エグいっす

 スターバックスでのインタビュー。18歳女性。フリーター。バー、コンビニ、ラーメン屋でのアルバイトを掛け持ちしている。学費を貯め、進学予定。

「わたし豆腐メンタルなんすよ。だからもう恋愛いいかなって」

「どういうことあったん?」

「中高一貫だったんすけど六年で彼氏が三人できて。一番ほんとうに好きだった最後の彼氏がわたしんこと忘れちゃったんすよ」

「忘れちゃった?」

「事故で。脳の記憶が一部飛んだらしくて、事故後にわたしと会っても『誰ですか?』って」

「あらー。それはなんとも……」

「一年間とか付き合って本気で好きだったし彼のためになんでもしてあげるつもりで、ずっとキラキラしてたんすよね。事故でぷっつり切れてしまって。彼のことが嫌になったっていうより、人間が嫌になってしまって。あとわたしの祖父母が四人とも認知症になっちゃったっていうのもあって。もう孫のことどころか子供の顔すらわかんなくなってんすよ。それ見てるとわたしも将来は好きな人の顔もわからなくなんだなーと思いました」

「友達とかはどうですか」

「中高の友達ともほぼ会ってないです。わたしまだ大学行ってないんで話しづらいし。一人だけ高校中退した子と今でもつながりあります」

「寂しくない?」

「Twitterあるんで」

「Twitterの人間関係は広そうだね」

「色んな人いますよ。ほんと。毎日新しい人フォローしてるんですよ」

「それはすごい。なんでTwitterでこのインタビュー受けてみようと思ったの?」

「小説おもしろかったんで。あんまうまく言えないすけど。あと恋愛経験浅い人でもいいって書いてあったんで」

「なるほど」

「あとまあやっぱり自分のことを覚えてもらいたかったんじゃないっすかね」

「なるほど。それはよくわかる気がします。人生の目標みたいなものってありますか?」

「恋愛はしたくないですけど結婚はしたいです」

「ほー。上手くいってますか?」

「今は暇ないんで。進学できてから探しますかね」

「まだ若いんで」

「若くないですよ」

「若いよ……。どういう相手がいいですか?」

「わかんないっす。どういう人がいいんですかね」

「じっくり探してみてください。恋愛は事故みたいなもんですね」

「エグいっす」

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