この世に天職はあるのだろうか?

@hogehoge1192

第1話

この世に天職はあるのだろうか?



この世に天職はあるのだろうか?

私はあると思う


殺す、殺す。

私は殺し尽くす。

それだけが私の存在。

私はこんなに楽しいことがあったなんて初めてしった。


ほら、こんなにも早く。鋭く。男たちは遅い。

私のナイフは、男たちを切り刻む。


「終わりました」


私は師匠に伝える。自慢げに。


「遅い」


殴られる。なぜ?こんなに早くやったのに?

これじゃだめなんだ、もっと早くしないと。


そしていつか。


師匠を殺す。


私の家族を奪った師匠を。



あれはいつもの日常だった。晴れた日のいつもどおりの朝食。

いつもどおり。

綺麗な母さん。私の大好きな母さん。

かわいいいもうと。わたしの大好きないもうと。

ムカつくし臭いけれども、私を愛してくれている父さん。

いつもどおり。

いつもどおりに私たちは食事をしていた。


この先は思い出したくない。


父さんも、母さんも、そして妹も。

私の目の前で殺された。

男たちによって。

必死にわたしたちだけはと命乞いをした母さんも、逃げろといってくれた

父さんも。

そして妹も。


すべて殺された。


私は偶然その場を離れていて、戻った時に、あの男。

師匠がいた。


周りには男たちが。

笑っていた。


私は叫んだのだろうか?

その後なにがあったのか。

私は思い出せない。


師匠が私を見つめ、

男たちの笑い顔以外は。



気がつくと。

私は一人裸で倒れていた。

男たちは私を弄んで去っていったのか。

わからない。体中体液で気持ち悪かった。


師匠が私をシャワーで洗いながら、

こんな事を言った。


お前の父は組織を裏切った。

だから粛清された。お前の家族も。


お前には2つの道がある。


このまま組織の娼婦となって生きるか。


それとも。


私の元で組織の暗殺者として生きるか。

人手が必要だった。

お前がちょうどいい。

師匠の片腕はなかった。


私に選択の余地はなかった。


男たちを、師匠を。

必ず殺すのだと。



目が覚める。

叫び声で。


いつも終わらない朝の朝食。

そこで必ず私はなにもできない。

あれから幾年たったのだろうか。

私の髪はあの時から白髪になり、体中傷だらけ。包帯だらけ。

でも。

楽しい。

私のナイフが自由自在に相手を殺すのは。

私の家族が奪われたように、相手を奪うのは。

わたしにこんなに楽しいことが、あったなんて。

ナイフをもつ。


側には師匠が。


思わずその背中にナイフを突きたてようとしてしまう。

だめだ。

まだ、だめだ。

わかる。

師匠は寝ていない。

あるいは寝ていたとしても、私のナイフよりも先に師匠は私を殺す。

わかる。

そんな気がする。


もっと。

もっと、もっともっともっと、強くならないと。


私は泣いていたのか。


わからない。




組織のボスに師匠とあった。

にくい。にくい。にくい。

こいつを殺したい。私の家族を奪ったこいつを。

殺そうか。そうだ。殺そう。

しかし師匠は私の肩を掴む。

なんで。なんで?師匠は邪魔をするの。

そうよね。師匠も私の家族を奪った一員だものね。

くそ。くそう。くそ。にくい。にくい。

こいつらを皆殺しにしてやりたい。


ボスは私の想いを気にもかけず朗らかに笑いながら

師匠に仕事はどうだ?と尋ねる。

順調です。弟子が入ったので。

そうか。それはよかった。筋がいいらしいな?

ええ。

おい。私を見る。

よかったな。お前も死ぬところだったんだぞ。

え?

お前の家族は俺たちにことわりもなくヤクの密売をしていた。

え?

だから粛清した。

これは組織にとっての重大事だからな。

え?私の家族?パパが?

ああ。正確にはお前の父が組織とは別ルートで密売をして、お前のママは淫売だ。

え?

ご両親そろって麻薬の売買をキメてたのさ。

とんだ夫婦だな、ええおい。

そうかもしれません。と師匠は答える。

お前もとんだ兄弟をもったものさ。


お前はとんだとばっちりかもしれないが、これからは気を取り直して

師匠の下で働け。

そうすればいい目もあるだろう。

師匠に感謝しろよ。


あとな。師匠にその男はいった。

抗争が激化している。相手もそれなりの手練れを連れてくるらしい。

護衛もいるが、お前を頼りにしている。


ご苦労だった。

下がっていいぞ。


私は足が動かなかった。

そのまま崩れ落ちそうだった。


その後どうやって帰ったのか。

覚えていない。



私は夢を見た。

家族の夢。

なごやかな家族の夢。

優しい父さん。綺麗な母さん。

でも思い出す。

夜更けにベッドで行われていたことを。

ベッドの上で見知らぬ男と乱れていた母の姿を。

父はそれをみつめながら注射器を腕に打っていた姿を。


私は恐ろしくなってその場を離れた。

アレは現実だったのだろうか。


妹。妹。私の大切な妹。

助けて。たすけて。


こんなの嘘。


嘘にきまっている。



目が覚める。

誰もいない。

私は叫び声をあげていたのだろうか。


汗だくで。

シャワーを浴びたい。

いや。そんなことじゃなく。

師匠。師匠はどこ?


どこ。どこ。師匠はどこなの。


師匠。



師匠を見つけた。

師匠。

たすけて。たすけて。たすけてください。

お願いです。


私は師匠にだきつく。すがるように。


師匠は抱きつく私をなぐることなく、なでてくれた。

私は泣き続けた。


私は、家族の復讐のために、あなたを、あなたたちを殺すつもりだったのだと。

それは今も変わってないけれども。


けれども。

もうどうしていいのかわからない。

どうすればいいのか。


本当に父さんや母さんは、あの男の言う通りだったの?

おしえて。教えてください。


10


師匠はそれにはあえて答えなかった。

そっと頭をなでてくれた。


私はそこで泣き出してしまい。

何もいえなくなった。


私はどうしたらいいのだろうか。

これから同じことができるのだろうか。

私には何があるのだろうか。


11


銃声と轟音。


シンジラレナイ。

シンジラレナイ。

シンジラレナイことに。


私の目の前で師匠が崩れ落ちた。


b1


呆然としていた。

なにかが遠くで聞こえていた。

銃声。叫び声。爆発音。

これはなに。これはなに?

私はどこにいるの。

私はまだ夢から醒めないだけで、あの朝食の時間の中にいるの?


「・・・悪かった」


どこか遠くで聞こえてくる師匠の声。

誰かが遠くからやってくる。足音が聞こえる。


「お前の両親を殺したのは・・・俺だ」


「お前の父親、俺の兄と俺は、お前の母に惚れていた・・・。

しかし・・・俺が組織の仕事で遠くに出かけていたあと、兄がお前の母と結婚したのを知った。」


・・・


「許せなかった・・・、何もかも・・・お前の母も・・・俺の兄も・・・」


「お前の父、俺の兄は組織の金庫番でもあった・・・しかしそれでも金が必要だった・・・

 だから麻薬を組織を裏切って密売をし・・・お前の母もそれに乗り・・・、俺はそのことをだまって

 組織に伝えた・・・」


「・・・すまない・・・お前の両親は・・・」


・・・やめて。


「俺が殺した」


やめて!


12


「おい、こいつらまだ生きているぜ。早く殺せよ」

「まあ、まてよ、男は死にかけだが、女のほうがいい女じゃねえか。楽しめるだろう?」

「おい立てよ」


男たちがやってきた。

その人数は5人ほど。


なんか・・・もうどうでもいいや・・・。


13


周りに血反吐を吐いている男たちがいる。


私の身体は精密機械のように男たちを葬った。


「なんだ・・・この女・・・化け物・・・か」


私は薄笑いを浮かべつつ、男にとどめを刺し、師匠を抱き起こす。


「・・・どうする気だ」

「あなたは殺さない。殺させない。ボスの部屋の奥には大きな医療設備のある部屋があった。

 あそこにいく。あなたを手当てする。」


「逃げろ・・・。組織はもう終わりだ。お前だけでも逃げれば・・・」


私はその口を塞ぐ。唇で。舌も入れる。師匠が動揺するのを感じる。

初めて師匠に男の、雄の匂いを感じる。汗の匂い。血の匂い。

その奥にある怯えと混乱。


「遅い」


私は師匠につぶやく。


Kilroy was here.


私達はキルロイ。


急がなければ。


私は炎上している町並み、その遠くにあるボスの館を見つめる。


14


この世に天職はあるのだろうか?

私はあると思う


END

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