第9話 もう少し
ヌリヌリ、ペタペタペタ
花咲さんがのりで貼っていく音。
カチカチカチ、シャー
僕がカッターで切る音。
それだけが、教室に響く。
花咲「ん~…!」
花咲さんが伸びをする。
僕「花咲さん。これもお願い。」
花咲「あ、分かりました。」
ドーナツ型の画用紙を花咲さんに手渡す。
花咲「これ貼ったら、今日は終わりですよね?」
僕「え~と…あ、そうだね。」
花咲「今日はもう少し早く帰れると思ってました~。」
別に遅れているわけではないのだが、確かに、昨日と比べると少し遅い。
僕「僕も、でも遅いわけではないからね。」
花咲「そうですね。明日も頑張りましょう。」
僕「…花咲さんは、放課後用事とかないの?」
花咲「へ?」
僕「僕とこんなことしてるより、友達とか…と遊んだ方がいいのでは。」
花咲「別に、友達もいませんし、用事とかないんで。」
待てよ。そういえば…
僕「花咲さん、勉強は?」
花咲「…え、な、なんのことですか?」
明らかに動揺している。
僕「勉強教えて欲しいって言うから、勉強する気になったんじゃないの?」
花咲「してまふよ?」
してまふよ、って…
僕「…ほんとかな?」
花咲「はひ。」
花咲さんって嘘つくと変な言葉になるんだ。
僕「はいはい。」
花咲「ほ、ほんとでふから!」
僕「分かったって。」
次の日
二時間目
僕「花咲さん、花咲さん。」
小声で言ってみる。…何の反応もない。
花咲さんが授業中に寝ているのだ。…まぁ、当たり前のことなのだが。今日に至っては違う。
床に寝ているのだ。
花咲「はは、ラーメンおいしいですぅ…」
寝言までラーメン!?
僕「花咲さん、さすがにやばいって!」
花咲「ん~…」
やっと起きた。
先生が近づいていく。
先生「うっうん。」
先生が大きめの咳払いをする。
花咲「あ、おはようございます…」
ささっと自分の席に座る。
先生「花咲さん、後で少し良いかな?」
花咲「嫌…って言っても意味ないですよね。」
先生「まぁね。」
ニコニコしている先生が怖い。逆に怖い。
そして花咲さんはこっぴどく、色々言われたらしい。
その後花咲さんは泣きながら僕の元に来たが、
泣き疲れたのか、そのまま床で寝て、
また先生に怒られていたのであった
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