かわいかったですね
相手宅でのインタビュー。22歳男性。大学生。ジャズサークルに入っている。趣味はジャズ、クラシック、ヒップホップ。好きなものはカメラ。
「なんでも最近失恋したとか」
「……はい。といっても付き合っていた訳ではなくて片想いが実らなかったということですが」
「お相手は?」
「同じサークルの一つ下の人です」
「詳しく聞きましょう」
「……元々すごい仲が良くて、もう三年ぐらい、ずっと遊んでていい友達だったんですけど。僕はメンタルに問題を抱えてるんですけど彼女はそれを心配してくれていて、特になにかいいことがあった時とか悪いことがあった時とかに心配してくれるということがあって、この人は僕のことを深く理解してくれているなと思って、好きな人として意識するようになりました。告白、したんですけど、笑いながら『ありがとうございます。嬉しいです。本当に。でもサークルの人とは付き合わないんです』って振られて。その後も色々と恋愛の感覚について丁寧に説明してくれて、要するに僕がずっと面白い人ポジションで、男性的に意識させられなかったということがありました」
「面白い人止まり! 悲しいねえ!」
「これからも一緒に遊びましょうって言ってくれてそれは多分本当なんですけど、実際には遊びの連絡って僕からするのばかりだったので、もう向こうからなにかの誘いがくることはないんじゃないかなと思うと切なくて」
「切ない。切ないよお……聞けてよかった。いやーテンション上がるな。すいませんねほんと」
「喜んでいただけるならいいんですが……でも普通の恋愛ですよね? そんな小説になるような」
「よくある話だとは思うんですが、最後の一緒に遊びましょうとは言ってもらえたけど、向こうから遊びの連絡がくることはたぶんないだろうっていうのは普通に使えそうですよ。散文的な意識が感じられて素敵だと思います」
「素敵とか言われても、困りますが……」
「かわいい人でした?」
「かわいかったですね。なんでも話してくれて。Twitterの裏垢をフォローさせてもらえた時は秘密を共有してもらえたみたいで嬉しかったです」
「SNS時代の恋愛やねえ。これも小説に使えそう」
「友達何人かでその人の家を溜まり場にしてたんですけど、多分僕が一人で家に上げてもらえることはないんですよ。やっぱり。僕は一緒に映画とか観たかったんですけど」
「そこはまあ女性は警戒すべきだからね。あなたには悪いけど」
「でもへぼさんの小説の、あのー女の子が襲われる話、えー、レイプの話を読んでそうだよなと思いました。落ち込みますけど」
「性暴力の存在によってあなたみたいな非暴力的な男性も被害に遭っていると言えるかな。暴力は本当に多くのものを変える。僕はそれを見ている」
「僕は考えたことなかったです」
「知らないことはやはり罪だよね」
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