面白い話、しようや。

 その後、くだらない質問と他愛ない会話をいくらか交わし、店を出て、駅の改札まで見送りに行った。別れの挨拶を交わす。アディオス、アスタルエゴ。

 インタビューは成功だ。これまでに書いた文章とこれから書く文章がその成果だった。

 十一月、二十三時の寒気がジャケットとシャツの間に滑り込む。先週までは暖かかったのに、身が震える、風だ。

 震える身体をよそに、心は穏やかな陽に照らされているようだった。今日の成果は大きい。道が開けた感じする。

 歌でも歌ってやろうか。いやそれよりも文章を書く方がいいな。

 一ヶ月前、何を書けばいいかわからなかった。生まれ育った密林から都会に出る道を知らずに育った野生児一匹、自分の飢えを満たすため文章を書き上げ、それを食べ、獣と交わりながら夜を超えていた。今、私のそばに、人がいる。人たちがいる。

 今、一人の人でありたった一人しかいない君のための文章を書ける。ようになった。たくさんの恋愛事変を収集して可読性を上げて、君のデバイスに届ける。

 これからもっと読みやすくなるから、しんぱいしないで。

 インタビューではインタビュイーを食いもする。性的な意味ではなく、道義的、文学的な意味において。目の前の友人を食い物にして、文章を仕立てて、それで飯を食う。それぐらいはやる。おれは密林で育ったから、獣のように食ってきたから。

 二人目のインタビューはもう設定した。一人目の物語を相対化するための装置。これはぼくの親友だから大丈夫だろう。

 そして先程サイゼリヤでインタビューを終えた彼女と後日もう一度インタビューすることを約束した。インタビューはセックスの隠喩ではない。セックスを超える性の奥義だ。

 面白い話、しようや。

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