気はする……まぁこの事が起こったのは吾輩の責任だから一応罪悪感みたいなものがある……。


「さて、さっき言ったとおり森全体に呪いというか瘴気をかけ直した、よほどの腕を持つ聖職者でもなければ解けない程度に強いが、まぁそこのルインが大丈夫そうだから大丈夫だろうな。」

 

 と、吾輩はわりとルインが生き生きとしているのを見てそう返した。


「あ、あぁ本当に瘴気が戻っているようだ……前より強いけど私たちには大した影響は無いと思われる、助かる。」


「さて、吾輩は旅行に行くためにここを通りかがっただけだからもう行くがっ?!」

 

 歩こうとした時に黒の外套を後ろから引っ張られて変な声が出てしまった、見たらルインがどうやら引っ張っていたらしい。


「す、すまない!だがルインもそのようだが恩人をそのまま帰すのは私としても心残りになってしまう。さっき旅行と言っていたし旅行として私たちダークエルフの村に来てくれ、多分……大丈夫な筈だ!多分……」


「あ、はい、来てください。」


 なるほどダークエルフの村か、うん、いきあたりばったりの旅行のつもりだったから良いか。


「わかった、ならその言葉に甘えさせて貰おう、よろしく頼む。」


「わかった、よしこっちだ!」


 そう言ってエルは歩きだした、ルインは吾輩の外套を掴んでいたので一緒に歩き出した。


 最初の旅行場所はダークエルフの村だ!

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